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石井正則、人との出会いが自分の糧に「ご縁を大切にすることが唯一の美徳」

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.11.14 11:00 最終更新日:2021.11.14 11:00

石井正則、人との出会いが自分の糧に「ご縁を大切にすることが唯一の美徳」

映画『老後の資金がありません!』で熱演


■アバンギャルドな出会いが「糧」に

 

 石井にとってこの街は、芸人としても役者としても大切な場所だという。

 

「当時はちょっと怖いところもある街で(笑)。ゲームセンターにはアバンギャルドなお客様がたくさんいらっしゃいましたね。そういう方たちに鍛えられたというか、物怖じしなくなりました。

 

 帰ろうと思って店のシャッターを開けたら、木刀を持ったお兄さんがいて、その前に2人の男性が土下座させられていて『堅気のもんになめられたら……』って言ってるんですよ。ほぼ映画の台詞を生で聞いたときは、反射的にシャッターを下ろしてました(笑)。

 

 クレーンゲームのぬいぐるみが取れないと言って、ケースをバンバン叩いてすごむお兄さんもいましたし、『兄ちゃん、これやってくれ』と物言いは静かなんですが、やらなかったら絶対に恐ろしいことになるっていう迫力のある方もいました。

 

 役者として演じるうえで、このときに接したいろいろな方々の空気や物言い、この街で経験したことすべてが、糧になっているんだなって、すごく感じますね」

 

 石井がこの街から一歩を踏み出したのは、20歳のときだ。現在の所属事務所のオーディションを受けて合格。

 1994年には「アリtoキリギリス」を結成。『タモリのSuperボキャブラ天国』(フジテレビ系)に出演し、売れっ子お笑いコンビとなる。そしてこの番組にも大きな “ご縁” があった。ゲスト審査員を務めていた三谷幸喜の目に留まり、ドラマ『古畑任三郎』(フジテレビ系)レギュラー出演のオファーが届く。

 

「声を気に入ってくださったなんて話も聞きましたが、『今度、お仕事をご一緒したいですね』みたいなことをおっしゃられて。社交辞令かなと思っていたら、まさかあんな大きな作品に呼んでいただけるとは思わなかったです」

 

 今でこそ、お笑い芸人が役者もこなすのは珍しくなくなったが、当時はそんな時代ではなかった。石井にとっては新しい挑戦だったのだろうか。

 

「挑戦してみようかなんて上から目線で言える立場ではなかったですし、そういうことを考える余裕はなかったですね。お仕事をいただいたら一生懸命やるしかない。足を引っ張っちゃいけない、ご迷惑をおかけしちゃいけないという一心でした。

 

 お芝居の仕事も芸人の仕事もいただいたらやるという感じでしたが、コンビを休止してからは、お笑いを一人でやるという感覚にはならなかったので。いただいたお仕事をひとつ、ひとつしっかりやる。その気持ちは今も変わらないですね」

 

 仕事をひとつひとつ丁寧に、しっかりやっていく。その姿勢が新しい縁を結んでいく。現在公開中の映画『老後の資金がありません!』では、微生物研究所で働くエリートを演じている。

 

「僕はちゃんとお金もあってわりといい生活をしている堅物な感じの研究員を演じています。人生のお金に関する “あるある” がたくさん出てきて、コメディでおもしろい半面、身につまされるというか。どなたにも起こりうることを描いているので、老後についてどう考えていくか、勉強になる作品だと思います」

 

“声” を生かして、役者だけでなくナレーションの仕事も増えている。聞けばすぐに石井とわかる魅力ある声だ。

 

「じつは若いころにナレーションの仕事をしたことがあるんですが、もうトラウマになるぐらい、何度録り直してもOKをいただけなくて、一生ナレーションの仕事はこないだろうと思っていたんです。でも、何年か後にナレーションの仕事をいただいて、やってみたら合ったというか。年を重ねたからなのか、なんだかはわかりません。

 

 僕は自分が培ってきたこととは関係ない仕事でも、楽しみだなって思っちゃうほうなんです。いろんなこととのご縁を大切にすること、ご縁に敏感であることが、自分の唯一の美徳です」

 

 そう話すと、美味しそうにお好み焼きを口にした。懐かしい御圓屋で、石井は今日もさまざまな縁を紡いでいた。

 

いしいまさのり
1973年3月21日生まれ 神奈川県出身 1993年に事務所のオーディションに合格し、1994年に石塚義之と「アリtoキリギリス」を結成し人気を博すも2016年に解散。ドラマ『古畑任三郎(第3シリーズ)』(1999年、フジテレビ系)で西園寺守刑事役に抜擢され、俳優としても注目される。その後も連続テレビ小説『オードリー』(2000年、NHK)、大河ドラマ『花燃ゆ』(2015年、NHK)、映画『Fukushima 50』(2020年)など、ドラマや映画出演多数。昨年は自ら撮影した写真集『13(サーティーン)ハンセン病療養所からの言葉』を出版。出演した映画『老後の資金がありません!』が公開中

 

【てっぱん 御圓屋】
住所/神奈川県横浜市中区若葉町3-49 
営業時間/火曜~土曜17:00~5:00
日曜、祝日、祝前日17:00~1:00
定休日/月曜
※新型コロナウイルス感染拡大の影響により、営業時間、定休日が記載と異なる場合があります。

 

写真・野澤亘伸

 

( 週刊FLSASH 2021年11月23日号 )

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