注目の若手俳優・浅香航大　オーデション落ち続けた過去…「今も、必要とされなくなる危機感がある」

■「王道の二枚目役は “違う” と思っていた」

 

　浅香は17歳のときに俳優を目指して現在の事務所に所属した。

 

「正直、子供のころから夢とかあまりなかったんです。ただ、人前で表現するのは好きで、ぼんやりとした憧れはありました。それで、役者をやってみたいと高校2年生のときに今の事務所に入ったんです。

 

　芸能事務所を探したときも、（現在の事務所）A-TeamのAがアルファベットの最初の文字だからここに入った」

 

　そんな意識でうまくいくわけはない。浅香に仕事のオファーはなく、オーディションにも落ちまくった。

 

　2011年、ようやくドラマ『花ざかりの君たちへ〜イケメン☆パラダイス〜2011』（フジテレビ）にキャスティングされる。この「イケメン」という評価に浅香は葛藤した。

 

「王道の二枚目路線的な役柄や見られ方にはずっと抵抗がありました。キラキラしてるものや、カッコいいイケメンに対して『そんな奴は現実にはいないだろ』という抵抗があったんです。キラキラしたイケメン的な雰囲気を持つ男性に対して『僕とは違う』という思いがずっとありました」

 

　そんななか、映画『桐島、部活やめるってよ』（2012年）に出演する。神木隆之介、鈴木伸之ら若手俳優たちが多数出演した作品で、浅香は存在感を示した。

 

「映画出演1作めにあの作品に携われたことは、やはり大きかったと今でも思います。同世代の俳優ばかりの現場で、すべてが初めてのことだらけ。リハーサルをしっかりとやり、撮影はロケ地に缶詰め。まるで合宿のようでした。没頭できるというか、集中して役に入り込める環境でしたね」

 

　この現場で学んだことが、今も浅香を支えている。

 

「『俳優はいつカメラで撮られてもいいように、常に仕上がった状態でいなければならない』『俳優はモニターチェックなどで自分の演技を確認してはいけない』。あの現場で教わったことを、ほかの現場でも守っています」

 

　この作品を機に、浅香はさまざまな役柄を演じ、若手カメレオン俳優としてキャリアを重ねていった。

 

「ドラマ『あなたの番です』（2019年、日本テレビ）の刑事役もそうですが、僕が演じる役が登場すると誰かが殺されたり、波乱を起こしたり、クセのある役を演じてきました。

 

　僕自身も悩みや苦労がある人が好きなんです。自分もそうなんです。俳優をやっていて、気持ちの上げ下げも激しいし、迷って立ち止まることも多いし……」

 

　そういう自分を最近になって「やっと受け入れられるようになった」という。そして、当初は避けていた二枚目役にも興味が出てきたという。

 

「脇でクセのある役のオファーをいただく機会も多いのですが、恋敵や当て馬ではなく、主軸のほうに挑戦したいという気持ちが強くなってきています。30歳を前にして、いまさらですが『キラキラした王道の恋愛モノをやりたい』と思うようになってきたんです」

 

　現在放送中のドラマ『花嫁未満エスケープ』（テレビ東京系）で演じるのは、デビュー当時に「違う」と思っていた王道イケメン役だ。

 

「10代のころはわからなかったのですが、お芝居の技術だけで成立させるというよりも、自分自身が陶酔して役を演じることも大切だと思うんです。恋愛モノにはそういったよさがある。作品は漫画原作ですが、漫画的な表現でなく、しっかりと現実に存在した人間として落とし込んで演じるという作業も、今の自分ならできるんじゃないかと思っています」

 

　これからどう俳優を続けていくのだろうか。

 

「僕は性格的に周囲の空気を読んでしまうタイプで、それがお芝居にも影響する部分もあると思うんです。妥協や嘘をなるべくやめて、芝居の純度を高めていきたいですね。

 

　これからのことはわからないです。いまだに毎日不安なんです。

 

　今は連続ドラマに4本出演できていますが、口癖のように『次の仕事、なんですか』『この後、何月ってどうなってるんですか』と事務所に聞くような状態なので、仕事が入っていると安心するんです（笑）」

 

あさかこうだい
1992年8月24日生まれ　神奈川県出身　2011年、『花ざかりの君たちへ～イケメン☆パラダイス～2011』（フジテレビ）で連続ドラマデビュー。映画『桐島、部活やめるってよ』（2012年）に出演。その後、ドラマや映画を中心に「クセのある役」を多数演じる。NHK連続テレビ小説『マッサン』（2014年）、『ひよっこ』（2017年）への出演も話題に。4月から『村井の恋』（TBS系）、『花嫁未満エスケープ』（テレビ東京系）など4本の連続ドラマに同時出演している

 

【羊や カブト本店】
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写真・伊東武志

 

( 週刊FLASH 2022年6月7日号 )