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中森明菜『スローモーション』後にポツリ「たぶん、清瀬に帰るの」“花の82年組”後発で曲集めに苦心【歌姫証言集(1)】

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.11.16 06:00 最終更新日:2022.11.16 06:00

中森明菜『スローモーション』後にポツリ「たぶん、清瀬に帰るの」“花の82年組”後発で曲集めに苦心【歌姫証言集(1)】

『十戒(1984)』が大ヒット。ツッパリ路線の集大成(1984年撮影)

 

 島田は作詞家・売野雅勇が書いた『少女A』に合う曲を探していた。売野の事務所にはのちにチェッカーズで大ヒットを連発する作曲家の芹澤廣明が在籍していた。

 

「芹澤さんのストック曲に『少女A』の歌詞をはめてみたら微調整するだけで仕上がったんです。危険な雰囲気が漂っていて、これは絶対売れると思いました」(島田)

 

 島田は研音へ赴き、明菜に『少女A』を聴かせた。明菜は歌詞を一瞥して表情を変えた。

 

「大爆発でした。『絶対嫌だ! こんな歌嫌だ!』と大暴れ。顔を真っ赤にして涙を流し鼻水を垂らして『絶対に歌わない!』と睨みつけてきた」(同)

 

 明菜のあまりの激高ぶりに島田は動揺したが、腹は決まっていた。

 

「この曲を歌うんだよ! これで売れなかったら俺が責任を取って担当を降りる。だから、歌え!」

 

 島田は明菜と初めて意見が分かれ対立した。島田は落としどころを見つけられないまま、事務所を後にした。

 

 レコーディング当日。明菜は時間どおりに現われた。デモテープを聴いて怒り散らしたあの表情のままソファに体を沈めた。重い沈黙がスタジオを支配した。先に口を開いたのは明菜だった。

 

「どうしたの? せっかく来たんだからやろうよ」

 

 明菜はムスッとしたまま島田に視線を送った。

 

「真剣勝負ですから甘い顔は見せられません。明菜の様子をうかがいながら30分くらい黙ったままでした。頃合いを見て『1回やってみるか』と声をかけました」(同)

 

 明菜はブースに入り、マイクの前に立った。

 

「リハーサルするから歌ってみてくれ」

 

 島田はエンジニアにリハの歌も録音するよう指示を出した。怒っている明菜はそう何度も歌わない。少しでも録れるものは録っておきたかった。ワンコーラス終わったところで、島田が歌を止めた。

 

「全然気持ちが入ってない! おもしろくもなんともないんだよ!」

 

 容赦のないダメ出し。強い口調で明菜を煽った。島田の厳しい言葉は明菜のプライドに火をつけた。本番3本め。歌の途中で島田の背筋にバチバチッと電流が流れた。

 

「明菜の歌を聴いて痺れたのはこれが初めての体験でした。明菜の怒りの感情が歌に乗って、すごいものが録れた! やった! と思いました」(同)

 

 1982年7月28日発売の2ndシングル『少女A』は、瞬く間にチャートを駆け上がり最高5位を獲得。『ザ・ベストテン』(TBS系)にも初出演し、最高3位を記録した。

 

 NHKでは放送禁止になったが、明菜は一躍、トップアイドルの仲間入りを果たした。

 

「既存のアイドルはファンタジーの世界。僕には嘘くさく見えてしまう。かわいさとしたたかさを併せ持つ女性の二面性を『スローモーション』と『少女A』で提示したのです。明菜のもうひとつのコンセプトは『リアリティ』でした」(同)

 

 明菜の快進撃が始まった。

 

※《中森明菜「歌詞が聴こえない」苦情電話が殺到でも本人は“もっと要求”「彼女はレディー・ガガだった」【歌姫証言集(2)】》に続きます

( 週刊FLASH 2022年11月29日・12月6日合併号 )

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