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杏&坂口健太郎『競争の番人』地味な素材をそのまま扱った地味ドラマ…制作陣の実力不足が露呈か

エンタメ・アイドル 投稿日:2022.08.15 11:00FLASH編集部

杏&坂口健太郎『競争の番人』地味な素材をそのまま扱った地味ドラマ…制作陣の実力不足が露呈か

 

 素材は地味ながら、調理方法次第で絶品料理になりそうなのに、いかんせん料理人の腕が未熟で素材のよさを引き出せていない――『競争の番人』(フジテレビ系)というドラマを例えるなら、こんな感じである。

 

 先週月曜に第5話が放送された本作。フジテレビが誇る看板枠「月9」で、坂口健太郎と杏のダブル主演とあって放送開始前の期待値が高く、第1話の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は11.8%と好スタートを切っていた。しかし、第2話で約3%も急落して8.9%になってしまい、その後も第3話9.4%、第4話9.4%、第5話8.0%と二桁復帰できていない。

 

 

 独占禁止法に関わる違反行為を取り締まる行政機関「公正取引委員会(公取委)」の活躍を描くという異色のドラマ。公取委と言えば、不正が疑われる企業に家宅捜索に入り、ダンボールに入った押収資料を運び出す姿が、実際のニュース番組でたびたび映し出されている。そのため、組織の存在自体は知っていても、実際にどういう活動をしているのか知らない視聴者が多いテーマ(素材)と言える。

 

 事件解決ものドラマの花形職業と言えば刑事や弁護士なので、公取委の審査官が主役というのは地味に思える。だが、これまでドラマや映画でほとんどスポットライトが当たらなかった公取委をフィーチャーするということで、目のつけどころが新鮮で大傑作になるのではと期待していたドラマファンも多かったのではないか。

 

■つまらなくはないが、絶賛するほど面白くもない

 

 第5話まで視聴した感想を忌憚なく言わせていただくと、地味な素材をわりとそのままストレートに描いており、驚くような創意工夫はなく、結果、そのまま地味な作品に仕上がっている。つまらなくはないが、絶賛するほど面白くもない。視聴していておかしなシーンや矛盾点といったツッコミどころはほとんどない代わりに、特筆して語りたいほどの見どころもない。小さくまとまっている印象だ。

 

 特に第4話、第5話で描かれた世界的電機メーカーによる優越的地位の濫用、いわゆる下請けいじめを追及するエピソードは地味だった。悪役の電機メーカー役員を岡田義徳が演じたのだが、キャラクター的にいまいち振り切れておらず、そのぶん盛り上がりもいまいち。

 

 第1話、第2話、第3話は、複数のホテルが裏で共謀してウエディング費用を高額な横並びで取り決めていた問題を描いており、こちらは山本耕史が演じたホテル専務の悪役っぷりが非常に憎々しく、多少見応えがあったが……。岡田が役者として実力不足だったと言いたいわけではない。問題は脚本や演出にあったのではないだろうか。

 

 そもそもこの作品は、公取委の職員である肝心の主人公2人が、視聴者を惹きつける強烈な魅力を持っているとは言いがたい。坂口が演じるのは東大法学部を首席で卒業したエリートで、変わり者の天才タイプ。杏が演じるのは男勝りな性格の元刑事で、感情のままに行動する熱血タイプ。

 

 残念ながら両者とも、ほかのドラマや映画で観たことのないような唯一無二のオリジナリティはなく、どこかで見たことのある既視感満載のキャラクターなのである。無個性というわけではないが、「はいはい、またこういうタイプのありがちな主人公ね」と思ってしまい、類型から抜け出せていないように思う。

 

 ちなみに、主人公2人が所属する「公正取引委員会 第六審査」というチームには、大倉孝二、小池栄子、加藤清史郎という実力のあるいい役者がズラリ。また、坂口演じる主人公と因縁があり、おそらく本作のラスボスになるであろう国土交通省・事務次官役は、名優・小日向文世が演じている。

 

 けれど、やはり彼らが演じるキャラクターもそこまで独自性があるわけではなく、類型どおりな気がするのだ。

 

■主要キャラクターたちの魅力不足で突き抜けられない壁

 

 解決までに二転三転して先が読めないので、ストーリーの大筋は悪くない。となると、やはり問題は、主要キャラクターたちの魅力不足で突き抜けていない部分だろう。お話としてはまぁそこそこ面白いのだが、主人公や悪役がフォーマットどおりなので、面白さが想定を上回ってこない。想定内のエンタメ感なので、こじんまりとした壁を感じるのだ。

 

 公取委という地味な素材を扱うのは、それだけ面白くする難易度が高いということで、腕に自信がない限りは手出ししないほうがいいとも言える。相当自信があったのか、それともただ単に目新しさに飛び付いてしまったのかはわからないが、せっかく揃えたいい役者たちを活かしきれず、制作陣の実力不足が露呈してしまっているように思う。

 

 たとえば阿部寛主演『下町ロケット』(2015年・2018年/TBS系)は町工場という地味な舞台の作品でも大ヒットしたし、石原さとみ主演『アンナチュラル』(2018年/TBS系)も不自然死という地味な題材を扱いつつ、多くのドラマファンが大絶賛。

 

『競争の番人』と同じ「月9」作品である窪田正孝主演『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(2019年・2021年/フジテレビ系)も、放射線科医という地味な職業にスポットを当てながら、視聴率が好調で、今年映画化もされた。たとえ地味な素材でも、確かな腕を持った制作陣が生み出す脚本や演出に、俳優陣がしっかり演技で応えれば、きちんとヒットさせられるということだ。

 

――今夜放送の第6話から物語はいよいよ後半戦に突入。後半戦では日本の根幹を揺るがすほどの強大な闇と戦うことになるらしく、小日向演じる国土交通省・事務次官との直接対決が見られるはず。ラスボス・小日向の怪演などが飛び出せば、ここからまだ巻き返せるかもしれないが、はたして……。

 

堺屋大池

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

 

( SmartFLASH )

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