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広瀬すず『夕暮れに、手をつなぐ』センス高めキャラの大渋滞でお腹いっぱいの胸焼けに

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.02.21 11:00FLASH編集部

広瀬すず『夕暮れに、手をつなぐ』センス高めキャラの大渋滞でお腹いっぱいの胸焼けに

 

 センスの高そうなキャラが渋滞しててしゃらくさい……申し訳ないが、これが広瀬すず主演夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)に対しての、筆者の率直な感想である。

 

『愛していると言ってくれ』(1995年/TBS系)、『ロングバケーション』(1996年/フジテレビ系)を手がけたラブストーリーの名手・北川悦吏子氏が脚本を務める話題作。広瀬がヒロインを演じ、相手役をKing & Prince・永瀬廉が担う青春ラブストーリーだ。

 

 

 九州の片田舎で育った浅葱空豆(広瀬)は、幼馴染みで婚約もしていた恋人を追って上京するも、彼氏は他に女を作っており、あっさりフラれてしまう。空豆が失恋する前後に運命的な出会いを果たしたのが、音楽家を目指す海野音(永瀬)だ。

 

 ときに反発し合うが、相性がいい部分もある23歳の2人は、偶然にも同じ下宿先に住むことになり、ほのかな恋愛感情を隠しながら惹かれ合っていき――という展開で、先週火曜までに第5話まで放送されている。

 

■深いお考えがあるように見える人ばかり登場

 

 この作品の雰囲気や登場人物たちが好きだという視聴者がたくさんいるのもわかるが、個人的な感想としては、どうにもしゃらくさい。本作には “センス系” のキャラがたくさん登場しているからだ。

 

 センス系のキャラとは、ある分野の才能が突出していて一般人とは違う感性を持っていたり、オシャレな業界でこだわりを持った仕事をしたり、独創的なワードで物事を表現したり、というタイプの登場人物。

 

 主人公の空豆は、田舎にいた頃はファッションに無頓着だったのに、上京してから急に天性のセンスが覚醒して、ファッションデザイナーの道を歩むようになる。

 

 相手役の音は、PCで楽曲制作するコンポーザーで、序盤回では鳴かず飛ばずだったものの、地道な努力で才能が認められ、大手レコード会社からメジャーデビュー間近。

 

 メインの2人がファッション業界、音楽業界という多くの人が憧れるキラキラした世界で成功を目指していくため、おのずと周囲のキャラクターもセンス系が大集合。

 

 下宿先の主である初老の女性(夏木マリ)は油絵を得意とする芸術家なのだが、世の真理を悟っていて、すべてお見通しといった感じの達観した言動が多い。

 

 その息子は母親譲りの世界観を持った海外在住の起業家で、帰国した際はマイペースな振る舞いと独特な語彙力で、やはり変わった空気感をまとっている。

 

 高級有名ブランドの代表にして、空豆の感性を見抜いて採用してくれたデザイナー(遠藤憲一)は、ファッションに妥協しない頑固な職人気質で、粗暴な変わり者。

 

 そのブランドの優秀なパタンナーであるもじゃもじゃパーマのイケメンは、直観的に空豆の才能に惚れ込んで、夜の表参道に連れ出すといった粋なプチデートをする。

 

 また、音の先輩格で紅白歌合戦にも出場している売れっ子の仮面ミュージシャンは、音楽業界のランキング至上主義に苦悩して逃走するといった奇行がコメディタッチで描かれる。

 

 このように、本作にはセンス系のキャラが大渋滞。独創的なセリフが飛び交い、深いお考えがあるように見える登場人物ばかりなのだ。

 

■ちょい役の先輩女性に感情移入したワケ

 

 1作品に1人か2人ぐらいであれば作品の絶妙なスパイスになるだろうが、こうもセンス系ばかりが登場すると、お腹いっぱいで胸焼けしてしまう。

 

 そして、実在のブランドやミュージシャンなど固有名詞を織り交ぜたセリフが、センス系キャラたちの会話劇のなかで飛び交う。これは北川悦吏子節とも言えるので、ファンであればそういうウィットに富んだ会話の応酬にうっとりするのかもしれない。

 

 しかし、そんな北川ワールドが苦手な層からすると、“センスの押し売り” にあったような気分になる。

 

 筆者は、北川氏から「このブランドやこのミュージシャン、当然わかるよね?」とか、「このセリフで笑える人はいいアンテナ張ってるよ」なんて具合に試されている感覚に陥ってしまった。被害妄想であることは百も承知だが、“センスのマウント” を取られているようでモヤッとしてしまった。

 

 余談だが、高級ブランドメンバーにちょい役の先輩女性スタッフがいるのだが、いきなり入って来た空豆にイライラしている様子。けれどその気持ち、めちゃくちゃわかるのだ。

 

 ついこの間まで服に興味もなかったようなダサい田舎娘が、下宿先の芸術家とブランド代表が旧知の仲だったというコネでメンバー入りし、代表やパタンナーのお眼鏡にかなう。絵に描いたようなご都合主義のとんとん拍子である。

 

 成功を夢見て憧れの業界に入った努力型の凡人からしたら、そんな天然系天才(しかも美女)が急に現れたらたまったもんじゃないだろう。

 

 特に空豆は、ろくに苦労も勉強もせずにヌルッとファッション業界に入って、ガムシャラに振る舞っているだけで気に入られてしまう。無邪気で悪気はないが、悪気がないからOKというわけではあるまい。

 

 この先輩女性スタッフは、公式サイトの人物相関図にも載らないような脇役なのだが、なんだか感情移入してしまった。筆者も含め、世の大半は凡人なわけだから、先輩女性スタッフ目線になって、ぽっと出の空豆にイラッとした視聴者は案外多いかもしれない。

 

――本作の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は、第1話から第5話まで8.0%、6.6%、5.9%、6.2%、6.3%。この低調な推移は主人公に感情移入できなかった層の多さを表しているのかもしれない。

 

 今夜放送の第6話は、空豆に感情移入できるようなシーンが多いことに期待したいが……。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

( SmartFLASH )

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