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ディーン・フジオカ『パンドラの果実』は刑事ものの皮をかぶったトンデモSFの様相
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.04.30 11:00 最終更新日:2022.04.30 11:00
日テレの土曜22時。またしても奇妙なトンデモドラマが開幕した。同枠の前作『逃亡医F』は、医療ものの皮をかぶった変人大集合のオモシロドラマだったが、今作もトンデモ臭がなかなか香ばしい。
先週スタートしたディーン・フジオカ主演の『パンドラの果実 科学犯罪捜査ファイル』(日本テレビ系)。
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ディーン演じる主人公・小比類巻祐一は、帝都大学生命工学科を首席で卒業し、警察庁に入庁した警視正。新部署「科学犯罪対策室」を設立して室長となっている。
「科学犯罪対策室」のメンバーとして選ばれたのは、科学に疎いが事件解決実績が豊富な元捜査一課のベテラン刑事・長谷部勉(ユースケ・サンタマリア)と、分子生物学を中心に多様な分野で画期的な研究を発表していた天才科学者・最上友紀子(岸井ゆきの)の2人。
「科学犯罪対策室」が最先端技術にまつわる事件を解き明かしていくというドラマだが、こういった作品の概要から、筆者は、昨年7月期の佐々木蔵之介主演『IP~サイバー捜査班』(テレビ朝日系)のような感じだろうと思っていた。
……が、その予想は斜め上に裏切られることになる。
主要キャスト3人のうち2人が、ディーン・フジオカ、ユースケ・サンタマリアというカタカナ俳優だという物珍しさなんて気にならないほど、ストーリーがブッ飛んでいたのだ。
■死者の魂が宿ったかのようなAIロボット【以下ネタバレあり】
ここで、第1話の事件をざっくりと説明しておこう。ネタバレするので未視聴の方はご注意いただきたい。
ロボット開発を手がける企業のCEOが、社内の密閉された室内で、酸素濃度を低下させられ呼吸困難で死亡していた。殺人事件の被疑者としてあがったのが、なんと人間の言葉を理解して会話もできる最先端AIが搭載された介護用ロボット。
簡単に言うと、Pepper君をさらにめちゃくちゃ賢くした感じのヒューマノイドである。
小比類巻との会話のなかでAIロボットがあっさり「CEOは私が殺しました」と自供したり、最上がAIロボットの取り調べをすることになり、ガチの心理的な駆け引きをしたりと、なかなかシュールな展開が続く。このあたりでトンデモ臭が増していくのだ。
結論を言うと、真犯人はAIロボット開発担当の女性社員だったと判明。小比類巻と最上はその女性社員に同じ手口で殺されそうになるも、最後はAIロボットに助けられて事件解決という顛末だった。
■亡き妻を蘇らせようとするマッドポリス
問題はここから。
AIロボットは女性社員が犯人だと気づいており、彼女の犯行を隠匿すべく、証拠となってしまう自身の内部データを消去。そして、彼女にこれ以上殺人を犯させないよう、命令に背いて小比類巻らを救助する。まるで自我があるかのような行動をしていたのだ。
しかも、AIロボットには、女性社員が敬愛していたがすでに亡くなっている、創業者 兼 科学者の脳がコピーされていたとのこと。要するに、死んだ人間の魂がロボットに宿っていたような描写がされていたのである。
事件解決後、小比類巻のバックボーンが明らかになる。彼は5年前に亡くなった妻の遺体をアメリカで冷凍保管しており、どうやら妻を生き返らせる科学技術を探している模様。
そう、愛する者の死を受け入れられないマッドポリスが、禁断の領域に足を踏み込もうとしている物語なのだ。なるほど、だからタイトルが『パンドラの果実』なのかと腑に落ちる。
8000万部突破のダークファンタジー漫画『鋼の錬金術師』の主人公兄弟は、死んだ母を錬金術で蘇らせようとして失敗し、兄は右腕・左脚、弟は体全部を失うという代償を払った。『鋼の錬金術師』は兄弟の身をもって、そんな禁忌を犯してはいけないと警鐘を鳴らしていたのだと思う。
『鋼の錬金術師』でさえ死者が生き返ることはなかったので、まさか現実世界を舞台にした『パンドラの果実』で実現するとは思えない。しかし、だとしたらファンタジー漫画の主人公ばりに非現実的な目標に向かっていく小比類巻に、どのような結末が用意されているのか?
公式サイトを見ると、今後は「若返りウイルス」「不老不死の科学」「脳を転送するマインドアップロード」「亡くなった人に会えるVR」などが事件のテーマになるようだ。なんともトンデモ臭が香ばしいラインナップではないか。
物語の最終的な着地点が気になりすぎる『パンドラの果実』、第2話は今夜放送である。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中
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