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新作『宇宙戦艦ヤマト』は40代以上を受け止める作品…福井晴敏が明かすアニメの可能性とは

エンタメ・アイドル 投稿日:2021.10.08 11:00FLASH編集部

新作『宇宙戦艦ヤマト』は40代以上を受け止める作品…福井晴敏が明かすアニメの可能性とは

『宇宙戦艦ヤマト 2205 新たなる旅立ち』

 

「文芸界の話題やニュースが、世間には1mmも届いていないし、伝わってもいないということを、一度ならず目撃し、体験しました。小説家として、小説で世間に発信できることは少ないと実感してしまったんです。そんな空気を感じ始めたころ、映画業界に仕事の比重が移っていきました。その延長線上に現在の『機動戦士ガンダムUC』や『宇宙戦艦ヤマト2205』の仕事があるという感じです」

 

 そう語るのは、映画化もされた『亡国のイージス』『終戦のローレライ』など、多数のベストセラー小説を手がけてきた福井晴敏(52)だ。

 

 

 彼がシリーズ構成を手がけた映画『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章―TAKE OFF―』が上映中だ。前作『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』から、福井はこのシリーズに深く関わっている。

 

「クレジットはシリーズ構成ですが、実際にはプロデューサー的な役割で作品全体を統括している感じです。前作『2202』は映画『さらば宇宙戦艦ヤマト』(1978年)のリメイクという位置づけ。

 

 ただし、メインキャラクターを殺さないという難しい条件があったんです。それに応えた結果、オリジナル要素の多い作品になりました。『ヤマト』でやりたいことはもうないという気持ちもありましたが、もし続編をやるなら、自分以外にはできないとも思っていました」

 

 リメイク版シリーズには、どのような工夫があったのか。

 

「元の原作は続いているようで、じつは続いていない作品。いま見直すと毎回、思いつきで作られていたような印象もあり矛盾点もあります。これは、リメイクする立場から見るとネタの宝庫。本作では、過去の『新たなる旅立ち』と『ヤマト3』から、ネタを持ってきて、前作までとの整合性を取り、語り直すという楽しみもありました」

 

 作品は「現代の世相ともリンクする」と福井は語る。

 

「これまでの地球を守る戦いではなく、本作では他国の情勢に介入するというまったく新しい局面が描かれます。人道支援、他国家との関わりが大きなテーマです。アフガニスタン情勢など、偶然にも現実世界とリンクした物語にもなったと思います」

 

 同シリーズに加え、福井は『ガンダムUC』(2010年~2014年)以降いくつかの『ガンダム』作品にも参加。作家でありながら、日本の2大SFアニメシリーズのキーパーソンの一人となっている。

 

 もともと福井は『ガンダム』の生みの親である富野由悠季監督の影響を受け、小説家となったと明かす。

 

「誤解されている部分もあるのですが、自分はアニメが好きなのではなく、富野由悠季が好き、愛しているという表現のほうが正しい。自分でアニメを何作か作ってみてわかったことは、自分はアニメではなく富野監督が好きということなんです。富野監督の小説の文章、台詞、彼が手がけた作品に深い興味があり、それらに影響を受けて小説を書いてきたんです」

 

 だが、現在の仕事は小説よりもアニメーション制作が中心だ。その理由をこう語る。

 

「20代後半で作家デビューして、30代の半ばのころから出版ビジネスをこのまま続けて自分が老いていくことはできまいと思っていました。小説がすごい好きだったら、小説と心中してもよいと思えたかもしれませんが、小説に対してそこまでの熱意はなかった。本当に好きなのはやはり映画で、自分の小説では、映画で描きたいことをどう文芸的に構築していくかという作業をしていたんです」

 

 自身の小説の実写映画化に参加したことも大きく影響したという。

 

「原作や脚本を担当する立場からすると、実写映画は素材だけ提供するということ。細部のコントロールは監督の演出や役者の演技によって変わってしまうんです。それがよい効果を生む一方で、ディテールの矯正が利かなくなる。

 

 その点、アニメでは細部まですべてをコントロールできる。小説を書くように筋運びをきちんとできるんです。それは実写映画よりも、『UC』を作ったときに確信しました。そこで味を占めてしまい、アニメのほうにきてしまった。現在の気持ちとしては、小説家から “作家” に転職した感じですね」

 

 小説からアニメに変われど、「根幹」に大きな変化はないという。

 

「自分の意識は、まったく同じですね。アニメは小説のように個人作業ではなく、集団作業なので、スタッフの状況を見つつなのですが、自分はそれがまったく苦にならなかった。一人で深い穴を掘り続けるように小説を書くよりも、みんなで深い穴を掘るというアニメの制作スタイルが自分の性に合っていたんです」

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