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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】休養中に発売された『うりずんの頃』…なぜか自分の死亡記事を読むハメに

エンタメ・アイドル 投稿日:2021.10.16 06:00FLASH編集部

【坂本冬美のモゴモゴモゴ】休養中に発売された『うりずんの頃』…なぜか自分の死亡記事を読むハメに

グランドキャニオンで撮影

 

 2002年3月30日――。35回めの誕生日に、わたしは長かった髪をばっさりと切りました。――もしかして……また、恋に破れた!?

 

 “また” という言葉が引っかかりますが(笑)、いいえ、失恋じゃありません。表向きは休養でしたが、わたしの中では、歌手との決別宣言……お相撲さんの断髪式のようなものでした。

 

 

 これ以上はもう無理。このままじゃ、心が壊れちゃう……。ボロボロになるまで追い詰められた末に下した決断……。このときは、 “もう二度と歌は歌わない” という覚悟でした。

 

 翌日からは、歌手の坂本冬美じゃない、素のわたし……ただの人です。何をやるのも、どこへ行くのも、自由です。誰かが騒ぐなんて1ミリも思っていませんでした。

 

 ところがです。

 

 新聞社や雑誌社の方は、仕事熱心な方が多いのでしょう。どこの誰が言い出したのか、“坂本冬美、重病説” が、尾ひれをいっぱいつけて飛び交い、母からは「今、家のまわりにカメラを持った人がいるから、帰ってきちゃダメよ」という電話がかかってくるありさまです。

 

 あ〜あ、本当は誰にも気づかれず、ひっそりと、こっそりと、フェードアウトしたかったんだけどなぁ。

 

 自分で自分の死亡記事を読むという、世にも奇妙な体験をしたのもこの時期です。あれは家に帰れないわたしが、あやちゃん(藤あや子)の劇場公演(名古屋)で、数日間 “押しかけ付き人” をしていたときのことでした。

 

 ある日の朝、いつものように買い出しに出かけると、ふと、駅の売店に並んでいるスポーツ新聞に目が留まって。

 

「さ・か・も・と・ふ・ゆ・み・し・ぼ・う?」

 

 えっ!? 何? ちょっと待って……。目をこすってもう一度見直しましたが、何度見ても同じ……「死亡」の文字が一面にデカデカと躍り、横にはわたしの写真が載っています。

 

 え〜〜〜〜〜〜っ!?
 じゃあ、ここにいるわたしは、いったい誰?

 

 駅の売店で小銭を出して、自分の死亡記事が載った新聞を買い、その場で一気読みしたのは、世の中広しといえども、わたしくらいではないでしょうか(苦笑)。

 

『うりずんの頃』坂本冬美

 

■新曲が出るということは、復帰があるかも!?

 

 驚いたといえばもうひとつ。この時期に、新曲『うりずんの頃』が発売されていたことです。

 

 この歌は、前の年……2001年に、デビュー15周年記念としてリリースしたアルバム『冬美ルネッサンス』の中の一曲で、作詞・作曲は永井龍雲さん。うりずんというのは沖縄の方言で、冬が終わり、大地が潤いはじめる春分から梅雨入りまでの時期のことで、胸がシュンと切なくなるような一曲です。

 

 発売することに関しては、否も応もありません。レコード会社と事務所が相談して決めたこと。

 

「何か出しておきませんか?」

「そうだね。出しておこうか」

 

 などという会話があったのかどうかはわかりませんが、この業界では、まぁよくあることです。

 

 ただ……。ファンの気持ちを考えると、なんとも複雑で。

 

「新曲が出るということは、復帰があるかも!?」と、かすかな期待を持った方もいるでしょうし、「ただのお金儲けかも……モゴモゴモゴ」と思った方もいたかもしれません。

 

 結果として、1年後に復帰したことで、すべてが丸く収まったような気もしますが、やっぱり、う〜〜〜〜ん!? ですね。

 

さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』など数多くのヒット曲を持ち、『また君に恋してる』は社会現象にもなった。最新シングル『ブッダのように私は死んだ』を含む、35周年記念ベスト『坂本冬美35th』が発売中

 

写真・中村功
構成・工藤晋

 

(週刊FLASH 2021年10月26日号)

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