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筧利夫、役者人生で笑顔を忘れた時期も…世間の反応が嫌だった30歳のころ
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.01.23 11:00 最終更新日:2022.01.23 11:00
つかこうへい氏の舞台にも参加した。なかでもシリーズ化された『飛龍伝』は思い出深いという。
「すべてのパワーを出し切らないと成立しないキツい作品でした。毎日『この舞台をやり遂げればあとでご褒美がある!』と自分を奮い立たせていましたが何もなし(笑)。お客さんが喜んで拍手を送ってくださる、それがすでにご褒美だったのだなと、今になってわかりましたね」
ここで筧はヒソヒソ声になり「つかさんは本当におもしろいんですよ」と数々のキワどいエピソードを教えてくれた。
「つかさんの芝居をほかの方の演出でやったことがあるのですが、稽古が始まって3週間過ぎたころ、役者のモチベーションが落ちてきたんです。そうしたらある日、つかさんから自宅に突然電話がありまして……。
『あのよぉ、(藤谷)美和子を押し倒すシーンあるだろ? 今日は帆立貝に紐をつけたやつをパンツの代わりにはいておいて、いきなりジャージを下ろして美和子を襲え!』
『え、帆立は、どこで買えば…?』
『やれよ!』ガチャ!
実際そんなことはしないんですけど、こんなおもしろい話は絶対仲間にするじゃないですか(笑)。それによって稽古場のテンションを甦らせるという、つかさんならではの魔法です。『これ飲め! 元気出るぞ!』って、瓶詰めハブ酒を手に、ニコニコ登場されたこともありましたね。
それから広末涼子さんと共演したときのことですが、稽古初日にやる気満々で行ったら稽古場の隅に鍼灸の先生が。何事かと思ったら、つかさんが『筧! マッサージしてもらえ!』と。よけいな気合を抑えるためだったのでしょうね。普通じゃないです、つかさんは(笑)」
■役者はどんな職業も本気で擬似体験できる
笑いが絶えない筧だが、役者人生で笑顔を忘れた時期があった。30歳のころだ。
「テレビドラマに出始めたころでした。悪いヤツの役が続いたんですよ。ある時代劇で姫様を “手ごめ” にするシーンがありまして、放送の数日後にサウナに行ったら隣に座っていたおじさんが『犯してはりましたな?』と。ショックでした。俺じゃないんだよ! 役なんだよ!(笑)
今なら『観ていただいてありがとうございます』でしょうけど、あのころはまだ若かったですから世間の反応がかなり嫌でした」
紆余曲折を経てきた筧はこう言う。
「役者本人が『これはおもしろい』と喜びながら演じないと現場のスタッフさんも編集される方も楽しくない。お客さんを感動させることもできない。これは大変なサービス業です。
今はもう役者は最高の趣味と考え、ほかに本業はないか探しています(笑)。タイでバーを開いたら楽しいでしょうねえ(大笑い)」
本心がわからず戸惑う記者を前に、筧は最後の焼酎を飲み干し、そして続けた。
「役者は擬似体験が本気でできます。丁髷(ちょんまげ)して刀を振り回したり、警察官僚や弁護士、凶悪犯にだってなれます。すごくおもしろいですよね」
どうやらこれが本心のようである。
かけいとしお
1962年8月10日生まれ 静岡県出身 大阪芸術大学に入学後、「劇団☆新感線」で俳優デビュー。卒業と同時に上京、「第三舞台」に入団。つかこうへい作品にも出演する。おもな出演作品はドラマ『踊る大捜査線』『Dr.コトー診療所』(ともにフジテレビ系)、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』(2017年)、『イアリー 見えない顔』(WOWOW)、映画『踊る大捜査線 THE MOVIE』『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』、舞台『ミス・サイゴン』など。1月14日より『雲霧仁左衛門5』(NHK BSプレミアム)に出演中
「しんしら」
住所/東京都新宿区歌舞伎町1-1-9
営業時間/17:00~24:00
定休日/月曜、ほかに不定休あり
※新型コロナウイルスの感染拡大の状況により、営業時間、定休日が記載と異なる場合があります
写真・野澤亘伸