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川口春奈主演の『silent』再生回数トップの「2つの大きな理由」を世代・トレンド評論家が分析
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.10.30 15:43 最終更新日:2022.10.30 15:45
10月からフジテレビ系で放送されている、川口春奈主演のドラマ『silent』。FODやTVerでの見逃し配信の再生回数が歴代最高を記録するなど、大きな話題となっている。
主人公の青葉紬(川口)は、高校の同級生で恋人の佐倉想(目黒蓮)から卒業後のある日、一方的に別れを告げられる。
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8年後、紬は同じく高校の同級生で、想とも友人だった戸川湊斗(鈴鹿央士)と交際していた。そんなある日、紬は街で偶然、想を見かける。彼は病気で、聴力を失っていることがわかった。紬、想、湊斗はそれぞれを大切に思うがゆえ、3人の想いが絡み合い……というストーリーだ。
聴覚障がい者との恋愛を描いたドラマは、常盤貴子と豊川悦司が共演した『愛していると言ってくれ』(1995年・TBS系)、酒井法子、大沢たかお、竹野内豊らが出演した『星の金貨』(1995年・日本テレビ系)、妻夫木聡、柴咲コウが共演した『オレンジデイズ』(2004年・TBS系)など、大ヒットした作品が多い。
2022年春には恋愛ドラマではないが、笑福亭鶴瓶演じる聴覚障がい者の父と、吉岡里帆演じる娘を描いたホームコメディの『しずかちゃんとパパ』(NHK)が評判となった。
世代・トレンド評論家の牛窪恵氏によると、聴覚障害者とのラブストーリーが人気を博すのには、大きな理由が2つあるという。
「まずひとつは、社会環境です。ブームというのはそのときの景気、経済や大きな事件、事故などに左右されるもので、『愛していると言ってくれ』や『星の金貨』が放送された1995年は、バブル崩壊後。
世の中の景気がいいとき、社会にはある程度、満ち足りた人々が増え、上昇志向が高まり、日常の当たり前のことに対して、ありがたみを忘れがちです。そういう状況下では、法廷ものや医療ものなど、人々の憧れの職業を描いたドラマが脚光を浴びやすい。
逆に、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻が進む今、自分の命や健康、あるいは家族や友達がいかに大事かということ、日々の日常が続くのは当たり前ではないのだということに私たちは気づかされます。
このように、社会全体が不安や困難に直面しているときは、たとえばハンディキャップがある方はどれだけつらく大変なのだろう、と思いを馳せるようになるんですね。
そのなかで目が見えない、耳が聴こえないといった障がいをテーマにしたドラマを見ると、自分も何かできることをしたい、力になりたいと感じ、ドラマの登場人物にも共感しやすくなるのです」
もうひとつは、テクノロジーの発達だという。あらゆる分野でデジタル化が進み、効率を高めることが優先される時代になると、逆に人と人との温もりが求められるようになる。
「多くの物事がコスパやタムパ(タイムパフォーマンス)で判断される昨今ですが、一方で、本当に大切な人とは、時間をかけて接することが重要だとの思いがあります。
とくにZ世代をはじめ若者は、ふだんはLINEで『りょ(了解の略語)』など、スピーディーに連絡を取り合うこともありますが、親友や恋人には写真をプリントしたり、手書きのメッセージを添えたりするなどの労を惜しみません。
また、これはコロナ禍の調査で明らかになったことですが、多くの人がネットショッピングにさらなる利便性、簡便性を求め始める一方で、店頭ではスタッフさんと深くコミュニケーションを取り、自分を理解してもらいたいと欲しているんです」
今はスマホひとつあれば、オンラインでいつでもどこでも人と会うことができる。だが、牛窪氏によると、心を通わせたい相手とは直接、会い、時間、空間を共有したいという思いが、人々の間でいっそう強くなっているという。
「『silent』で川口さんが演じる主人公は、元カレと偶然、再会し、コミュニケーションを取りたいがために手話を覚えます。全身全霊で相手に思いを伝えようとする姿に、視聴者は心を揺さぶられ、『頑張れ』と応援したくなります。こうした視聴者の思いは、すぐにTwitterなどで発信でき、共感が瞬く間に広がっていくのが、現代の特徴です。
『silent』は、番組公式Twitterのフォロワーが放送開始から1か月で45万人を超えました。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の『恋ダンス』や、『半沢直樹』(TBS系)の “顔芸” などのわかりやすいパフォーマンスは、すぐにSNS上で人気に火がつきました。
『silent』では、2人が会話するときに、『UDトーク』という音声認識で声を文字化するコミュニケーションアプリが使われています。やはりTwitterでは、『自分もアプリを入れてみた』『使ってみたい』などという声が多く投稿されました。
これが、ドラマの宣伝につながった側面もあると思います。今後はそういった“仕掛け”も、作品のさらなる盛り上がりのカギを握るでしょうね」
視聴者は、紬と想の思いを共有し、恋愛のクライマックスを一緒に“体験”することだろう。
( SmartFLASH )