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菅田将暉『ミステリと言う勿れ』マンネリ作品ばかりのドラマ業界へのアンチテーゼ

エンタメ・アイドル 投稿日:2022.02.14 11:00FLASH編集部

菅田将暉『ミステリと言う勿れ』マンネリ作品ばかりのドラマ業界へのアンチテーゼ

 

 マンネリな作品ばかりで停滞している日本のドラマ業界に風穴を空ける――菅田将暉主演の月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)には、そんな期待を抱かずにはいられない。

 

 累計発行部数が1300万部を超える同名人気漫画の実写化。変わった性格ながら飛び抜けた観察力や推測力を持つ大学生・久能整(くのうととのう/菅田)が、事件の謎を解きつつ人の心をも解きほぐしていくという新感覚ミステリーだ。

 

 

 視聴率は好調で、第1話から第5話までの世帯平均視聴率は13.6%、12.7%、13.2%、13.3%、10.0%と推移(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)。先週放送の第5話は数字を落としているが、同時間帯に北京五輪のスキージャンプが生中継されていたことが大きな要因だろうから、二桁を死守しただけでも大健闘と言える。

 

 高視聴率を維持している理由はシンプルに “面白いから” に違いない。

 

 だが本稿ではあえてその面白さではなく、『ミステリと言う勿れ』という作品がいかにチャレンジングなことをしているかをお伝えしたい。

 

■定番の “1話完結エピソード” を序盤から無視

 

 昨今の日本のドラマ業界を席巻しているのは、刑事や探偵が主人公の事件もの、医師や医療専門職が主人公の医療もの、弁護士や検事が主人公の法廷ものの3ジャンル。

 

 もちろん恋愛もの、学園もの、家族ものといったジャンルはあるが、ドラマファンであれば昔よりもテレビ各局が事件もの、医療もの、法廷ものを大量に作り、氾濫状態であることにお気づきだろう。

 

 事件もの、医療もの、法廷ものはどれも王道のため、その系統のドラマならとりあえず観てみるというドラマファンがいるから、テレビ局側からすれば手堅いジャンル。ただ量産されている要因は、1話完結エピソードを作りやすいからという理由もあるはずだ。

 

 恋愛ドラマなどは、1話飛ばすと主要キャラたちの関係性が変わってしまっていることもあり、一度見逃した人は視聴をやめてしまうケースも多い。

 

 けれど、1話ごとに事件や問題が解決するスタイルのドラマであれば、途中回を見逃した人でも、さほど気にせず戻ってきやすいため、視聴者離れのリスクを減らすことができるというわけだ。

 

 前置きが長くなったが、『ミステリと言う勿れ』は事件ものに該当するものの、第1話から第3話まで、1話完結エピソードという形態を放棄していた。

 

 第1話の最初の事件はその回で解決するのだが、第1話の終盤からはなんと次の事件がスタート。

 

 第1話のラストで整はバスジャックに巻き込まれてしまい、第2話と第3話はその一連のエピソードが描かれる。要するに、第1話を観ていないと第2話はちょっと置いてけぼりになるし、第1話・第2話を観ずに第3話をいきなり観ようとしても、話についていけないのである。

 

 ちなみに第4話・第5話は1話完結エピソードになっていたが、視聴者離れを覚悟のうえで、序盤回からそういった意欲的な構成にしていたということだ。

 

■先週放送回は何も起きない平穏な病室が舞台

 

 先々週放送の第4話、先週放送の第5話も、違うベクトルでチャレンジングな物語。特に第5話は見ものだった。

 

 まず第4話について軽く触れさせていただくが、描かれたのは爆弾魔のエピソード。

 

 しかし、爆弾魔が誰なのかと推理して解き明かしたり、爆弾魔を探して捕まえたりという話ではなく、記憶を失った爆弾魔(柄本佑)と整の会話劇となっていた。犯人はすぐにわかるが、その犯人が記憶喪失という異色なストーリーだったのである。

 

 そして先週放送の第5話。整は入院先の病院で、同じ病室になった元刑事の老人(小日向文世)から、かつて遭遇してきた数々の難事件の思い出話を聞かされる。

 

 途中途中で老人の回想シーンが入るものの、なんと第5話の約半分の時間(20分以上)、整と老人が病室で語らっているだけ。何も起きない平穏な病室を舞台に、菅田と小日向、2人の会話劇で進行していた。

 

 回想シーンで真相が気になるエピソードが挿し込まれるが、当たり前だがそれらは過去の事件。現在進行形で起こっている事件ではないため、スリリングさは皆無。だが、面白い。

 

 菅田将暉と小日向文世という役者の地力に、全幅の信頼を寄せているからこそできる構成であり、緊迫感が薄く視聴者が飽きてしまうのではないかというリスクを覚悟で、臨んだエピソードだったように思う。

 

 このように『ミステリと言う勿れ』という作品は数々のリスクを負いながら、昨今の日本のドラマ業界のマンネリを打破していっているのだ。

 

 しかも、ただ破天荒なことやニッチなことをやっているのではなく、多くの視聴者が面白いと思うクオリティに仕上げて、きちんと視聴率などの数字で結果も出している。

 

 大崩れすることを恐れて、似たような安全パイのドラマばかり生み出されている今のドラマ業界へのアンチテーゼなのではないか、そう思ってしまうほどの意欲作。

 

 こういった攻めたドラマが次々と世に出てくれば、日本のドラマ業界も再び活性化するのではないだろうか。

 

 今夜放送の第6話、今度はどんな斬新さで魅せてくれるのか、期待したい。

 

堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

 

( SmartFLASH )

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