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『未来への10カウント』最終話、木村拓哉が倒れるシーンから透けて見える “自信のなさ”
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.06.09 11:00 最終更新日:2024.07.23 13:33
最終話でそんな使い古された展開、してほしくなかった。80年代や90年代のドラマで多用されていた “衝撃的展開” は、令和の今ではもはや全然衝撃ではない。
今夜、最終話(第9話)が放送される木村拓哉主演のドラマ『未来への10カウント』(テレビ朝日系)。
最終話の予告動画では、主人公・桐沢祥吾(木村)がボクシング部の練習中にリング上で倒れてしまい、「さよなら桐沢」という文字が大きく映し出されていた。
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この最終話予告を観て率直に思ったのは、主人公の安否で興味を引くような安っぽい “衝撃的展開” はいらないよ……ということ。
うがった見方をすると、そんなシーンでも入れないと最終話を観てもらえないかもしれないという、脚本家や制作陣の不安や自信のなさが透けて見えたような気がして、残念な気持ちになってしまった。
ここでストーリーを簡単におさらいしておこう。
桐沢は高校時代に4冠を達成した元天才ボクサーだが、大学時代に網膜剥離を起こして引退。その後、最愛の妻を亡くしながらも焼き鳥店の店主として生きがいを見出したものの、コロナ禍で閉店することになり、ピザ屋のデリバリーバイトで食いつなぐ自暴自棄な生活を送っていた。
そんな彼が母校の高校ボクシング部のコーチに就任し、廃部危機だった部を立て直していくという物語だ。
主要キャラであるボクシング部3年生・伊庭海斗(King & Prince・髙橋海人)の引退試合を、中盤回である第4話にもってくるなど、スピーディな展開で飽きさせない工夫がされていた。
また第5話からは、大阪から転校してきたボクシング実力者の1年生・西条桃介(村上虹郎)が新加入し、生意気なトラブルメーカーとしてドラマに盛り上がりを与えてくれてもいた。
しかし、このドラマには大スターであるキムタクと対峙して映えるような大物ライバルキャラがいないため、最終話を前にしても盛り上がりがいまいちなのは否めない。
■主人公の安否で気を引こうなんて…安易すぎて萎える
最終話の見どころは主に3つ。
桐沢へ恋心を抱いており、第8話に酔った勢いで逆プロポーズしてしまったボクシング部顧問の国語教師・折原葵(満島ひかり)との、恋愛の行方はどうなるか。
ボクシング部のコーチと非常勤講師を続けながら、焼き鳥店を復活させて奮起する桐沢が、三足の草鞋のハードワークな日々を無事乗り切れるかどうか。
ボクシング部の生徒たちがインターハイ予選で宿敵に勝利し、これまでの雪辱を果たしてインターハイ出場が叶うかどうか。
……このように見どころは多いのだが、正直言ってひとつひとつの引きが弱く、最終話が気になってしょうがないというレベルではないのである。
脚本家や制作陣も、視聴者の興味を惹き付ける要素の薄さを危惧していたからこそ、冒頭で触れた桐沢が意識を失って倒れ込むシーンを作り、「さよなら桐沢」と仰々しく煽ったのではないか。
だが筆者は、この桐沢が倒れるシーンには本当にげんなりしてしまった。
実はこれまでにボクシング実力者の1年生・桃介が、脳に動脈瘤を抱えていることが判明し、ボクサー生命が断たれるというストーリーになっていた。第8話では、もう選手としてリングに立つことはできないが、ほかの部員たちの練習相手になるといった桐沢のサポート役として復帰したのである。
要するにこのドラマでは、桐沢が大学時代に網膜剥離で引退、桃介が脳の病気で引退と、ボクシングにおける悲運展開の “カード” をもう2枚も使ってしまっている。
最終話、倒れてしまった桐沢が大病や大ケガに見舞われるのだとすれば、不幸を連発させすぎで、あまりに安易な脚本だと思えてしまう。かといって、三足の草鞋のオーバーワークによるただの過労でした……みたいなオチだとしたら、クライマックスにとんだ肩透かしである。
そもそもの話をするなら、現役アスリートが主役のスポーツドラマならば、選手生命の危機ということで気になるだろうが、本作の主人公はとっくに現役引退しているコーチなわけだから、倒れたところで……。
桐沢がどんな原因で倒れたかは最終話を観ないとわからないが、もうそんな展開が挿入されている時点で萎える。繰り返すが、主人公が倒れてしまう “衝撃的展開” なんて、全然衝撃ではないのだ。
――本作の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は第1話から第8話まで11.8%、10.5%、9.9%、9.6%、10.6%、11.1%、10.5%、11.2%と推移。
第3話でキムタクのドラマ史上、初の一桁台に陥落ということで大きな話題になったが、第5話以降は二桁台に復帰しているので木村の底力を見せつけた形。できれば主人公が倒れるなんてシーンは入れずに有終の美を飾ってもらいたかったが……どんな最終話になるか、見守りたい。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中
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