エンタメ・アイドルエンタメ・アイドル

渡辺徹 『太陽にほえろ!』出演時、石原裕次郎さんにかけられた言葉「同じ俳優同士、ライバルだからな」

エンタメ・アイドル 投稿日:2022.09.11 11:00FLASH編集部

渡辺徹 『太陽にほえろ!』出演時、石原裕次郎さんにかけられた言葉「同じ俳優同士、ライバルだからな」

「こちらのお店にも家族で伺っています」(渡辺徹)/【四季膳ほしや】東京・成城にて

 

■『太陽にほえろ!』の撮影開始3日で肉離れ

 

 入所して1年後、渡辺は昭和を代表する刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(1972〜1986年、日本テレビ)への出演が決まる。

 

「松田優作さん、宮内淳さん、山下真司さんなど歴代新人刑事の多くは文学座から抜擢されました。プロデューサーさんがよく舞台を見に来てくださったので、そのときに俺に目をとめてくださったのだと思います。

 

 石原裕次郎さんは検査入院中でした。病院にご挨拶に伺うと、居合わせた事務所の方々に『ちょっと外してくれないか』とおっしゃり、2人だけになったところで『君が渡辺徹君か。今はちょっと休んでいて現場に迷惑かけているからよろしく頼む。だが現場に戻ったら同じ俳優同士。ライバルだからな。負けないぞ』と19歳の俺の両手を握り締めてくれたんです。『この人のために頑張らなくちゃ』と涙があふれました」

 

 撮影は過酷だった。

 

「『とにかく走らされるぞ』と聞かされていたので、クランクインまでの半年は毎日、一日20km走りました。

 

 実際、初日からハンパなく走らされ、撮影3日めに脚の肉離れ。台本に『ラガー、聞き込み』とあったので演技のイメージを膨らませて現場に入っても『走れ!』の指示。『聞き込みは?』と聞いたら『バカヤロー。走れ!』でした。

 

 テイク10くらいで監督さんのOKが出ても、ゴリさん(竜雷太)の『今のはOKじゃないでしょ』で撮り直し。また走る。そして、吐く。

 

 ロケを見ていたファンも『見てはいけないものを見てしまった』といった表情で去って行きました」

 

 しかし、今は「あの現場はすべてが愛情だった」と思える。

 

「新人の役者がカッコつけて演技をしても視聴者の皆さんには見透かされます。

 

 だけどとことん走らされ、汗と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔は演出では出せない一番いい表情。スタッフさんは時間を惜しまないで、それを撮ってくださったんです」

 

 歌手デビューもした。2ndシングル『約束』は小泉今日子と共演した「グリコアーモンドチョコレート」のCMタイアップになった。

 

 反対した父親は自宅のステレオのスピーカーを外に向け、農作業をしている近所の人たちに曲を聞かせたそうだ。

 

『太陽にほえろ!』を卒業した翌々年、『風の中のあいつ』(1984年、日本テレビ)などで共演した榊原郁恵と結婚した。共演当初の印象は、お互いに最悪だったそうだ。口喧嘩はいつものことだった。

 

「向こうは芸歴も人生(年齢)も先輩だから鬱陶しいことを言うんです。まあ、現場でも夕方になれば酒を飲んだりした俺が悪かったんですけど。だって『太陽にほえろ!』の現場がそうだったから(笑)。

 

 ドラマの撮影が終わり『これで清々する』と思ったら逆にさみしくなって。そんなときに『続編決定』の知らせ。嬉しかったなあ。それを(榊原に)話したら、『え! 私もそうだったの』って」

 

 まもなく結婚35年になる。

 

「最初は好きという気持ちが強かったけど、今は『必要な存在』。好きは冷めることもありますけど必要は冷めることがないですね。小言の鬱陶しさは相変わらずだけど(笑)」

 

 ドラマ、映画、バラエティで活躍しながら、積極的に文学座の舞台にも立っている。それは原点を思い出すためだ。

 

「長く役者をやっていると怒られることがなくなるんです。上手に芝居ができなくても “そのまま” みたいなことがあります。でも、文学座は伝統的に後輩が先輩に歯に衣着せぬもの言いをします。そこで『俺はまだ、これができないのか』とわかるんです。それと役者を目指したときの『みんなで何かを作りたい』という思いにさせてくれる役者さんやスタッフさんが文学座にはまだまだいるんです」

 

 渡辺は60歳を過ぎて自分を見つめる機会が増えた。同時に迷いにも気がついた。

 

「先日も女房とそんな話をしました。『体力も昔とは違う。俺は表現者としてどうなんだろう』と言ったら『お父さんは人と交わる力があるから、演じるだけじゃなく演出とか後輩の役者さんのためにできることがいっぱいあると思う』って言われました。『そうかあ』とストンと落ちました。

 

 だからこれからもとことん『作ること』にしがみついていきます」

 

わたなべとおる
1961年5月12日生まれ 茨城県出身 1980年、文学座附属演劇研究所入所。1982年ゴールデン・アロー賞放送新人賞、1984年エランドール新人賞、2000年菊田一夫演劇賞を受賞。舞台『今度は愛妻家』(東京公演10月7日~23日よみうり大手町ホール、大阪公演10月26日~30日COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール、宮城公演11月5日~6日電力ホール)に出演予定

 

【四季膳ほしや】
住所/東京都世田谷区成城6-22-5 
営業時間/ランチ11:30~14:00、ディナー17:30~22:00 
定休日/水曜 ※木曜はディナーのみ営業

 

写真・野澤亘伸

( 週刊FLASH 2022年9月20日号 )

続きを見る
12

エンタメ・アイドル一覧をもっと見る

エンタメ・アイドル 一覧を見る

今、あなたにおすすめの記事