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杉咲花『恋です!』は “ほっこり” だけじゃない…新時代の恋愛ドラマを感じさせた驚きの告白シーン

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2021.12.16 20:25 最終更新日:2021.12.16 20:28

杉咲花『恋です!』は “ほっこり” だけじゃない…新時代の恋愛ドラマを感じさせた驚きの告白シーン

 

 これが新時代の恋愛ドラマか、と素直に感嘆した。

 

 視覚障害者と健常者の恋を描いたから……ではない。男性から男性への恋心を、とりたてて過剰演出することなく、あくまで “普通の恋” として描いていたからだ。

 

 社会通念の過渡期なんだと改めて実感するとともに、本気でけっこう感動した。

 

 

 杉咲花主演『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)は、白杖を使って生活している弱視の少女・ユキコ(杉咲)と、根は純粋な不良少年・森生(杉野遥亮)によるラブコメディ。

 

 12月15日(水)に迎えた最終回は、世帯平均視聴率が9.6%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)で自己最高を更新し、有終の美を飾った。

 

■すぐにほんわかムードを復活させたのは英断

 

 まずは主役2人の恋について触れておこう。

 

 最終回1話前の第9話のラストで、森生に別れを告げたユキコ。森生は仕事で認められ、正社員として鹿児島に転勤する話が持ち上がったものの、ユキコと一緒にいるため、いったんは断ってしまう。ユキコは森生の将来のため、別れを選んだ。

 

 最終話は2人の別れから1年後にジャンプ。森生はわりとあっさり鹿児島から帰ってきていた。気恥ずかしさから、当初はユキコにバレないようにしていたが、これまたわりとあっさり見つかって再会。

 

 第9話ラストの別れシーンはかなりシリアスだったが、最終回で意外にサクッと今までどおりの明るい雰囲気に戻ったため、少々肩透かし感はあった。

 

 だが、これでいい。これが正解だと感じた。

 

 というのも、本作はユキコと森生のほっこりするやりとりや、ユル~いいちゃいちゃを楽しむためのドラマだと思うからだ。実際、最終回まで追っている熱心な視聴者は、2人のハッピーオーラに癒され、ファンになったという方も多いはず。

 

 第9話ラストのような真剣なシーンがあればこそ、話に緩急が生まれて盛り上がるのだが、やはり視聴者が待っていたのは、ユキコと森生による周囲を巻き込むほんわかムードだったと思う。だから重く悲しい空気を引っ張りすぎず、ストーリーを1年後に飛ばして森生を戻し、ほんわかムードをすぐに復活させたのは英断だ。

 

 2人の詳細の結末は実際に最終回を視聴していただきたいが、もちろん納得のハッピーエンドになっていた。

 

■ジェンダーレス時代のニューノーマルドラマ

 

 さて、ここからは冒頭で触れた男性から男性への恋について考えてみたい。

 

 森生のライバルの金髪ヤンキー・獅子王(鈴木伸之)は、ことあるごとに森生にケンカを吹っかけていたが、実はひそかに森生に恋愛感情を抱いている。

 

 そんな獅子王が最終回でとうとう森生に、「俺は……森生のことが、好きだった」と告白。森生は「マジか」と驚くものの、すぐに「照れんじゃねぇか」と屈託のない笑みを見せ、こう応える。

 

「けど、俺はユキコさんのことが……。だから何て言うのが正解なんだ? 『ごめん』。いや、『ありがとう』だな」

 

 その森生の言葉を聞き、獅子王は「すごいな、森生は」と漏らす。そのセリフが当意即妙というか、まさに視聴者の気持ちを代弁していたように思う。

 

 筆者もその瞬間、森生すげぇ……と感じており、獅子王にシンクロした。いや、正確に言うと、森生とこのドラマがすごいと感嘆していた。

 

 男性から男性への恋心を描いたドラマは今までにもあった。けれど、えてしてこういうシーンでは、告白された側はいったん恋愛感情の “ラブ” ではなく友情の “ライク” だと勘違いするのがお決まりだったように思う。

 

 しかし、森生は獅子王の告白を最初から迷いなく “ラブ” として受け止めていた。そしてユキコを想っているからその気持ちに応えられないときっぱり伝える。

 

 この森生の受け答えがいい意味で “普通” なのだ。男女の恋を描いていた従来の恋愛ドラマの告白シーンと変わらず、普通なのである。

 

 男同士だなんてことは関係なく、シンプルにある人がある人に恋をしただけという描き方。同性愛を茶化すなんてことは当然せず、BL(ボーイズラブ)もののように過剰に押し出すわけでもない。

 

 これぞジェンダーレス時代の恋愛ドラマのニューノーマルではないだろうか。

 

 思い返せば、森生は第1話でも「ユキコさんは普通の世界で生きてるじゃないですか」と、弱視の彼女に対して差別も偏見もなく接していた。

 

 この作品の真価は「すごいな、森生は」という一言に集約されているように思う。森生の人間力の高さが際立ったドラマだった。

 

●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

 

( SmartFLASH )

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