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高知東生 ヤクザの父、自死した母…重松清氏も絶賛した自伝的初小説にこめた思い「やっと成人式を迎えられた気持ち」

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.02.18 06:00FLASH編集部

高知東生 ヤクザの父、自死した母…重松清氏も絶賛した自伝的初小説にこめた思い「やっと成人式を迎えられた気持ち」

高知東生

 

「本当に自分で書いたのか? ハハハ、読んでいただいた方、ほぼ全員からそう言われるんです。でも、本当に自分で書きました(笑)。何度も書き直しはありましたが」

 

 そう語るのは、今年1月25日に初の小説となる『土竜(もぐら)』(小社刊)を上梓した高知東生(58)。自らの分身「竜二」の出生の秘密、ヤクザの父、自死した母、薬物による逮捕までを、物語として描いた自伝的小説集だ。

 

 

 余芸の域を超えた物語性と筆力に早くも重版となり、直木賞作家の重松清氏も「『作家』の、始まりの一冊」だと太鼓判を押している。

 

 もっとも、高知が執筆を引き受けるまでは、さまざまな葛藤があったという。

 

「僕は本をまともに読んだことがなく、漢字は知らないし、小説のイロハもまったくわからない。当初はお断わりしたんです。薬物事件の後、臆病になっていた自分がいて、もう一度、どうやって一歩を踏み出せばいいかわからなかった。もし書いて『やっぱりダメだった』と思われたら、やり場のない気持ちをどこに持っていけばいいのかと」

 

 そんなとき、勇気をもらったのが、同じ依存症で苦しんでいる仲間だった。

 

「一緒に依存症から回復を目指す仲間が『あんたね、世の中に小説を書きたい人が、どれだけいると思ってるの! やるだけやってみようよ』と、背中をバ~ンと押してくれたんです。それで吹っ切れることができました」

 

 小説は6つの物語からなる。第一編は、侠客として生きる竜二の実父・高林と、故郷を飛び出した母・妙子との出会いを綴った「アロエの葉」だ。

 

 神戸のクラブでNo.1になった妙子は、戦争未亡人としてがむしゃらに働く母「あて」についてこう語る。

 

《「お母ちゃんはね、アロエの葉のような人でよぉ。見かけはちっとも綺麗やない。けんど食べても身体にええし、怪我した時は薬にもなる。しかも手をかけんで放っちょいてもすくすく育つ。それに引き換えうちはねぇ、さしずめ牡丹の花やね。みんなが『綺麗や、綺麗や』ゆうて大事にしてくれる。けんど花はいつかは枯れる。その時は見向きもしてくれん。アロエはどんと根を張って重宝される。大事にされんようで、ホンマに大事にされるのはアロエの方やと思う」

 

 高林は、こんなに自信なさげな妙子を初めて見た。》

 

 妙子は竜二をあてに預けて再び姿をくらませ、別の親分・井川の愛人になった。竜二は井川を実の父だと信じて育つが、母の自死をきっかけに、密かに真実を知った。

 

「子育てもろくにしなかったお袋でしたが、そのルーツを真剣に辿っていくと『ああ、俺はお袋に愛されていたんだな』って、それがわかった瞬間がありました。そのとき、まずはお袋への感謝が、そして “きっとお袋はこんな人生を歩んできたんだろうな” という映像が浮かんできたんです。自然に涙が溢れてきて、泣きながら書きました」

 

 真実を知ったショックと、街では変わらず “井川の息子” として喧嘩をふっかけられる毎日。孤独と不安に耐えられず、竜二は19歳で逃げるように故郷を飛び出した。

 

■芸能界の関係者は姿を消したがーー

 

 竜二は東京で役者としての地位を築き、有名女優と結婚。だが2016年、覚醒剤と大麻所持の容疑で逮捕された。芸能界の関係者は、あっという間に姿を消した。

 

「上京するとき、地元の仲間たちは『お前は俺らの分まで夢引っさげて、暴れてこい!』と送り出してくれた。僕は、その仲間も裏切ったわけです。でも彼らは、僕がどんな状況に置かれていても、変わらずそばにいてくれる。『一人じゃない』と思い出させてくれる、この場所と仲間は宝なんです」

 

『土竜』はいったん完結したが、竜二、いや高知の人生はこれからも続いていく。

 

「もう還暦近いですけど、僕の中ではやっと成人式を迎えられたような気持ちです(笑)。自分がどのように生き直していくかが、償いだと思っています。今後も依存症に苦しむ人へ啓発活動を続けていきます。それと、ありがたいことに先日、映画出演のオファーが来てね。地方でオールロケで撮るんですよ。いま最善を尽くして積み重ねていくことで、未来が見えてくるのかな、と思っています」

 

 過ちを犯し、人を傷つけ、自らも傷ついてきた。

 

「すべてをさらけ出せる、今がいちばん幸せです」

 

 次の物語が生まれるのは、それほど先のことではなさそうだ。

 

たかちのぼる
1964年生まれ 高知県出身 1993年に芸能界デビューし、大河ドラマ『元禄繚乱』(NHK)、映画『新仁義なき戦い/謀殺』などで活躍。2016年、覚醒剤と大麻の所持容疑で逮捕。現在は依存症の啓発活動にも力を入れる

 

写真・久保貴弘

( 週刊FLASH 2023年2月28日号 )

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