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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『羅生門』自分で書いたタイトル文字を褒められるも…本当に褒めてる?

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.01.15 06:00 最終更新日:2022.01.15 06:00

【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『羅生門』自分で書いたタイトル文字を褒められるも…本当に褒めてる?

大きな筆で書道する坂本冬美

 

 青森のねぶた祭にもたびたび登場する、源頼光四天王の一人、渡辺綱が羅生門に巣くう鬼、茨木童子の片腕を切り落とした鬼退治の物語。その謡曲をモチーフに作っていただいたのが、デビュー20周年記念作品『羅生門』(2006年発売)です。

 

 ジャケットは凛として美しく。ポスターは昔の仁侠映画のイメージで。でんと構える『羅生門』というタイトル文字が、じつにいい感じです。

 

 

 型にはまらず、力強く伸びやかで、達筆ではないけれど、クセがあるーー。きっと名のある先生にお願いしたら、ずいぶんとお高いんじゃないかと……モゴモゴモゴ。

 

 ……何を隠そう、わたしが書いたものなんです。

 

“墨の魔術師” “書道界の鬼才” の異名を持つ、金田石城先生にお会いしたのは、『羅生門』を発売する少し前のことでした。

 

ーーそうだ! 先生にお願いしてみよう!!

 

 始まりは、お気楽な思いつきです。ところが、どっこい。

 

「場所も筆も用意してあげるから、ご自分でお書きになればどうですか?」

 

 先生からのお返事は、思いもかけないものでした。ちょっと待った、です。ご自分というのは……もしかして、わたしのこと……でしょうか?

 

「もしかしなくても、そうですよ。あなたの20周年記念のジャケットなんだから、あなた自身が書けばいい」

 

 ……ご説ごもっとも。先生のおっしゃるとおりです。

 

■完全自己流で自由に伸び伸びと

 

 という流れでお伺いしたのは、先生が大きな作品を書くときに使っていらっしゃる栃木県日光の旅館でした。

 

「さぁ、どうぞ。なんでもいいから書いてみなさい」

 

 目の前に差し出されたのは、わたしの背より大きな筆と、畳いっぱいに広げられたこれまた大きな紙です。

 

 え~~~~っ!? こんな筆、どうやって持つのよ、なんて言葉は口にはできませんから、心の中で呟きました。

 

「さぁ、どうぞ」

 

 いや……あの……でも……。

 

「遠慮しないで」

 

 え~~~い、こうなったら、覚悟を決めてーー。

 

 最初に書いたのは「鬼」という文字です。続けて「羅生門」という文字を2枚に。額に汗して、体全部を使って、ずずずずずっと、筆を動かしました。

 

 それがよかったのでしょうか。先生から、思いがけずお褒めの言葉をいただきました。

 

「うん、なかなかいいよ」

 

 ふふふっ。そうなんです。こう見えてわたしは、やるときはやる女なんです。

 

「この字は、書家が書けと言われても書けない字だね」

 

 ん!? それも……お褒めの言葉でしょうか?

 

「もちろんだよ。これは、書がわかっている人間には絶対に書けない字なんだから」

 

 それから、先生のところには年に2度ほどお邪魔して書を書くようにしていますが、今も完全自己流で。自由に伸び伸びと、ときには題字のように左手で書いてみたりしながら書を楽しんでいます。

 

 ただ、ひとつだけ。先生が作ってくださった、わたしの名前入りの筆を日光の旅館に預けていたのですが、残念ながら閉館してしまい、現在、迷子状態……。

 

 筆の行方を知っているという方がいらっしゃいましたら、編集部までお知らせください。よろしくお願いします。

 

さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』など数多くのヒット曲を持ち、『また君に恋してる』は社会現象にもなった。桑田佳祐氏から届けられた『ブッダのように私は死んだ』のリリースによって生まれた「情念POPS」をセレクトして制作された最新コンセプトアルバム『Love Emotion』好評発売中!

 

写真・中村功
構成・工藤晋

 

( 週刊FLASH 2022年1月25日号 )

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