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天海祐希『合理的にあり得ない』おもしろそうな雰囲気が漂いまくるのに…タネ明かしがいまいちでモヤモヤ

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.04.24 11:00 最終更新日:2023.04.24 11:00

天海祐希『合理的にあり得ない』おもしろそうな雰囲気が漂いまくるのに…タネ明かしがいまいちでモヤモヤ

 

 先週月曜にスタートした天海祐希主演の『合理的にあり得ない ~探偵・上水流涼子の解明~』(フジテレビ系)。

 

 好意的に解釈すれば、憂鬱な月曜に、深く考えずにお気楽に観られるエンタメ作品といった感じ。つまらなくはないし、終始おもしろそうな雰囲気を漂わせている。

 

 ……だが、率直に評するなら、“おもしろいふう” なだけで、「おもしろい!」と太鼓判は押せない普通のドラマだった。

 

 

■視聴者を楽しませたいという気概は伝わるが…

 

 本作は、元弁護士でワケありの探偵・上水流涼子(天海)と、変わり者ながらIQ140の天才・貴山伸彦(松下洸平)がバディを組み、“あり得ない手段” でさまざまな依頼や事件を解決していくストーリー。

 

 先週の第1話は、悪徳不動産ブローカーとの対決だった。2000万円を騙し取られた依頼者のお金を取り返すため、ブローカーの不倫写真で脅そうとしたり、ブローカーの妻を取り込もうとしたりと、涼子と貴山があの手この手を仕掛けていく。

 

 涼子がゴルフのキャディやマッサージ師、はたまたヨガトレーナーなどに変装して作戦を遂行していく様子が、コメディタッチで描かれた。

 

 涼子と貴山の軽妙な掛け合いや、変装シーンでバレそうになるドタバタなどで、視聴者をクスッとさせたいという狙いはわかる。だが、全体的に上すべりしており、脚本や演出の力不足が否めない。

 

 視聴者を楽しませたいという気概は伝わってきて、おもしろそうな雰囲気は常に漂っているのだが、いまいち笑えないシーンの連続だった。

 

 お笑い芸人の漫才やコントでも同じようなことがたまに起こる。大爆笑を巻き起こしそうな空気感を醸成しておきながら、肝心のところで笑いの爆発力がなく、消化不良のままネタが終わる感じ。

 

 もちろんおもしろいと思うツボは人それぞれなので、この第1話で思い切り笑えたという人もいるだろうが、少なくても筆者は「おもしろい!」とは思えなかった。

 

■タネ明かしがいまいち納得できずモヤモヤ…

 

 コミカルなパート以外にも、本作にはちょっとしたミステリー要素もあるのだが、期待値を下回る不発なシーンがたびたびあった。

 

 一例をあげると、ブローカーの息子が引きこもりになっていて、母(ブローカーの妻)の手料理をいっさい食べなかったのだが、涼子が渡したお皿にカレーを盛ったところ、息子はきれいにたいらげ、おかわりもした。

 

 これまで、母がどんな料理を作っても、息子はまったく口をつけなかったのだが、涼子のお皿に載せたカレーには食いついたわけだ。

 

 終盤で、その皿自体はただの皿で、タネはカレーにあったことが明かされた。母は渡されたレシピどおりにカレーを作ったのだが、それは息子が楽しかった中学時代に食べた食堂の味を再現したものだった。

 

 この皿(カレー)がストーリーの重要なキーポイントになっていたため、どんな驚きのタネ明かしやどんでん返しがあるのかとワクワクして観ていたのだが、「え? その程度のことで食べられたの?」と思ってしまったのである。

 

 カレーを食べるかどうかはかなり不確定要素が大きいのに、成功することが前提の作戦になっていて、実際、成功するのはご都合主義すぎやしないか。

 

 そもそも息子が引きこもりになったのは、悪徳な父親が起こしたスキャンダルが原因で、愛情を注いでいた母親との確執はなかったようで、手料理を食べなかった理由づけが弱い。また、母親は息子のためにさまざまな料理を試していたので、母の愛が他人の味(食堂のカレー)に負けてしまったようにも受け取れた。

 

 想定外の真相でスッキリ納得させてもらいたかったが、想定外は想定外でも、全然スッキリせずにモヤモヤしてしまったのだ。

 

■綿密に作り込まれた秀逸な物語は期待できない

 

 悪人からお金を騙し取ろうとする展開をコメディタッチで描いていたため、詐欺師の活躍を描く痛快エンタメだった長澤まさみ主演『コンフィデンスマンJP』(2018年/フジテレビ系)を想起していた。

 

 しかし、『コンフィデンスマンJP』は巧妙かつ良質なタネ明かしが用意されていたので、忌憚なく言わせてもらうなら、『合理的にあり得ない』はその下位互換という印象が拭えなかった。

 

 ――冒頭でお伝えしたとおり、つまらないわけではない。細かいところを抜きにして、深く考えずお気楽に観るエンタメ作品として考えれば、一定の需要はあるはず。

 

 ただ、思わず驚嘆するような、綿密に作り込まれた秀逸なストーリーを期待すると、肩透かしを食うだろう。

 

 第1話の世帯平均視聴率(ビデオリサーチ調べ/関東地区)は9.3%で、TVerのお気に入り登録者数は39.5万人(4月19日現在)とまずまずのスタート。今夜放送の第2話も好調を維持できるか、それとも第1話で視聴者が離れてしまっているか、注目である。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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