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土屋太鳳『やんごとなき一族』最終話、石橋凌の極上の “負け顔” で全部スッキリ【ネタバレあり】

エンタメ・アイドル 投稿日:2022.07.01 20:10FLASH編集部

土屋太鳳『やんごとなき一族』最終話、石橋凌の極上の “負け顔” で全部スッキリ【ネタバレあり】

 

 うがった見方をするなら、予定調和だらけで予想どおりの最終話。

 

 だが逆に言えば、それは熱心なファンたちが望んだ “最大公約数のフィナーレ” を、愚直に描いたとも考えられる。

 

 6月30日に最終話(第11話)が放送された土屋太鳳主演の『やんごとなき一族』(フジテレビ系)。

 

 大衆食堂の看板娘である佐都(土屋)は、江戸時代から400年以上続く由緒正しき名家・深山家の次男である健太(松下洸平)と結婚する。

 

 

 しかし、深山家はまさに現代の伏魔殿。格違いの結婚を猛反対する深山家当主である義父・圭一(石橋凌)から追い出しを画策されたり、次期女主人の座を奪われた義姉から執ようなイジメを受けたりと、散々な目に……。

 

 庶民である主人公が上流社会の超セレブ一族に嫁ぐことになり、骨肉の争いに身を投じていくというドラマだった。

 

■【ネタバレあり】敵が味方になり、弱者が強くなり…王道展開

 

 最終回はスピーディに物語が進んでいった。

 

 佐都と深山家当主・圭一の対立だけでなく、第10話から健太が記憶喪失になったり、最終話で深山家が数百億円の損失を抱えて経営破綻の危機に見舞われたりと、問題は山積。

 

 だが、大きな壁が立ちはだかる一方で、主人公勢への風向きがテンポよく変わっていく。昼ドラばりにドロドロの関係だった義姉が佐都に謝罪して和解し、記憶喪失のままだが健太と佐都は再び手を取り合い、健太は嫉妬心から宣戦布告され不仲だった長男と和解するのだった。

 

 そうして迎えたクライマックスシーン。

 

 経営危機から脱するために、ドバイの大富豪から巨額投資してもらう商談をしていたが、圭一のウソがバレて窮地に。だが圭一は佐都が意見しても「女ごときがでしゃばってくるな!」と取り合わない。

 

 そんなとき佐都の義姉、義妹、義母ら5人の女性陣が颯爽と登場し、圭一に反旗を翻す。「自分がどれだけのもんだと思ってるの、みんな同じ人間でしょ」「私たちはあなたの召使ではございません!!」と矢継ぎ早に圭一を口撃。

 

 佐都を毛嫌いしていた義姉や旦那の言いなりだった義母らが、啖呵を切って佐都を援護射撃してくれる姿はまさに爽快。

 

 敵だった者が味方になり、弱かった者が強くなり、主人公に加勢してくれるというのは少年漫画などの王道展開で、予定調和ではあったが、上質なカタルシスが得られた瞬間だった。

 

 また、佐都も主人公としての見せ場を作る。

 

 佐都はこれまで、圭一に反論するときは「はばかりながら申し上げます」と言っており、それが彼女のお決まりのセリフになっていた。

 

 が、このシーンでは「私たちはもう黙りません! 自分のためにも、大事な人のためにも、もう、はばかったりしない」と、最後の最後で “はばからない宣言”。主役の貫禄を見せつけるのだ。

 

 意外性はなかったものの、アドレナリンがぶっしゃ~と分泌されるようなクライマックス。最終話まで熱心に視聴していたファンたちは大満足だったろう。

 

■最大の功労者は石橋凌? 負け顔と改心した演技が最高すぎる

 

 この最終話の盛り上がりの最大の功労者は、主人公を演じた土屋太鳳ではなく、当主・圭一を演じていた石橋凌だったように思う。

 

 石橋と言えばボス、首領(ドン)、フィクサーといった役どころが似合うコワモテ俳優だが、とにかく “負け顔” が素晴らしかった。

 

 ドバイの大富豪は圭一が当主の座を辞することを条件に投資契約を結ぶと言い、圭一は健太に当主の座を譲る展開に。

 

 その一連の流れで圭一が見せた、劣勢に陥って動揺する表情、女性陣からの口撃にひるむ表情、負けを悟り茫然とする表情……どれもが視聴者の留飲を下げるための最高のエッセンスとなっていたのだ。

 

 しかも、党首から退いた圭一は深山家から姿を消し、見つかったのは数カ月後。なんと圭一はホームレスになっており、薄汚れた身なりで公園の水道水を蛇口からガブガブ飲むという、わかりやすすぎる転落ぶり。

 

 率直に言って、圭一がホームレスになっていたのは意味不明だった。

 

 党首の座を息子に譲ったとしても先代当主として裕福な暮らしは継続できるわけだし、百歩譲って深山家を飛び出したとしても、宿ナシでここまで落ちぶれるというのは違和感だらけ。さすがにこれはありえないと感じた。

 

 しかし、である。

 

 意味不明だし違和感だらけだったが、これはこれで演出として大正解だったように思う。

 

 そもそもこの作品は、突拍子もないレベルの金持ち一家を描いた非現実的な物語だし、昼ドラ顔負けのトンデモ展開や過剰演技で話題を集めてきたドラマ。

 

 一応、本筋はシリアスなストーリーながら、コメディ要素を意図的にチラつかせて人気を博していたので、この圭一のありえないぐらいの転落っぷりも俄然アリだと思った。

 

 そして、男尊女卑の権化だった圭一がこれまたわかりやすく改心。妻に「ありがとう」とお礼を言い、佐都の実家にわざわざ出向いて「今までのこと、申し訳なかった」と謝罪し、深々と頭を下げるのだ。

 

 極めつけはラストシーン。まだ結婚式をしていなかった佐都と健太の式が執りおこなわれる。

 

 これまでの圭一は、孫は跡取りとなれる男児しか認めないような態度で、佐都と健太の間に誕生していた女児には見向きもしなかったのだが、式場では孫娘にデレデレ。おどけながら “いないいないばぁ” をするなど、ただの好好爺に……。

 

 そんな劇的な豹変も多くの視聴者が期待していたに違いない。選民意識が強く独裁的で傲慢の限りを尽くしてきた最終話までの姿が、壮大なフリになっていたからだ。

 

 ――最終話の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は6.8%。決して誉められた数字ではないかもしれないが、石橋凌のアッパレな負け顔や豹変した改心演技で、熱心なファンほど、極上のスッキリ感を味わえたのではないだろうか。

 

●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

 

( SmartFLASH )

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