田 しんいちは、ギターはいつから持ちだしたの?
し サンドウィッチマンさんのツアーの小道具にあったんですよ。
田 え、そっからなの?
し 僕、サンドさんのツアーの手伝いやってたんですよ。ギター自体は中学のころにピョッとさわってたんですけど、やっぱお笑いのプライドが高すぎて、しゃべりでいきたいみたいなのがあって。リズムネタとか、歌ネタ芸人のことは下に見てたんで(笑)。ギターなんて使ってたまるかと思ってました。
そしたらある日、小道具で置いてあったギターを見て、富澤(たけし)さんが「誰か弾けるヤツいねーか?」って。そのひと言ですよ。「あ、僕ちょっとだけ」って言って、スピッツと、ゆず弾いて。「お前、なんでそれ使わねーんだよ」みたいな。
田 僕、ちょっとそれ鳥肌立った。僕も美大行ってたやんか。でも、絵使うのはダサいと思ってて(笑)、ずっと漫才だけで闘ってきたから。
し ホンマはめっちゃ嫌でした。富澤さんが言うから仕方なしに1、2回やっとかなって。僕、もっとセンスあるし! と思ってましたもん。
田 トガってたんや。
し トガってました。今じゃ、もうギターないと舞台で足震えるようになって(笑)。
田中に続き、ブレイクを果たしたしんいち。それぞれが “高い位置” に到達した今こそ、「田中上野」再始動のタイミングではないのか。
田 いや、もうちょっと上にいってからかな。しんいちはまだスタートしたばっかやし、僕も絵本で世界に出られると思ってるんで。絵本といっても、ベースの発想はちゃんとお笑いで闘おうと思っていて、感動的な作品を描こうとかって気持ちはないけど。
し 僕は世界進出とか興味ないし、テレビっ子なんで、バラエティ番組で落とし穴に落ちたり、あとは劇場にちょっと立てれば、それだけで幸せというか。物欲もないし、もうなんもないんですよ。
田 一時期、家もなかったもんな。最後まで生き残るかもな、お前って。
し いちばんいいじゃないですか。ホンマに僕が思うのは、今の時代、みんな頑張りすぎというか。もっとダラダラ生きていったら、もっと楽しいことも見えるのに。読者の皆さんも、今すぐパソコン壊すぐらいの気持ちでいいと思います。
田 パソコンなくなったら僕、漫画の仕事できひんなぁ〜。
おみおくりげいにんしんいち
1985年生まれ 大阪府出身 3月6日、『R-1グランプリ2022』で3199人の頂点に立った。6月19日にはフジテレビで冠番組が放送される
たなかひかる
1982年生まれ 京都府出身 著書に漫画『つまねこ』(講談社)など。絵本に『ねこいる!』、日本絵本賞を受賞した『ぱんつさん』(いずれもポプラ社)がある