エンタメ・アイドル
【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『雪国~駒子その愛~』表参道の初雪、それは素敵な光景でした
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.05.28 06:00 最終更新日:2022.05.28 06:00
2006年にリリースした『羅生門』からスタートし、『紀ノ川』で完結した名作シリーズ3部作の第2弾として、2007年3月7日に発売したのが、この歌……川端康成さんがお書きになった小説『雪国』をテーマにした『雪国~駒子その愛~』です。
そうです、皆さんよくご存じの「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という書きだしで有名な物語。妻子ある男性と、芸者駒子の哀しくも美しい愛を描いた、日本文学史に燦然と輝く、名作中の名作です。
関連記事:【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『夜桜お七』を救った三木たかし先生の宣言「30万枚売れなければ、頭を丸めます」
バイオリンの音から始まる美しいメロディを書いてくださったのは弦哲也先生で、小説を想起させるフレーズをちりばめた詞を書いてくださったのは……この連載ではすっかりお馴染みとなった、たかたかし先生です。
駒子をオーバーラップさせながらも、どこかに坂本冬美がいるーー。ほかの方に作った詞だったら「待っています。好きだから」となるところを、あえて「待つのは嫌です。だけど好きです」というニュアンスの詞にしてくださって。さすがたか先生、わたしの性格をよくご存じです。わたし、待つのは嫌いですから(笑)。
新曲発表会は、小説『雪国』の舞台となった新潟で、といいたいところですが、マスコミの方々に新潟まで足を運んでいただくのもどうかということで、東京・表参道にあるアンテナショップ「新潟館ネスパス」でやることに決定。緊急スタッフミーティングの開始です。
「新潟といえば、やっぱり雪だよね」
「そういえば……今年は東京に一度も雪が降っていないような……」
「それだよ、それ!」
何がそれなのかよくわかりませんが(笑)、あっという間に意見はまとまり、
「よぉ~し、表参道に初雪を降らそう!」
ということで、「新潟館ネスパス」の屋上から人工雪を降らせることになったのです。
■いくつになっても、遊び心は忘れたくない
阿吽の呼吸といいますか、類は友を呼ぶといいますか、わたしがこんなだからスタッフもこうなっちゃうのかなといいますか……おもしろそうな匂いがすると、即座に一致団結しちゃうところが、チーム坂本冬美のすごいところです。
3月の表参道に降る、真っ白な雪。うおぉぉぉぉぉ~んというモーター音を抜きにすれば、それはもう、素敵な光景でした。
東京だけじゃありません。新潟にも行かせていただきました。湯沢町歴史民俗資料館「雪国館」で歌わせていただいたのもいい思い出です。
「冬美ちゃ~ん」という黄色い声に、「冬美~!」という腹に響く、おじさまたちの声も交じって。なかには、わたしに向かって手を合わせるお婆ちゃんもいらして。
「観音様じゃありませんから、拝まないでくださいね」とかなんとか、笑いを取りにいった記憶が……あります(苦笑)。
あっ、今、思い出しました。この年の10月に、西田敏行さん主演のTBSドラマ『浅草ふくまる旅館2』にゲスト出演させていただいたのですが、なんと! このときの役が芸者さんで、名前は……駒子でした。
偶然? いや、いや、そんな偶然はありません。きっと、脚本家の方の遊び心だったと思います。
ーーやるときは、やる。真剣に、ありったけの力で、思いをこめて。
でも……いくつになっても、遊び心は忘れたくない。そんなことを考えている、今日このごろです。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。約1年半ぶりのニューシングル『酔中花(すいちゅうか)』が発売中!
写真・中村 功
構成・工藤 晋