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『silent』聴覚障害者となった目黒蓮の “情けなさ” が狂おしくて最高すぎた

エンタメ・アイドル 投稿日:2022.10.13 11:00FLASH編集部

『silent』聴覚障害者となった目黒蓮の “情けなさ” が狂おしくて最高すぎた

 

 うわー、せつねー……というのが率直な感想。

 

 これは恋愛コラムニストの立場から言わせていただく、最大級の賛辞である。

 

 先週木曜に第1話が放送された川口春奈Snow Man目黒蓮が共演する恋愛ドラマ『silent』(フジテレビ系)。健常者の女性が、聴覚障害者になっていた元彼氏と、別れてから8年後に再会する物語だ。

 

 

 群馬県にある高校の同級生だった青羽紬(川口)と佐倉想(目黒)は、高3のときに惹かれ合い、恋人に。しかし想が大学進学で上京した直後、紬は想からの「好きな人がいる。別れたい」という1通のLINEメッセージだけで、一方的にフラれてしまう。

 

 それから8年、紬も上京しており、想と偶然再会。逃げる想を追いかけてつかまえた紬は、想が泣きながら手話で訴えかけてきたことで、手話の意味はわからないながらも、聴覚障害で耳が聴こえなくなっていた事実を知る――というのが第1話の展開だった。

 

■甘酸っぺー! という一言に尽きた告白シーン

 

 第1話は現在の時間軸をベースに、たびたび8年前の時間軸も挿入され、高3時代に紬と想が恋に落ち、恋人になり、別れのLINEを受け取るまでが描かれた。

 

 過去パートでは特に告白シーンがよかった。

 

 下校中の想を紬が追いかけ、追いついたところで間髪入れずに「好きです、付き合ってください」と “秒” で告白。けれど、残念ながら想はイヤホンをつけており、紬の言葉は聴こえていなかった。だが、その後、今度は想のほうから「好き。付き合って」とシンプルに告白。

 

 もうこれは、甘酸っぺー! ……という一言に尽きた。

 

 細かく解説するのは無粋だし、文章では言い表せない絶妙な表情や間があるので、未視聴の方はぜひ観ていただきたい。この一連の告白シーンの空気感はとにかく美しかった。

 

 そして、このイノセントな恋愛を見せつけられていたからこそ、第1話ラストで想が涙を流しながら紬に手話で語る言葉が狂おしいのだ。

 

 再会した想に紬が話しかけるが、何も言葉を発せない想。無視されていると思い込んだ紬が「そんなに私と話したくない?」と尋ねると、しばしの沈黙の後、堰を切ったように手話で語り始める。

 

《声で話しかけないで 一生懸命話されても 何言ってるかわかんないから 聞こえないから 楽しそうに話さないで 嬉しそうに笑わないで》

 

《なんで電話出なかったのか 別れたのか これでわかっただろ?》

 

《好きだったから だから 会いたくなかった 嫌われたかった 忘れてほしかった》

 

《うるさい お前 うるさいんだよ》

 

 これらの言葉を想は手話で一気にまくし立てる。紬に意味が伝わっていないことを承知で手話を使い続けるのだ。

 

■元カノに手話で鋭利な言葉をぶつける情けない男

 

 このシーン、想役の目黒の演技がとても素晴らしかった。

 

 まず手話で語り出す前に、聴覚障害をこのまま隠しておきたいという葛藤の表情を見せる。何か声を発そうとする素振りもあった。手話で語っている途中からは顔をぐしゃぐしゃに歪めて涙を流す。

 

 そして、手話で語られる言葉の数々は、どこか情けない。

 

 紬だってつらい気持ちを押し殺し、無理して笑顔を作っていたのだが、《楽しそうに話さないで》と恨み節のような言葉を投げかけているし、戸惑いながらも必死に向き合おうとする紬に《うるさいんだよ》と鋭利な言葉もぶつける。

 

 紬は何も事情も知らされずに一方的にフラれたわけだから、いっさい非はない。だとすると、紬にこんな尖った言葉の数々を向けるのは、本来ならばひどい話だ。

 

 端正な顔立ちで高身長という “ザ・イケメン” な目黒だが、泣きじゃくりながら伝わっていない手話を繰り出し続けるその姿は、やはり情けなく見えた。

 

 だが、その情けなさが素晴らしかった。狂おしさを何倍にも増やしていたからだ。

 

 このシーンに必要なのは人間の弱さを表現すること。

 

 イケメン特有の自信に満ち満ちた強さは、このシーンではむしろ邪魔になる。目黒はそれを理解して強さを打ち消し、感情がたかぶった哀れな男を見事に憑依させていた。

 

 想だって、紬が1ミリも悪くないことは百も承知。本人が誰よりもわかっているはずだ。にもかかわらず、紬へ激しい感情をぶつけてしまう。耳が聴こえない想が《うるさいんだよ》と吐露するに至るまでの心境を想像すると、胸が痛すぎるのだ。

 

 突然手話を見せられた紬役の川口の当惑し続ける表情も秀逸だった。

 

 切に願っていた再会だったはずだが、想が手話で語りかけて来ることは想定外も想定外だったのだろう。怒涛の手話の意味が一切わからず、しかし困惑しながらもこれが別れの原因だったのかと悟っていく。

 

 ……とにかく切ない。

 

■1年前の『最愛』第1話を彷彿させる切なさ

 

 まったく違うドラマではあるが、1年前に放送されたヒット作『最愛』(TBS系)の第1話ラストに匹敵する切なさがあった。『最愛』の第1話も過去と現在が交錯し、過去に恋仲だった2人が現在で再会するも、境遇や立場が変わってしまった2人が対比されたラストだった。

 

『最愛』はサスペンスやミステリーの要素もあるドラマだったのでジャンルが異なるが、すれ違う純愛の狂おしさという意味では、『silent』に同レベルで引き込まれた。

 

『silent』第1話の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は6.4%と低調スタートだったが、“ラブコメドラマ” ではなく “恋愛ドラマ” が好きというドラマファンなら、観るべき作品だと思う。

 

 今夜放送の第2話の予告映像では、紬が覚えたての手話で想に話しかけるシーンがあった。どのように着地する物語なのか、最終話まで見逃せない。

 

堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿

( SmartFLASH )

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