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坂本冬美の『モゴモゴ交友録』吉幾三さんーー独り身のわたしを心配して(?)酔っぱらっての “安否確認” テレフォン
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.03.04 06:00 最終更新日:2023.03.04 06:00
夜も更けてきたし、そろそろベッドに入ろうかな。睡眠不足は喉に悪いし、お肌にもよくないし。健康を保つ秘訣は快眠、快食、そして快○ですからね(笑)。
ーーさぁ、寝よ、寝よ。
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そんなときに限って、酔って電話をしてくる不動の四番バッターが、師匠・猪俣公章先生でした。
「冬美、寝てたか?」
眠っていたら、ワンコールで電話には出ないでしょうが。そんな言葉が喉まで出かかりますが、相手は師匠で、しかも酔っぱらいです(笑)。
この後、電話を代わったお店のおねぇさんに「ただの酔っぱらいに見えますが、本当はすごい先生なんですよ」ということを、わたしが懇切丁寧にお話しして、最後は先生の「じゃ、またな!」という言葉で終わるという、毎回同じパターンの繰り返しです。
猪俣先生がお亡くなりになった後、定番化していたこのやり取りを引き継いでくださったのが、岡千秋先生です。
岡先生、いつも坂本冬美を気にかけてくださり、ありがとうございます。
そして、コロナ禍になってもう一人、この「酔っぱらってミッドナイト・テレフォンの会」(もちろん、そんな会はありませんけど)に、参加してくださったのが『俺(お)ら東京さ行ぐだ』の吉幾三先輩です。
「元気か?」
「はい、元気です」
「真奈美(これ、藤あや子ちゃんの本名です)は、ちゃんと結婚して旦那がいるからいいけど、お前はーー」
吉先輩は、決まってここで一度言葉を切ると、力をこめてこう続けます。
「独り(……)だからな」
もぅ、です。確かに、今は独りですけど、わたしだって過去に結婚を考えた男性の一人や二人……10人はちょっと言いすぎだけど、いたことはいたんですからね。
でも吉先輩は、そんな言い訳をする暇さえくれず、
「念のため、安否確認だ」
と叫ぶと、ガハハハと笑いながら、一方的に電話をお切りになってしまいます。
本気でわたしのことを心配してくださっているのか!? それとも、半分ジョークなのか?
電話から伝わってくるその気配は、完全に酔っぱらいのそれですから判然としませんが、わたしを思い出してくださっただけで嬉しいし、ほっこりとしてしまいます。
世の中には、そこにいるだけでまわりを緊張させる人、嫌な感じを与えてしまう人……いろんな方がいらっしゃいますが、吉先輩は、ただそこにいらっしゃるだけで、まわりを明るく、楽しくしてくださる先輩です。
しかも、です。吉先輩がすごいのは、先輩にも後輩にも分け隔てなく気を配ってくださるんですけど、気を使っているというのを微塵も感じさせないところです。
ーーえっ!? ただのおもしろいおじさんだと思っていた?
とんでもない。いつもさりげなく、同じお顔で、現場を明るく、楽しく盛り上げてくださる吉先輩は、おもしろいだけじゃなく、とっても温かくて懐ろが深く、同時に、涙もろくて、情に厚い先輩です。
吉先輩! 毎年、美味しいリンゴと、ご自慢のリンゴジュースを送ってくださり、ありがとうございます。
お礼のメールをしても、いっこうに返信が来ない……なんて、瑣末(さまつ)なことは気にしないでください。
そして、これからも時々は、酔った勢いで思い出したら、安否確認の電話をかけてきてくださいね。
先輩がおっしゃるように、わたしは、あやちゃんと違って、独り身なので(笑)。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』(小社刊)が発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋