妻夫木聡『Get Ready!』満を持して描かれた「エピソード0」が深みゼロ…もっと重厚さを！

 

　中盤回で満を持して描かれた「エピソード0」は、深みがない “お涙ちょうだい” 話だった。

 

　先週日曜に第5話が放送された妻夫木聡主演の日曜劇場『Get Ready!』（TBS系）。法外な報酬と引き換えに、超人的なオペ技術で患者の命を救う謎の闇医者チームを描く1話完結型のSF医療エンタテインメントだ。

 

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　妻夫木が孤高の天才執刀医・エースを演じ、藤原竜也がその相棒で、チームの交渉人・ジョーカーを演じている。また、松下奈緒演じる凄腕オペナース・クイーンと、日向亘演じる若き万能ハッカー・スペードもおり、この4人で闇医者チームを組んでいる。

 

■“出会い” のエピソードは第1話ですでに語られていた

 

　第5話では、エースとジョーカーの出会いのエピソードも描かれた。

 

　基本的に大金持ちの患者に絞って治療をしている闇医者チームだが、今回、エースが命を救いたいとしてあげた患者は一般家庭の男性。その男性が患っていた病気は急性壊死性膵炎で、実はジョーカーも4年前に同じ病で余命1カ月と宣告されていたのだ。

 

　第5話は現在の時間軸と4年前の時間軸が交差しながら進み、現在の患者の手術が成功しつつ、過去のジョーカーを手術で救うまでも描かれた。ジョーカーは命の恩人であるエースの神業に心酔し、最新機器をそろえたオペ室を兼ねた秘密基地を用意して口説き落とし、チームが結成された――という第1話以前の前日譚が描かれた。

 

　……このように妻夫木と藤原が演じるツートップの出会いやチーム結成のきっかけという、いわば「エピソード0」が描かれたのだが、どうにも重厚さがない。特に驚きのない予定調和的な話だった。

 

　というのも、エースとの出会いについては、すでにジョーカーの口から語られていたからだ。第1話でジョーカーがクイーンに「たまたま出会ったバーで病気を言い当てられ命を救ってもらった」ということを語っており、第5話はそれを回想シーンで再現した形。

 

　もちろん第1話ではざっくりと語られただけなので、熱心なファンは出会いのシーンに歓喜したかもしれない。だが、よくも悪くも本当に第1話でジョーカーが語っていた話に肉付けしただけで、意外性は皆無。

 

■主人公が医者として復帰する動機づけがいまいち弱い

 

　なにやらワケありで医療業界から去っていたエースが、ジョーカーの手術をきっかけに闇医者として復帰するわけだが、動機づけとしては、どうにも弱い。

 

　確かに、ジョーカーは若くして余命宣告されており、同情に値する存在だったが、そんなことを言ったら、同じように悲劇的状況の患者は世の中にごまんといるはず。

 

　しかも、ジョーカーには妻子がいるのだが、妻とは冷めきったサバサバ夫婦で、「絶対に守りたい家族がいる！」みたいな設定でもない。

 

　話の整合性は取れているのだが、闇を抱えていそうな主人公が医者としてリブートする重要シーンにしては、いまいち深みがないのである。

 

　ちなみに本作は、中二病的な設定が随所に盛り込まれている。

 

　闇医者チームの面々はネオンの光が輝くマスクを着用して黒ずくめのコートで現れるし、秘密基地にあるオペ室も同じようにネオンがあしらわれサイバーパンクな世界観。

 

　そういったけっこうな制作費を注ぎ込んだであろう凝ったセットで、仮面ライダーやスーパー戦隊のようなヒーローもの要素をビジュアルで表現している。

 

　それが悪いとは言わない。……悪いとは言わないが、それならば陳腐なストーリーではなく重厚さがないといけないと思うのだ。

 

　――本作の世帯平均視聴率（※ビデオリサーチ調べ／関東地区）は第1話から第5話まで10.2％、10.9％、10.3％、9.6％、9.6％と推移。第4話以降は一桁台に陥落しているが、このご時世で考えると立派な数字だ。

 

　エースが表の世界から去った過去はまだ謎に包まれているため、今夜放送の第6話以降で、主人公の深みのある過去エピソードが描かれることに期待したい。

( SmartFLASH )