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川口春奈『silent』は展開の遅さこそが魅力…嫉妬まみれの “当て馬” の心情も丁寧に描くやさしいドラマ

エンタメ・アイドル 投稿日:2022.12.01 11:00FLASH編集部

川口春奈『silent』は展開の遅さこそが魅力…嫉妬まみれの “当て馬” の心情も丁寧に描くやさしいドラマ

 

 たぶん、『silent』(フジテレビ系)は、ここまで7話分のストーリーをテンポよく進めれば、2時間ドラマに収まると思う。劇中で起こっている出来事はそれほど多くないからだ。

 

 視聴率は低調ながら「泣ける」と話題を集め、TVerの見逃し配信再生数の歴代記録を更新した『silent』。

 

 主人公・青羽紬(川口春奈)と佐倉想(Snow Man・目黒蓮)は高校時代に恋人同士だったが、想は高校卒業後に耳の病気が発覚し、それを隠したまま別れを告げていた。破局から8年後、聴覚障害者になっていた元恋人と再会する純愛ドラマである。

 

 

 前々回の第6話と前回の第7話は、想に片想いする聴覚障害者の桃野奈々(夏帆)がフィーチャーされ、彼女が想のことをあきらめて身を引くまでが描かれていた。

 

 ちなみに第4話と第5話は、紬と想の高校時代の同級生で、紬と3年前から付き合っていた戸川湊斗(鈴鹿央士)にフィーチャーされた回だった。

 

 第5話で湊斗と紬は別れ、第7話で奈々が想から身を引いたため、いわゆる恋愛ドラマにおける “当て馬” のエピソードに、一応の決着がついたと考えていいだろう。

 

■7話ぶんの物語は2時間ドラマで収まってしまう?

 

 湊斗の場合、別れを告げたのは彼のほうからだったが、紬のことを嫌いになったわけではなく、紬と想のために潔く自ら退陣した形だった。

 

 一方、第6話の奈々は、想のことを好きなあまり黒い気持ちが噴出していた。

 

 想には手話で「昔の恋人と 昔の親友 想くんと再会したせいで別れちゃったんだ 可哀想だね」と嫌味発言。想に手話を教えたのは奈々だったのだが、今は紬に想が手話を教えていると知り、紬に向かって「プレゼント使いまわされた気持ち」と鋭利な言葉をぶつける。

 

 抑えきれない嫉妬心から愛憎の念が入り混じる奈々の言動には、きれいごとではないリアルさがあった。こういった場面だけ切り取って伝えると、奈々がめちゃくちゃ性格の悪い女と思われてしまうかもしないが、逆に彼女の純粋な気持ちが痛いほど伝わって来て、胸が締めつけられるのである。

 

 いずれにしても『silent』という作品は、当て馬にもやさしい。話をぱっぱと進めるため、当て馬がらみのシーンを短くして心情を雑に描く恋愛ドラマは多いのだが、本作は本当に丁寧に丁寧に当て馬たちの心の機微を描く。

 

 たとえば第6話は、冒頭から約15分間を使って、奈々と想の出会いのエピソードが描かれた。これは実に第6話の3分の1にあたる長尺だ。

 

 第7話では終盤の約8分間を使い、奈々と想が思い出の図書館でばったり出会い、奈々の心に溜まっていた澱(おり)が消え去るまでを描く。2人とも手話で会話をするため、静かな美しいシーンとなっていた。

 

 このように『silent』は、きちんと当て馬たちもやさしく救っていくので、展開がとてもスローリーなのである。

 

 前回の第7話までに起こった出来事をざっくりまとめると、紬と想が再会し、湊斗が身を引き、奈々が身を引いただけ。だからテンポ重視の作品ならこの7話分のストーリーは、2時間ドラマで収まってしまうだろう。

 

 だが、言わずもがな、それでは『silent』のよさが損なわれるのだ。

 

■母親が絡む展開に…これはハッピーエンド確定か

 

 さて、今夜放送の第8話からは、紬と想、それぞれの母親がからんでくるエピソードになる模様。

 

 第8話で、紬は聴覚障害を持つ想と交際していることを自分の母に伝えるシーンがあるようだが、どちらかというと想の母(篠原涼子)の問題のほうが今後大きくなりそう。想の母は障害者となった息子が傷つかないようにと過敏になっており、健常者との付き合いを快く思っていないフシがたびたび描かれていたからだ。

 

 とは言え、無粋な予想で申し訳ないが、この両家の母がからんでくる展開は、最終話がハッピーエンドになるフラグに思えてならない。

 

 恋愛ドラマで親が出てきて交際を反対するパターンは少なくないが、たいていは紆余曲折を経て親にも交際を許されるもの。そして、親公認のカップルになった後に、その恋人たちが別れるというバッドエンドはほぼない。

 

 わざわざ親キャラを出してきて付き合いを認めさせたのに、そこから破局してしまうとなると、視聴者の共感が得られにくいからだろう。

 

 正直、シリアスな純愛ドラマだから、最終話で紬と想が別れを迎えるという悲しい終幕もありえるかもと思っていたが、両家の母親ががっつりからんでくるようなら、無事にハッピーエンドになりそうでホッとした。

 

 ――『silent』の第1話から第7話の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は6.4%、6.9%、7.1%、5.2%、7.9%、7.9%、7.7%と推移。視聴率的には低調だが、本作はTVerで236.3万人(11月29日現在、以下同)と驚異的なお気に入り登録者数を叩き出すなど、快進撃を続けている。

 

 余談だが、日曜劇場『アトムの童』(TBS系)のTVerお気に入り登録者数は67.5万人なので、『silent』はその3倍以上の支持を集めている。今夜放送の第8話も、リアルタイム視聴組とTVer視聴組を楽しませてくれるだろう。

 

●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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