「大切にしているモノが3つあるんですけど……多すぎますか?」
そう言って、岩佐美咲(26)がバッグから取り出したのは、スマートホン。
ひとつめはコレですと、膨大な写真フォルダの中から選び出したのは、人生最大の転機となったカラオケ大会の優勝トロフィーだ。
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「AKB48のイベント “ゆるゆるカラオケ大会” で優勝したときにもらったトロフィーなんですけど」
ゆるゆるカラオケ大会?
「歌でも一発芸でもなんでもアリで、秋元康先生の似顔絵を描いた人もいました。そこで歌った石川さゆりさんの『津軽海峡・冬景色』が、人生の大きなターニングポイントで……。演歌歌手・岩佐美咲誕生のきっかけになったんです」
ガチで勝負にいった?
「ソロ歌手になることが夢だったんですけど、当時の私はAKB48という大人数のなかで、何をすればその夢に近づくことができるのかわからなくて。一人でステージに立って歌えるチャンスですから、ここは一発マジでいこうと」
《幸運を掴むには、方法も法則もテクニックもない。あるとすれば、ただひとつ。自分は運がいいと思うこと》と言ったのは、師でもある秋元康。初めて一人で歌うことに心臓はバクバクと音を立てていたが、“私は運を持っている” と信じた彼女は、自らの手でその運を掴み取った。
「17歳でソロデビューして今年は10年め。AKB48を卒業し、演歌歌手一本で勝負してから5年め……私にとっては勝負の年です。コロナ禍なんかに負けていられません!」
そのメモリアルイヤーに、総合プロデューサー&作詞家として秋元康が贈ったのは、儚(はかな)くも芯の強い大人の女性を描いた『アキラ』だ。
「歌の舞台は北の大地、北海道・函館。アキラという名前の男の人はどんな人で、2人はどこで出逢い、どんな恋愛をしたのか……毎回、想像を膨らませながら歌っています」
■いつかアニメの声優になりたい
優勝トロフィーからスタートした岩佐美咲の夢物語。2つめは、そのトロフィーにまつわる愛犬2頭との心温まる(?)エピソード。
「見てください、ここ!」
スマホの画面をアップにして見せてくれたのは、トロフィーの台座の部分。ん!? もしかして、かじられた痕?
「そうですよぉ。当時、実家にはオスのミニチュアダックスフンドが2頭いて。単独犯か共犯か、2頭とも黙秘したまま天国に逝っちゃったので、事件は迷宮入りですが、犯人は絶対にヤツラです」
確信しているのには理由がある。
「ぬいぐるみやクッションは、あっという間にボロボロにするし、なんでもかじりまくる破壊大魔王でしたから」
今、思い出しても腹が立つというのは小学生のとき、夏休みの自由研究だ。
「何時間もかけて完成させたのに……買い物をして家に帰ったら、グチャグチャのボロボロで。その場で号泣です(笑)」
悪戯は許せないけど、でも……憎めない。
「シッポをぶんぶん振って、飛びついてくると、ぎゅ~~っと、抱きしめたくなっちゃうんですよね」
笑みを見せながら、また写真フォルダをスクロール。次に、表示したのは――。
「チワワの女のコで、名前は “はむ” と “ちーず” 。世界一かわいいと思いませんか? もしも、チワワ総選挙があったら神セブン入りは確実。1位だって夢じゃないですよ。帰ると2頭とも私に飛びついて来てくれるんです。 “嬉しょん” で、床が濡れるのはちょっと困りますが(笑)、逆に離れるときは寂しくて寂しくて。2頭ともカバンに入れて、連れて行きたくなっちゃうんです」
優勝トロフィーと愛犬。そして3つめは。
「小さいころからアニメが大好きで。いつかアニメの声優になりたいという、これは秘かな夢です」
そう言いながら、トーンを変えて話しだした声は……今すぐにでも声優デビューできそうなイケボ。120%完璧なアニメ声だ。
「天国に逝っちゃった2頭のダックス…… “ぷーすけ” と “かぶ” に約束したんです。いつか、声優デビューするから待っててねって。夢のバトンは、“はむ” と “ちーず” に受け継いでもらっています」
何かをせがむような顔。すました顔。無邪気に眠っている顔……。何度見ても、見飽きることのない愛犬の写真をスクロールしながら、次の夢に向かって、初めの一歩を踏み出した。
いわさみさき
1995年1月30日生まれ 千葉県出身 2012年にAKB48初の演歌歌手として『無人駅』でソロデビュー。10周年の10月6日に、秋元康プロデュースの『アキラ』をリリース
写真・中村功
取材&文・工藤晋
(週刊FLASH 2021年10月26日号)