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榎木孝明 「学芸会並みの演技」と罵倒されたことも…45年の俳優人生、いまだ夢見る本格時代劇の撮影

エンタメ・アイドル 投稿日:2022.11.20 11:00FLASH編集部

榎木孝明 「学芸会並みの演技」と罵倒されたことも…45年の俳優人生、いまだ夢見る本格時代劇の撮影

榎木孝明

 

■「演技は学芸会」並みと罵倒されて

 

 6年後、四季を卒業する。在籍中は映像作品への出演が禁止だったため、活動の場を広げたいと思った。翌1984年、NHK連続テレビ小説『ロマンス』で主役に抜擢された。

 

「監督からはダメ出しばかりでした。『いつまで舞台芝居をしてるんだ』と怒られ、腹式呼吸で台詞を言えば『日常生活でそんな声は出さないだろう』と。舞台の癖が抜けるまでには何年もかかりました」

 

 だが実力は演劇界、映像界の誰もが認めていた。33歳になった榎木は代表作のひとつにもなった映画『天河伝説殺人事件』(1991年)に出演。

 

「じつは前年に映画『天と地と』で上杉謙信役をさせていただきましたが、監督だった角川春樹さんには『お前の演技は学芸会だ。俳優、やめちまえ』と罵倒されっぱなし。実際に下手だったんですけど、殺してやろうかと思ったほどです(笑)。しかし、その角川さんが浅見光彦役に推薦してくださいました。驚いたのと同時に『謙信役をうまくやりおおせたことで、ご褒美がいただけたのかな』と思いました」

 

 原作のファンだった榎木。

 

「浅見光彦の優柔不断なところなど、びっくりするほど自分に似ていました。『作者の内田(康夫)先生は、なんで俺のことをこんなに知っているんだ』と思ったほどです。だから役にはすんなり入れました」と笑う。内田氏もしばしば「榎木さんに初めて会ったとき、目の前に浅見光彦がいた」と語っていた。見えない不思議な縁がお互いを結びつけたのだろうか。1995年からはフジテレビでシリーズ化され放送された。榎木は2002年放送の第14作まで浅見光彦を演じていたが、なぜ降りたのだろうか。

 

「内田先生があるとき『最近、シリーズを書いていると君(榎木)の顔が出てきて邪魔をするんだよ』とおっしゃったんです。もちろん私が役に同化しているいい意味でのお言葉だったんですけど、先生の執筆にお邪魔になるのは本意ではありませんから降板を申し出ました」

 

 すると内田氏から「条件」を伝えられた。それは浅見光彦の兄、警察庁刑事局長の浅見陽一郎役に就くことだった。

 

「当時は西岡德馬さんがその役をお務めでしたから、しばらくしてのバトンタッチになりました。西岡さんも快くまかせてくださり感謝しかありません。陽一郎役で39作出演させていただきました」

 

 その後は、内田氏本人の役で出演している。内田氏の夫人が「主人を誰よりもよく知っている榎木さんに演じていただきたい」と切望したという。

 

 これまで多くの役を演じた榎木の俳優人生は、45年になる。

 

「終わりのない旅をしているような気持ちです。結果が見える世界ではないので答えもありませんし、納得できることも少ないですけどそれが楽しみでもあります」

 

 榎木にはやり残した夢がある。本格時代劇の撮影だ。

 

「初めて時代劇に出演したのは『真田太平記』(1985~1986年、NHK)でした。時代劇は予算が現代劇の1.5倍ともいわれます。しかし、私にはまだまだ描きたい歴史上の人物がいます。薩摩には傑物がたくさんいます。なかでも村田新八はスポットを当てたい。大久保利通から後継指名をされ『西郷(隆盛)のところには行くな』と言われながらも最後は西郷のもとに馳せて西南の役で亡くなります。西郷とともにひとつの時代を大きく変え、役目を終えたら潔く去り後進に譲る……。浅見光彦の役を降りたときの私に似ている? 私の体に流れる薩摩人の血がそうさせたとしたら、嬉しいですね」

 

えのきたかあき
1956年生まれ鹿児島県出身 武蔵野美術大学デザイン科で学び、劇団四季入団。1981年、『オンディーヌ』で初主演。1983年、劇団四季を退団。1984年、NHK連続テレビ小説『ロマンス』の主演でテレビデビュー。映画『天と地と』(1990年)、テレビドラマ『浅見光彦シリーズ』(フジテレビ)、プロデュース・主演映画『半次郎』(2010年)、舞台などで活躍。水彩画の作品数は1000点にもなり個展も開催する

 

【さつまおごじょ】
住所/東京都渋谷区西原3-7-5 渡部ビル1F
営業時間/火曜~金曜18:00~23:00(L.O.22:00)、土曜、日曜、祝日17:00~23:00(L.O.22:00)
定休日/月曜

 

写真・福田ヨシツグ

( 週刊FLASH 2022年11月29日・12月6日合併号 )

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