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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『男侠(おとこぎ)』最後のステージ…黄色いハンカチに震えが止まらず
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.05.14 06:00 最終更新日:2022.05.14 06:00
土佐のいごっそう。津軽のじょっぱり。肥後のもっこす。これはすべて、頑固者を意味する方言。何を隠そう、こう見えて(どう見えて?)、わたしは純度120%、正真正銘、叩かれてもびくともしない頑固者です(笑)。
公式発表は休業。でも、わたしの中では、密かに身を引くことを決めたとき、ひとつだけ自分と約束したことがあります。
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ーーいつもと変わらず、最後まで全力を出し切ること。
それが、こんなわたしを応援し、休業期間が明けたらまた戻ってくると信じているファンの方へのお詫びであり、感謝の気持ちでした。
ーーさすが!? エラい?
ふふっ。もっと褒めてください。わたしは褒められて、伸びるタイプなので(笑)。
でも、しかし。本当のことを言うと、これはわたしのたんなる性分で。毎日、毎日、燃え尽きるまでやり切らないと、やった感がないというか、気持ちがよくない。ず〜〜〜〜っと、そうやって生きてきたというだけの話です。
ーーどうせやめるんだから、適当でもいいんじゃないの?
それは、だめです。それだけは、やっちゃいけない。納得いかないし、許せない。そういうのは、絶対にイヤなんです。
だって、もったいないじゃないですか。ずっと頑張ってきたのに、最後にそれを引っ繰り返すなんて。自分で自分を全否定するようなものです。
こんな頑固者のわたしを見ていたスタッフは、「やめると言っていたけど…もしかしたら、やめないんじゃないの?」と囁き合い、首をひねっていたそうですが(苦笑)。
自分で決めたその日まで、あと2カ月ちょっとに迫った2002年1月17日……最後のシングルとして発売されたのが、この『男侠』です。
誤解を恐れず、当時の心のありようをそのままストレートにお伝えするとーー。
「え〜〜〜〜っ」でした。
2001年の4月に、「新曲を出すのはこれが最後」と心に決めて『凛として』を発売し、一年間すべての力を出し切って終わりたいと思っていたわたしにとっては、寝耳にすりこぎのような話でした。
ギャルふうに言い換えると、「いいじゃん『凛として』で。え〜〜〜っ!? だめなのぉ? まじ、キャパい」という感じでしょうか(笑)。
■冬美は、もう戻ってこないかもしれないな
しかもです。カップリングとして歌わせていただいた阿木燿子さん作詞、宇崎竜童さん作曲の『日々是好日』が、NHKの帯番組『ひるどき日本列島』のオープニング曲として一年間流されることになって。
これはあとで聞いた話ですが、「冬美は、もう戻ってこないかもしれないな……」と半ば諦めたように呟き、「それでも、やれるだけのことはやっておこう」と、大号令を発した社長の、涙が出るほど嬉しい親心でした。
最後のステージは、2002年3月28日の東京厚生年金会館と、翌29日の大阪厚生年金会館です。
ーー歌だけに集中しよう。
それだけを思っていたので、今思い出そうとしても、この2日間のことは、まるで記憶にありません。
思い出すのはひとつだけ。最後の曲『風に立つ』を歌い始めたそのとき、ファンの方がいっせいに黄色のハンカチを掲げてくださったことです。
客席で、小さく、大きく揺れる黄色のハンカチ……それを見た瞬間、目の前が涙で滲み、心も体も震えが止まりませんでした。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』、そして最新シングル『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、ファン投票によって選曲された『坂本冬美35th Covers Best』と、メモリアルイヤーの締めくくりに『夜桜お七』初のアナログ盤が発売中!
写真・中村 功
構成・工藤 晋