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『silent』目黒蓮と鈴鹿央士の切ない友情…まるで「90年代ドラマ」を観ているような喜びが
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.11.03 11:00 最終更新日:2022.11.03 11:00
『silent』(フジテレビ系)を観ていると、デジャブのような感覚というか、懐かしい感覚を覚える。
まるで90年代のドラマを観ているよう。
『silent』が昔のドラマをパクッているとか、古臭いドラマだと言いたいわけではない。きちんと今風のストーリーになっていて、むしろアップデートされて令和ならではのドラマになっている。
それでも、どこか懐かしい。
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90年代の恋愛ドラマ全盛期は、こんなふうに劇中の登場人物たちの言動に一喜一憂して、来週はどうなるんだといつもソワソワしていた。ともすれば、まるで自分事のようにドキドキしていた。そんな記憶が甦るのだ。
■恋愛ドラマで男同士の友情がここまで切ないのは稀有
川口春奈とSnow Man・目黒蓮が共演する恋愛ドラマ『silent』。主人公・青羽紬(川口)が、別れて8年後に再会した元彼氏・佐倉想(目黒)は、聴覚障害者になっていたという物語である。
群馬県にある高校の同級生だった紬と想は、高3のときに惹かれ合い、恋人に。しかし想は高校卒業後に耳の病気が発覚し、そのことを隠したまま紬には「好きな人がいる。別れたい」とLINEで別れを告げる。また、親友の戸川湊斗(鈴鹿央士)らにも心配をかけまいと、連絡もせず縁を切っていた。
それから8年が過ぎ、紬と湊斗は交際し、同棲をスタートさせようかというとき、3人が東京で再会する。
先週木曜に放送された第4話は、想と湊斗、男の友情にフィーチャーされた回だった。8年ぶりに2人きりで向き合ったことで、想は耳が聴こえなくなっただけで、ほかは何も変わっておらず昔のままだと実感する湊斗。
……そして第4話のラストで湊斗は紬に別れを告げる。
当然、紬のためを思っての決断なのだが、視聴していて正直かなり驚いた。こんなお人好しな男いるか? と。
ただ、確かに湊斗は、ここまで徹底的に温和で優しいキャラクターとして描かれていたため、彼の性格を踏まえて考えると、納得できる行動だった。そして、第4話の結末を知ったうえでこの回を振り返ると、中盤からずっと湊斗が別れの準備をしていたことに気付かされる。
紬との散歩中に、「もし別れても、別れたとしても、別れるまでに楽しいことがいっぱいあったら、それでいいのにね」とさらっと言っていたこと。
紬と湊斗が散歩しているところを想が目撃し、その後、想が湊斗にLINEで冗談めかして「一緒にいたの彼女?笑」と送るも、そのメッセージを既読スルーしていたこと。
湊斗が紬の弟に手話を覚えたらどうかと提案したところ、弟が「なんで手話覚えろとか言うの?」と怒り、そこから2人が無言になったこと。
こうして列挙するとわかりやすい “別れフラグ” だったと思える。だが、紬と湊斗は恋人として固い絆で結ばれている描写もたびたび挿入されていたため、初見のときはまさかこの回で湊斗から別れを告げるとは思っていなかった。
そのため、“別れフラグ” だった湊斗の言動にも「ん?」という違和感がある程度だった。振り返って観たことで点と点が線でつながったのだ。
そういえば、第3話のラストで湊斗が紬にこんなことを語っていた。
想に紬を取られるんじゃないかと嫉妬してイライラしているほうが、友達の病気を受け入れるよりずっとラクだった、と。
なかなか深い心理である。
自身の浅はかな嫉妬心に身を委ねていれば、その瞬間だけは親友の障害という、つらい現実と向き合わなくてすむという心理状態。湊斗は恋人として紬のことを好きなのは当然だが、たぶん、それと同じぐらい親友として想のことが大好きなのだ。
この第3話ラストの湊斗の吐露を踏まえると、第4話のラストで湊斗から別れを告げたのも腑に落ちる。恋愛ドラマにおいて男女の恋愛で切ない展開は数あれど、男同士の友情でここまで切ない展開はなかなか稀有だろう。
■むしろ1週間を待たされることが楽しく感じるドラマ
『silent』第1話から第4話の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は6.4%、6.9%、7.1%、5.2%と推移。第3話まで右肩上がりで来た視聴率が第4話で下落してしまっているが、プロ野球・日本シリーズの試合中継の影響で90分も繰り下げ放送となったので、致し方ないだろう。
『silent』の場合、視聴率以上に話題になっているのがTVerの見逃し配信記録。放送後1週間で第1話は443万再生、第2話は489万再生を記録しており、この第2話の数字はTVerで過去に配信された民放全ドラマにおける歴代最高記録となっているそうだ。
それにしても、むしろ1週間待たされることがここまで楽しく感じるドラマは久しぶり。
サブスク配信が全盛の今、一気見したほうがノーストレスだというのはわかる。しかし、前話の余韻に浸りながら、次回はどうなるのかとあれこれ考えながら待たされる1週間も悪くない。
実際、『silent』のような心の機微が丁寧に描かれた作品は、1話観終わるごとに反芻して、登場人物たちの心情に深く寄り添うことで、作品の味わいが増す気がする。
一気見を否定するわけではないが、キャラクターの心情を深く考察していきたい作品の場合、1週間待たされるぐらいがちょうどいい。そういう意味でも、『silent』は90年代の恋愛ドラマを観ていたときの感覚を甦らせてくれるのだ。
――今夜放送の第5話は、紬と湊斗は本当に別れてしまうのかが注目ポイント。1週間待たされて湊斗の心情を深く理解できているからこそ、どうなるのか気になって仕方がない。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中
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