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村上淳「60歳で “玄人” の域に」俳優としてのスケールを上げていく。虎視眈々と
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.01.30 11:00 最終更新日:2022.01.30 11:00
「ここはコロナ禍で一人で過ごす時間が増えてから訪れるようになった大切な場所です。お酒も飲まないし、食にもこだわりがなかったのですが、この空間で一人で窓の外を眺めながら過ごす時間が好きなんです」
村上淳にとって東京・丸の内の東京會舘内にあるカフェラウンジ「ロッシニテラス」で、スイーツとコーヒー2杯を楽しむ時間がなによりも大切なものとなっているという。
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村上は、和栗を丁寧に漉したペーストと生クリームで作った、東京會舘の人気ケーキ「マロンシャンテリー」を味わいながら話を始めた。
村上は目黒の公園でスケートボードを楽しむ姿を見たファッションデザイナー・藤原ヒロシにスカウトされ、ファッション誌でモデル活動を始めた。16歳のときだった。
「僕はただの10代で、ふつうの退屈な人間だと思っていました」
ただの10代を変えたのは、1990年代前半の “クラブ” 。そこで出会った先輩たちから多くのことを学んだ。
「1990年代の数年間だけは、クラブカルチャーが理想に達した時代だったと思います。きちんと音楽がクラブの中心にあって、会話もためになり、なによりも洒落ていました。
クラブで先輩に『お前、ガルシア=マルケスって知ってる?』と言われたら、次の日に書店で作品を必死に探すといったことは日常でした。
インターネットもない時代ですから、前日の会話だけが頼りで、メモ帳も必須でしたね。DJがいい曲をかけたら、DJブースに駆けて行って、回転しているレコードの曲名を必死で読み取ろうとしたこともあります。
耳コピで覚えた曲のサビを、次の日にレコード店で歌って、なんていう曲か店員に尋ねることさえありました」
濃密な時間を過ごした村上は1993年公開の『ぷるぷる』で映画の現場へ飛び込んだ。
「20歳で初めて映画の現場に入ったんですが、そこでは完全に何も知らない新人。現場の熱量に惹かれて、すぐに虜になりました。それまで、映画なんてあまり観ていなかったのに、動物的な勘で『自分はこの仕事を一生続ける』と思ったんです」
20歳の村上がこう確信したとおり、役者という仕事にのめり込んでいく。「基本、仕事は断わらない」という姿勢で、俳優デビューから昨年末までに映画だけで120本以上の作品に出演している。
「僕には役者としてリミッターが一切ないですし、どんな役でも対応できるようにしています」と語るように、忍者、ヒットマン、サラリーマン……主演、助演関係なく演じ続けた。
2月4日に公開される『夕方のおともだち』(廣木隆一監督)は、15年ぶりの主演作品だ。
同作では、かつて出会った女王様が忘れられず、SMプレイにのめり込んでいく公務員を演じている。劇中では村上が全裸で演技するシーンもある。
「年に2本か3本は絡みのある映画に出演しているので、ヌードに関しては一切抵抗はありません。
男女問わず若い世代の俳優さんに言いたいのは、俳優のトレーニングとしても最適なので、アクションと濡れ場はカメラの前でたくさん演じておいたほうが絶対にいいということ。
映画において、アクションと濡れ場の演技はカメラの前で『していないことをしているように見せる』という部分で非常に似ているんです。男優は絶対にアクションと濡れ場が上手なほうが仕事の幅も広がります」
さらに、女優が作品の中で「脱ぐ」という選択には「男優の力量が大きく関わっている」と続ける。
「正直、男優のスケールが小さくなったから最近の映画で女優さんが脱がなくなったんだと思います。女優さんがカメラの前で脱ぐときは、作品の規模やギャラだけではなく『本当に自分が脱ぐに値するかどうか』という本音が出てくると思うんです。
たとえば、全盛期の三國連太郎さんや松田優作さんが相手のラブシーンがあるとして、そこで脱がない女優さんはいないですよ。
そういった意味もあって、目標のひとつが俳優としてのスケールを虎視眈々と上げることなんです。いま48歳で、生きのいいアクションや濡れ場を演じられるのは、あと5年から10年くらいです。共演相手が『相手が村上淳ならいいですよ』と言うような俳優でありたいんです」