物語の構造的にはラスボス風の新院長(高嶋政宏)が、すでに弱点をさらし、憎みきれない “ちょいカワ” キャラとして描かれていた。
先週月曜にスタートした窪田正孝主演の月9ドラマ『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ系)。第1話は世帯平均視聴率が11.3%だった。
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2019年4月期に放送された前作『ラジエーションハウス』は、第1話が世帯平均視聴率12.7%で、全11話の世帯平均視聴率が12.1%。前作と比較すると、今作のスタートはやや寂しい数字となっているが、このご時世に二桁視聴率に乗せているのは優秀と言えるだろう。
(※視聴率はビデオリサーチ調べ/関東地区)
本作は、写真には必ず “真実” が写ると信じる天才放射線技師・五十嵐唯織(窪田)を中心に、個性豊かなメンバーが揃う放射線科(ラジエーションハウス)を描いた医療ドラマ。
月9の前クールに放送された『ナイト・ドクター』に続いて今回も医療ドラマだが、『ナイト・ドクター』でスポットを当てたのは夜間診療する医師チーム。『ラジエーションハウスII』は放射線技師という “縁の下のヒーロー” を取り上げ、差別化を図っている。
■『半沢直樹』流の勧善懲悪な描き方はしない?
前作『ラジエーションハウス』は、木村拓哉主演ドラマ『HERO』(2001年、2014年/フジテレビ系)に通ずるチームものの痛快さや、メインヒロインの放射線科医を本田翼、サブヒロインの放射線技師を広瀬アリスが演じるという布陣も人気で、今作もその魅力は健在。
さらに今作からの新キャストとして、同僚の放射線技師に八嶋智人、病院の新院長・灰島将人に高嶋が加わっているのだが、冒頭でお伝えしたとおり、主人公たちと敵対する灰島に、すでにちょいカワ要素が出ているのである。
ラジエーションハウスのよき理解者である前院長・大森渚(和久井映見)から引き継ぐ形で新院長に就任した灰島は、病院の合理化を第一に考え、働く人々の気持ちを無視して無駄なものを排除していく。
実際、灰島は「放射線科医はいらない」と宣言してラジエーションハウスを解散寸前に追い込んでいた張本人で、平然と放射線技師を見下すような言動もする冷酷無比な男なのだ。
しかし、循環器内科長として病院に戻ってきた前院長・大森と灰島は、実は研修医時代の同期。大森は彼を「灰島ちゃん」と馴れ馴れしく呼び、灰島が血を見て失神してしまった過去や、気の強い女性が好みといった秘密をちらつかせることで、掌の上で転がすのである。
灰島は自分の弱みを握っていて、一枚上手な大森が苦手なようで、彼女の前では狼狽してコミカルな姿を見せることも。合理主義者で性格はきついが、根っからの悪人というわけではなさそうだ。
ポジション的には主人公たちを苦しめるラスボス感があるのだが、要するにパワーバランスは大森が上で、彼女の前ではどこかかわいい一面をさらけ出してしまっている。
さて、問題はこの新院長のキャラが吉と出るか凶と出るか、ということ。
どこか憎めない愛すべき要素もあるので、灰島というキャラクターだけ見れば魅力的。だが、大局的に物語全体を俯瞰すると、灰島が悪役に徹しきれないことで盛り上がりに欠ける懸念も見えてくる。
たとえば『半沢直樹』シリーズ(TBS系)は、わかりやすい “純粋悪” を配置することで、敵味方の対立構図を明確にしていた。そして、そんな “純粋悪” なキャラを半沢が倍返しで成敗するという、勧善懲悪なストーリーで大ヒットしたわけだ。
だが『ラジエーションハウスII』では、そういった『半沢直樹』流の手法は使えなくなっている。とは言え、ラスボス風の新院長さえも愛すべきキャラに描き、過剰・過激な争いを見せないことが、今の時代には合っているのかもしれない。
――いずれにしても、高嶋演じる新院長・灰島が今後の物語のカギを握っているのは間違いない。今夜放送の第2話でも灰島の動向に注目だ。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中