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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『おかえりがおまもり』故郷を思うと浮かぶ母は、パワーをくれるすべての源

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.06.04 06:00 最終更新日:2022.06.04 06:00

【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『おかえりがおまもり』故郷を思うと浮かぶ母は、パワーをくれるすべての源

2011年の紀伊半島大水害で流されてしまった赤橋

 

 倉本聰さんと4アーティストがお届けする、スペシャルプレミアムな音楽ナイト。彼らが紡ぎたかった歌、歌いたい想い、奏でた景色、紡ぎたかった音とはーー。

 

 こんな素敵なコンセプトで、2011年1月31日から4夜連続で放送されたのが、TBS系の『風がはこんできたもの~音楽の原風景~』です。

 

 第1夜がJUJUさん。第3夜が辻井伸行さん。第4夜がコブクロさん。そして、第2夜としてご指名いただいたのが、このわたし、坂本冬美でした。

 

 

 故郷・和歌山でのミニコンサート……最後に歌ったのが、この日のためだけに作っていただいた『おかえりがおまもり』です。

 

 作詞・作曲は、川村結花さん。SMAPの『夜空ノムコウ』(作曲)、FUNKY MONKEY BABYSの『あとひとつ』(共作詞・共作曲)などを手がけられ、ご自身もシンガーソングライターとして活躍されている、尊敬すべき女性です。

 

 事前に、故郷や青春時代の思い出、両親のことなどをあれこれお話しして。出来上がってきた歌を聴いた瞬間から、心が激しく揺さぶられ、ーーこれは……やばい……。

 

 と思いましたが、いざ本番では、さらに大きな感情の波に襲われて。泣いちゃいけない、泣かずに最後まで歌い切らなきゃいけない……そう思えば思うほど、後から後から涙が溢れ出てきて……。歌う前から、恥ずかしい姿を晒してしまいました。

 

『風に立つ』もそうですが、思いが重なりすぎる曲というのは、歌うのがとっても難しくて。淡々と歌うと意味がなくなってしまうし、感情をこめると重くなりすぎる。どう歌うのがいいのか模索中です。

 

 昨日より今日。今日より明日。少しでもいい歌手でありたいと願っているわたし、坂本冬美の歌の道は、まだまだ道半ば。発展途上の歌手です。

 

 この一夜限りの歌が、急遽CD化され、皆さんのもとにお届けできたのは7カ月後の9月14日……東北地方を襲った大震災から6カ月。台風12号によって故郷・和歌山に甚大な被害をもたらした紀伊半島大水害から、わずか10日後のことです。

 

■富田川に架かる赤橋には青春時代の思い出が……

 

 河川から氾濫した濁流が、一瞬にして人の生命を呑み込み、土石流が家々を押し潰す。青春時代の思い出……わいわい、きゃーきゃー言いながら、男の子も女の子も、一緒になって川に向かって飛び込んだ、富田川に架かる赤橋も流されてしまいました。

 

 残念です。寂しいです。悔しいです。でもーー。

 

 豪雨に見舞われる数カ月前、『おかえりがおまもり』のジャケット撮影があって。青春の思い出が詰まった、この赤橋で撮影しようということになり、わたしの中学時代をイメージしたモデルの女の子が、物憂げに佇んでいる姿がジャケット写真として残っているのが、故郷を思う心の道標となっています。

 

 ジャケットを見つめて思い出すのは、汗と涙に濡れた青春時代……。初めての恋も、この流されてしまった赤橋とともにあります。

 

 浮かんでくるのは友の顔、亡くなった父の顔、そして、ずっとわたしを応援し続けてくれる母の顔……今のわたしにとって故郷を思うことは、母を思うことです。

 

 わたしが帰る場所は、母のもと。わたしにとって母は、歌うためのパワーや元気をくれる、すべての源です。だから……。

 

 お母ちゃん、まだまだ、元気でいてくださいね。

 

さかもとふゆみ
67年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、約1年半ぶりのニューシングル『酔中花(すいちゅうか)』が発売中!

 

写真・中村 功
構成・工藤 晋

 

( 週刊FLASH 2022年6月14日号 )

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