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【坂本冬美のモゴモゴモゴ】『ブッダのように私は死んだ』桑田佳祐との秘話
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.07.09 06:00 最終更新日:2022.07.09 06:00
デビューして34年……。2020年11月11日に発売させていただいたのが『ブッダのように私は死んだ』。この曲を作ってくださったのは……桑田佳祐さんです。
ーーわたしに、曲を書いていただけませんでしょうか。
思いの丈を手紙に託して、お返事をお待ちすること数カ月……。
嗚呼、やっぱりだめだったのね……と、半ば諦めかけたそのときにいただいたのが、レコーディングスタジオへのお招きでした。
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こ、これはいったい……どういうことだろう?
もしかして……正式なお断わりのお返事!? いや、いや、まさかとは思うけど、ひょっとして、ひょっとすると大変なことが起きるなんてことは……。いや、ない。それは……ない。じゃあ、なんだろう?
このときのわたしの気持ちを、文学的に表現するとしたら、そうですねぇ……モヤモヤが無限ループのように体中を駆け巡り、わたしの乙女心は波間に漂うひとひらの葉のように、上に下に大きく揺れ動いていました……という感じでしょうか。
■レコーディングから1年後に情報解禁
だから、です。
「お忙しいなか時間を作っていただきありがとうございます。お返事が遅くなってすみません」という丁寧なご挨拶の後に、桑田さんの口から溢れ出たお言葉……。
「こんなものを書いてみたんですが、どうでしょう?」と、歌詞を手渡されたときは、もう、なんといいますか。
足はガクガク、ハートはドキドキ……まるで、恋心を持て余した10代の少女のようでした。微に入り細を穿つように歌唱指導をしていただき、レコーディングさせていただいたのが、2019年10月。
情報解禁となったのが、それから1年後……です。
言いたい。言いたくてたまらない。みんなに自慢してまわりたい。でも……言えない。
この間のわたしの嬉しい苦しみを、皆さんわかっていただけますでしょうか。
誤解を恐れずに言い切っちゃいますがーー。
これまでのわたしは、この歌を、桑田さんに作っていただいた『ブッダのように私は死んだ』を、歌うためにありました。
『うわっ、ダサっ……』という心の中の呟きで止めておけばよかったのに、畏れ多くも恩師・猪俣公章先生に向かって、「この歌は流行らないと思います」という暴言を吐いてしまったデビュー曲の『あばれ太鼓』。あの歌があったからこそ一歩、また一歩と階段を上り、辿り着いた先に、この『ブッダのように私は死んだ』が待っていた……。今、あらためてそう感じています。
きっと、わたしとは違うとらえ方で、この歌の世界観を歌い上げる方がいらっしゃるでしょう。わたしよりうまく歌える方も、いっぱいいると思います。
でも、だけど、しかし、です。
ごめんなさい。どれだけうまく歌える方がいらしたとしても、これはわたしの歌です。桑田佳祐さんが、坂本冬美のために作ってくださった歌なんですのよ。フフフッのエヘヘッ、でございますのよ。オホホホホ。
歌う場所によって、そのときに着ている衣装によって、毎回、違う主人公がそこにいるーこんなにもドラマチックで、こんなにも奥が深い歌に巡り合えることは、この先もうないと思います。
歌えば歌うほど新しい発見があり、歌えば歌うほど難しくなっていく……こんな素敵な歌をプレゼントしてくださった桑田さんには、感謝しかありません。本当にありがとうございます!
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、約1年半ぶりのニューシングル『酔中花(すいちゅうか)』が発売中
写真・中村 功
構成・工藤 晋