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【坂本冬美のモゴモゴ交友録】由紀さおりさんーー「世の中にこんなにきれいな人がいるんだ」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.10.29 06:00 最終更新日:2022.10.29 06:00
好きなアイドルはトシちゃん。好きなアーティストは桑田佳祐さんで、憧れの人は石川さゆりさんーー学生のころから、この思いはずっと変わっていません。わたしって、けっこう一途なんです。
でもそれ以前に「世の中には、こんなにきれいな人がいるんだ……」と、口を半開きにしたまま、惚けたような顔でテレビ画面を見つめたのが……由紀さおりさんでした。
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テレビの企画で、2人でドライブをしながらいろんなことをお話しさせていただく機会があり、そのときにじつは……と打ち明けたんですが、あっさり「あら、そうなの?」と返されてしまって(笑)。
皆さん、由紀お姉さまの美しさと可憐さ、清楚さ、スターのオーラに見惚れてしまいがちですが、性格はサバサバしていて、瑣末なことはまるで気にしません。心の奥底には揺るぎない信念と、歌に対する熱い思いをずっとお持ちの、わたしなんか足元にも及ばない、尊敬すべき大先輩なんです。
幸運なことに、由紀さんとはレコード会社が同じということもあって、これまでさまざまな場面でお声をかけていただきました。
『夜桜お七』を出したときは、「お着物に、こういうのをつけるのもお洒落なのよ」と、イヤリングをプレゼントしてくださり、『ブッダのように私は死んだ』を出したときには、「あらあなた、今度の歌、すごくいい歌じゃない。大切に歌いなさいよ」と、お言葉をかけてくださって。
思い返すと、ずっとわたしのことを気にかけ、温かく見守ってくださっているような気がします。
ーーえっ!? 由紀さんのすごさ、ですか?
ここでそれを全部書いてもいいんですか? 本一冊分は優にありますよ。えっ!? 2つ3つ……ですか? そうですねぇ、声を大にして言いたいのは、今いる場所に立ち止まらず、新しいことに目と耳を向けていることです。
新しいことに挑戦し続けるバイタリティは、由紀さんの爪の垢をちょっと飲むくらいじゃ、とうてい追いつけそうにありません。
お一人で電車にも乗るし、デパートでお買い物もされるし、病院にも行く。1時間近く待って会計をして、お薬をもらうのも、すべて由紀さんご自身でおやりになる。
喉を保護するために出かけるときは、いつもマスクを着用。コロナ禍になる以前から、ずっとそうです。
それなのに「変装しても、すぐ声でバレちゃうのよね」と、屈託のないお声で笑う由紀さんは、憧れの女性です。
そんな由紀さんに、ひとつだけ “ごめんなさい” を言えずにいることがあって……。
表向きには休業宣言でしたが、もう二度とここには戻ってこないという決意で開いた記者会見の後、由紀さんから、「一年休んだら、戻ってくるときは3倍、5倍の時間がかかるのよ、大丈夫?」と、優しく声をかけていただいて。
でもあのときは、わたしは、どうしても、本当の気持ちを打ち明けることができませんでした……。
本当に、ごめんなさい。
でも今、こうして当時を思い出しながら原稿を書いていて、ふと気がつきました。
きっと、由紀さんはわたしがもがいている姿を見ていて、すべてわかったうえでお声をかけてくださったような気がします。
ーーそれでも、あなた、歌は捨てられないわよ。
そう思いながら、戻ってきたときは大変よと、仰ってくださったような気がします。
由紀さおりというお姉さまは、そんな素敵な方ですから。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』(小社刊)が発売中!
写真・中村 功 取材&文・工藤 晋