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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】一つだけ願いが叶うなら…忌野清志郎さんに会いたい!
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.06.25 06:00 最終更新日:2022.06.25 06:00
作詞・忌野清志郎
作曲・細野晴臣
歌うのは、わたし坂本冬美……とくれば、当然3人のユニットHISですが、NHKラジオ80周年記念として制作された『Oh,My Love~ラジオから愛のうた~』は、2005年に坂本冬美の名義で出させていただいたシングルです。
3人が揃うのは14年ぶり。HISのときは、右も左もわからず、ただただ圧倒されっぱなしだったわたしですが、それなりに年を重ね、いろんなことを経験し…自分で言うのもアレですが、もう立派な大人の女です。だったらいいなという希望的観測が、かなり含まれていますが(笑)。
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ーー頑張るぞ!
レコーディングを前に、よけいな力が、体中に入りまくっていたのはいうまでもありません。
ところがです。細野さんの自宅兼スタジオで待っていると、自転車に乗った清志郎さんが、ふらりとやって来て。しかもその姿が、いかにも “やぁ、久しぶり” という感じで。それを見た瞬間、懐かしいやら、嬉しいやら……一瞬にして、時が14年前に遡っていました。
ニコニコと笑っている清志郎さんの横に、目尻を下げた細野さんがいるのは、あのときと一緒。時折、恥ずかしそうに俯くような仕草も、極端に言葉が少ないのも同じです。
歌入れが始まって、細野さんの口から溢れる言葉は、「いーね」「サイコー」「うまいなぁ」のほぼ3フレーズ。つられたように清志郎さんも、「い~よ~」「うん、い~ね~」「い~ぞ~」という、ほぼ3フレーズで(笑)。14年前とほぼ同じ光景でした。
あぁ、なんて幸せなんだろう。
いつまでもこの時間が続けばいいのに……。
無理だとわかっていても、やっぱり、そう思わずにはいられませんでした。
だったら、せめてお2人といられるこの貴重な時間を楽しもうーー。
ただそれだけを思って、ありったけの思いをこめて、お2人が私のために作ってくださった歌を一生懸命に歌わせていただきました。
■四十路一歩手前でセーラー服でステージに
HISとして舞台に立たせていただいたのはこの翌年、2006年2月25日、大阪城ホールでの『新ナニワ・サリバン・ショー』です。
清志郎さんと細野さんは学生服で、わたしはセーラー服……このとき四十路一歩手前でしたが、恥ずかしくてなんていっている場合じゃありません。
3人仲よく手を繋いで登場した後は、『パープル・ヘイズ音頭』から始まって、『Oh,My Love~ラジオから愛のうた~』『500マイル』へと続き、『Pom Pom蒸気』では、細野さんがボーカルを務めてくださり、ラストは『幸せハッピー』。
3人でステージに立ったのは、これが最初で最後…わたしにとっては夢のような時間でした。
「もう1回、HISをやりたいんだよねぇ」
打ち上げの席で、ぽつりと漏らした細野さんの横で、「うん、い~ね~」と、目を細めながら笑顔で頷いた清志郎さん。
わたしは、あのときの光景を忘れることができません。
もしも、もしも、神様がひとつだけ願いをかなえてくださるとしたら……わたしは、清志郎さんに会いたい。会って、なぜわたしに声をかけてくださったのかをお聞きしてみたい。なぜ、わたしだったのか? わたしのどこを気に入ってくださったのか……お聞きできなかったことが、唯一の心残りです。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、約1年半ぶりのニューシングル『酔中花(すいちゅうか)』が発売中
写真・中村 功
構成・工藤 晋