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高橋光臣、“ギャル男” だった男が役者で花開くまで…きっかけは後輩の弔いだった

エンタメ・アイドル 投稿日:2022.02.20 11:00FLASH編集部

高橋光臣、“ギャル男” だった男が役者で花開くまで…きっかけは後輩の弔いだった

高橋光臣

 

「お祝いなどで『何が食べたい?』と聞かれたら、迷わず『うなぎがいいです』と答えるぐらい、本当に大好きなんです」と、嬉しそうに箸を運ぶのは高橋光臣。子供のころから大好物だったが、高価なうなぎは両親に遠慮してお店で頼めなかった。

 

「自分で稼いでやっと誰にも遠慮せずに食べられるようになりました。のだやさんのうなぎはやわらかくて本当に美味しい。『ノーサイド・ゲーム』(2019年、TBS系)放送中に美味しいものを紹介する番組に出演させていただき、大泉(洋)さんにこちらのうな重をおすすめしたら『美味しい!』と喜んでくださいました」

 

 彼が「うなぎといえばここしか思い浮かばない」と絶賛する東京・入谷にある「のだや」。「朝顔市」で知られる入谷鬼子母神(真源寺)の門前。創業は明治元年という老舗で、行列ができる人気店である。

 

 

 高橋といえば、高校ラグビーの名門、啓光学園(現在は常翔啓光学園)ラグビー部出身。 “ラグビー大好き人間” の印象を抱くのではないだろうか。ところが学生時代のことを聞くと意外な過去が……。

 

「中学はシャ乱Qさんのファンだったので、サックスが吹きたくて吹奏楽部でした。ところが中学2年のときにラグビー部が創部され、運動神経がよかった僕は顧問の先生にスカウトされて始めたんです」

 

 高校もラグビーで啓光学園を選んだのではなかった。

 

「進路相談のときに先生から渡されたラグビーボールに、前年度の全国大会に出場した高校の名前が書いてあって『どこがいい?』と。

 

 僕の名前と同じ『光』という字が入っていた啓光学園に決めたんです。全国トップレベルの名門とは知りませんでした(笑)。入部後は練習が死ぬほど苦しくて、もう嫌で嫌で仕方なかったです」

 

 大学はラグビーではなく一般入試で進もうと決意したものの、受験は全敗。東洋大学のラグビーでの推薦入試を受けることになった。

 

「またラグビーをやるのかと思いながらも、当時流行っていたドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(2000年、TBS系)の舞台が大学から近かったから『いいかも……』と。

 

 そんな適当な理由で上京して、ビジュアルはロン毛の “ギャル男” (笑)。そんな風体で試合に出たら、『あのロン毛、潰すぞ!』と一気に狙われ、このままだと殺されると思ってすぐにロン毛はやめました」

 

 当時を「本当に中途半端なラガーマンだった」と振り返る。だが大学4年時、高橋を根底から変える出来事が起こる。ラグビーの試合中の事故で、かわいがっていた後輩が亡くなったのだ。

 

「昨日まであんなに元気だったのにと。自分も明日はどうなるかわからないという衝動に駆られました。不安と何もできなかった申し訳なさで初めて自分の心を抑えられないというか処理できなくなってしまって。そのとき亡くなった後輩のために何かすれば……自分が恥をかけば心が収まるんじゃないかと思ったんです」

 

 絶対にできないことに挑み恥をかくこと。それを探していた高橋の目に映ったのが、映画『ラスト サムライ』(2003年)だった。

 

「渡辺謙さんの演技に鳥肌が立つほど感動したんですよね、カッコいいなって。そのときに、自分に無理なものは役者じゃないかと思ったんです」

 

■無給の「暗黒時代」を経て朝ドラで人気に

 

 こうして役者になることを決意。養成所のオーディションを受けるも踊れない、歌えない高橋にとって、恥ずかしいことの連続だったが、不思議な心地よさがあったという。オーディションにも合格し、役者として歩み始める。

 

 その後、『轟轟戦隊ボウケンジャー』(2006年、テレビ朝日系)にボウケンレッド役で出演。順風満帆に思われたが、番組終了後、高橋にはオファーがほとんどこなかった。

 

「この後の数年が僕の暗黒時代です。事務所の社長に芝居に向かう姿勢や勉強不足を日々注意され、仕事がないから当然お金も入ってこない。

 

 食べていけないので『ボウケンジャー』のときにお世話になったJAE(ジャパンアクションエンタープライズ)の方に相談して、建設現場などで力仕事のアルバイトをしました。それでも役者をやめようとは思わなかったです」

 

 そんなとき、朝の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』(2012年、NHK)のオーディションに合格。大きなチャンスを掴む。堀北真希さん演じるヒロインの恋人役で、変人かつ生真面目な松岡先生役だ。

 

「プロデューサーの方に『ちょっと偏屈な役だから、阿部寛さんの『結婚できない男』(2006年、フジテレビ系)を参考程度に観ておいてください』と言われたんですね。

 

 僕は全話を見直して、阿部寛さんの完コピをして本番前日のリハーサルに臨んだんですが……その演技を見た皆さんは頭を抱えてしまい、『そういうことではないから、一度、全部忘れてきて』と。

 

 帰りの電車では足がガクガク震えて、せっかくのチャンスを棒に振ってしまった、終わったと思いました」

 

 だが、癖の抜け切らなかった演技が逆に好評を得て、高橋の名は一気に浸透。役がまわってくるようになり、『ノーサイド・ゲーム』で人気を博したのはご存じのとおりだ。

 

「W杯の日本チームの活躍でラグビーがブームになったときに、ラグビーのドラマをやるなら絶対に出演したいと思っていました。NHKのドラマ『不惑のスクラム』(2018年)にも出演させていただき、その後にTBSさんからもお声がけいただきました。

 

『ノーサイド・ゲーム』のオーディションに合格して、(出演者に)元ラグビー日本代表の錚々たるメンバーが揃うなか、ジャイさん(TBS・福澤克雄ディレクター)に『お前がキャプテンだ』と言われたときは、命がけでやるしかないと思いました。

 

 最終話で、僕が演じた岸和田徹がトライするシーンを撮影した際、当たりどころが悪くて首が折れそうになったんです。でもいいシーンが撮れたと皆さんが喜んでくださって。きっと亡くなった後輩が守ってくれたんだなと。これで “弔い合戦” は一区切りついたかなと思っています」

 

“完コピ” の縁が導いたのか、放送中の『DCU』(TBS系)では、阿部寛演じる新名正義が率いる、水中事故や事件を捜査する「DCU」の副隊長、西野斗真を演じている。

 

「半年ぐらい各地の海に通って、ダイビングの免許を取得して挑んでいます。撮影は水中も多いですし、なかなかハードです。スケールも映画のように大きく、圧倒されるシーンも多いと思います」

 

“ギャル男” だった男は、後輩の弔いで始めた “役者” でついに花開いた。

 

「まだ満足できる立場ではないですが、『過去の自分から今の自分に感謝の言葉を言えるか』と問われたら、言えると思うんです。だから、役者が本当に楽しくなるのはこれからです」

 

たかはしみつおみ
1982年3月10日生まれ 大阪府出身 2005年にドラマ『WATER BOYS 2005夏』(フジテレビ系)で俳優デビュー。2012年のNHK朝ドラ『梅ちゃん先生』で注目される。2019年の『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)、2021年の『リコカツ』(TBS系)など話題作に出演。現在放送中の日曜劇場『DCU』(TBS系)に出演中

 

■入谷鬼子母神門前のだや
住所/住東京都台東区下谷2-3-1
営業時間/11:00~売り切れ仕舞い、17:00~売り切れ仕舞い
定休日/月曜(月曜が祝日の場合は翌火曜)
※新型コロナウイルス感染拡大の状況により、営業時間、定休日が記載と異なる場合があります。

 

写真・野澤亘伸
スタイリスト・津野真吾(impiger)
衣装協力・エストネーション、コラム、ナンバーエム

 

( 週刊FLASH 2022年3月1日号 )

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