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『この子は邪悪』で話題の桜井ユキ 女優人生を変えた演出家・石丸さち子氏、樹木希林さんとの出会い
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.09.03 06:00 最終更新日:2022.09.03 06:00
「私はモノに対する執着心があまりなくて、思い切ってどんどん処分しちゃうタイプ。でも、この2つの家具だけは、10年以上大切に使ってきました」
桜井ユキ(35)が見せてくれた写真に写っているのは、シンプルなテレビボードと棚。無垢の木で作られたそれらの家具は、オーダーメードだという。
「23歳のとき、女優になりたくて福岡から上京しました。じつは高校卒業後にも一度上京しているんですけど、そのときは人の多さと標準語に馴染めず、数カ月で逃げ帰っちゃったんですよね(笑)」
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意を決してやってきた二度めの東京。
「とりあえず、揃えた家具で一人暮らしをスタートしたんですけど、間に合わせで買ったものには愛着が持てなくて、部屋に帰っても虚しい気持ちになったのをすごく覚えています。だから次に住む部屋は、絶対に落ち着ける空間にしたいと思っていました」
引っ越しを決めて、彼女が足を運んだのは、知人が営む家具店。以前からその店で扱っている家具に惹かれていたこともあり、素材から相談してオーダーメード家具を作ってもらった。
「アルバイトで生計を立てていた私にとっては高価なものだったんですけど、一生使える家具がほしかったんです」
2つの家具は、まだ何者でもなかった桜井ユキが、女優としての階段を上っていくのを見守ってきた。
「私が『女優になりたい』と思ったのは、小学校3年生のときでした。だからといって、熱心にテレビや映画を観るとかはなくて、ただただ『私は東京に行って女優になるんだ』と思うばかりで」
本格的に上京してから受けた演劇のワークショップで、台本を渡されて初めて「お芝居ってどうやるの?」と途方に暮れてしまった、と苦笑しながら振り返る。
「蜷川幸雄さんの演出助手をしていらした、演出家の石丸さち子さん主宰のワークショップだったのですが、ここでようやく『女優ってやりたいと思ってできることじゃないんだ』と思い知りました。我ながら遅すぎますよね(笑)」
演劇を学ぶなかで、それまでとは違う自分が発見されていく経験は新鮮で、つらくておもしろかったという。
「今は映像のお仕事が多いですが、石丸さんに厳しく指導していただけたからこそ、今の自分があるのは間違いないですね」
もうひとつの大切な出会いは、女優・樹木希林さんだ。
「ワークショップに通っていたころに映画で希林さんを観て、雷に打たれるってこういうことなんだと実感するくらいの衝撃を受けました。お芝居はもちろんのこと、インタビューで口にされる言葉のひとつひとつに説得力があって、私もこんなふうに年を重ねて、お芝居と向き合っていきたいと強く思いました」
舞台やCMに出演するようになり、2013年からは映画に活動の場を広げ、2016年は『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)で、連続ドラマに初出演して話題となった。以来、彼女は常に唯一無二の魅力を発揮し続けている。
最新作の映画『この子は邪悪』で演じているのは、美しさの奥に謎を秘めた母親役。
「こうだろうと思うことが次々に裏切られていく映画なので、どこまでお話ししていいかわからないのですが……究極の家族愛がテーマの作品です。これ以上は言えません(笑)」
役柄を演じるうえで、桜井が大切にしているのは衣装合わせだという。
「台本はいつも感情を排除して覚えるんです。そのうえで衣装を着て、メイクを終えた瞬間に、この人はこういう考え方をするだろうな、こんなことをするんだろうなという感触が、バーッと広がっていく感じがありますね。今回も “繭子” のワンピースを着たときに、一気にイメージが湧いてきました。身に着けるものって、その人の内面が出ると思うから」
確かに着ている服、ヘアスタイル、そして部屋に置く家具にも、人となりは反映される気がする。
女優として確実に歩みを進めてきた間、常に彼女の傍らにある家具の素材は無垢のオーク材。美しい木目と丈夫さが特徴のオーク材は、強い意志としなやかな感性を持つ桜井ユキとどこか重なる。
「使っているうちに、少しずつ色合いが変わっていくのもオーク材の魅力。シミができたりするけど、それもまた味なんです。これからもずっと側にいてほしい大切なパートナーです」
さくらいゆき
1987年2月10日生まれ 福岡県出身 2011年女優デビューし、『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』で映画初主演。おもな出演作は、映画『スマホを落としただけなのに』『真っ赤な星』『鳩の撃退法』、ドラマ『G線上のあなたと私』『真犯人フラグ』など
※映画『この子は邪悪』 新宿バルト9ほかにて全国上映中。世にも奇妙な家族を描いた謎解きサスペンス。出演:南沙良、大西流星(なにわ男子)、桜井ユキ、玉木宏ほか
写真・中村功
取材&文・工藤菊香