4月6日、「ムツゴロウさん」の愛称で親しまれた畑正憲さんが、87歳で亡くなった。北海道の自宅で倒れ、搬送先の病院で死去したという。6年前に心筋梗塞で倒れ、それ以来、闘病を続けるなかでの出来事だった。
ムツゴロウさんは、東京大学理学部で動物学を学んだ後、サラリーマン生活を経て作家デビュー。動物と触れ合うエッセーで人気を博した。よく知られるのは、1980年に放送が始まった『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』(フジテレビ系)だ。
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「1972年、ムツゴロウさんは北海道厚岸郡浜中町に、約450万㎡の『ムツゴロウ動物王国』を開園しました。動物と触れ合うための施設ですが、動物園と違って、原則として非公開。
ムツゴロウさんのエッセーを読んで共感した若者がやってきて、共同生活を送る施設になりました。『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』はそんな姿を収めた “動物番組” の元祖です」(芸能記者)
その後、「ムツゴロウ動物王国」は関東への進出を目指すが、地元住民の反対にあい、たびたび頓挫してきた。最初に狙ったのは、千葉県流山市だった。江戸川堤防沿いに広がる約300haのうち、約39haを利用して「東京ムツゴロウ動物王国」を開く予定だった。
本誌は、2003年、当時の住民たちの複雑な思いを取材している。借地契約を結ぶ予定だった地権者はおよそ300人。そのうちの1人は、
「空気のいいところなのに、臭いに汚染されたり、(糞などで)蠅がたかったりしたらね。それに長いこと続かないでしょう。『潰れたから土地を返します』と言われても、すぐに田んぼに戻すわけにはいかないしね」
と語っていた。予定地には移転に反対する看板が4カ所も立てられ、結局、地権者の反対が多かったことで計画は頓挫した。
「さらに翌年、2004年4月には、東京サマーランド内にオープンすることを発表しました。しかし、ここでも東京サマーランドが位置するあきるの市で反対運動がおこったのです」(前出・芸能記者)
当時、あきる野市の市民団体「あきる野市政を考えるみんなの会」の事務局長は、本誌の取材に対し、同王国の従業員を募集するチラシが入っていたとして、「(寄生虫の)エキノコックスの安全が十分確認されていない段階で、こんなチラシを出すなんて問題です」と猛反対。
結局、2004年7月28日に開園し、北海道からほとんどの動物がやってきたが、集客に悩み、2年後に運営会社が破綻。2007年に閉園し、「むつごろう王国」は北海道に再び戻った。
「東京進出に失敗し、運営会社の負債総額は9億円にのぼりました。また、ムツゴロウさん個人としても3億円の借金を抱えることになりました。しかし、その後、8年かけてコツコツ返済したそうです」(同)
晩年も、北海道での動物との暮らしをYouTubeで発信するなど、精力的に活動していたムツゴロウさん。動物の魅力を多くの世代に伝えてきたその功績は、あまりに大きい。
( SmartFLASH )