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坂本冬美の『モゴモゴ交友録』都はるみさんーースナックで聴かせていただいた『翼の折れたエンジェル』

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.06.17 06:00 最終更新日:2023.06.17 06:00

坂本冬美の『モゴモゴ交友録』都はるみさんーースナックで聴かせていただいた『翼の折れたエンジェル』

都はるみ、坂本冬美

 

 歌いながら前へ前へと突き進み、そのままステージから落っこちてしまったというのは、一度や二度じゃありません。それでも絶対にマイクは離さないーーそれが、『好きになった人』『北の宿から』『アンコ椿は恋の花』……などなど、両手ではとても足りないほどのスーパーヒット曲を持つ、都はるみ先輩です。

 

 ほとばしる情熱。歌の主人公がそのまま乗り移ったような燃える情念。聴く人の心を掴んで離さない豊かな情感……とうてい、私の及ぶところではありません。

 

 

 そのはるみさんから、ゴルフにお誘いいただいたのは、かれこれ15〜16年前のことだったでしょうか。

 

 ゴルフの後、お食事をして「ちょっと飲もうか?」という流れになり、はるみさん行きつけの銀座のBARへ。そこまでは、はっきりと記憶しているんです。

 

 先輩に失礼があっちゃいけないと、わたしなりに精一杯、気を張っていたのも覚えています。

 

 でも、だけど、しかしです。はるみ先輩に「もう一杯、どう?」と言われたら「ええ、もう喜んで」です。

 

 今はもう、めっきりお酒も弱くなりましたが、当時のわたしは、それなりに飲めるほうだろうという自負もあったのですが、2杯飲み、3杯飲み……5杯を超えたあたりからは、もう記憶もおぼろげで。

 

 はっと気がついたのは、銀座から六本木のカラオケスナックに移動するタクシーの中でした。しかもです。あろうことか、はるみ先輩と肩を組んでいて……オーマイガーです。わたしとしたことが、なんてことでしょう。一瞬で酔いもさめ、体が凍りついていました(苦笑)。

 

 はるみさんからいただいた思い出は、タンスの引出しから溢れるほどたくさんありますが、そのなかでも今も色褪せずきらめいているのが、このときカラオケで聴かせていただいた、はるみ節の効いた『翼の折れたエンジェル』と、2014年に「春夏秋冬コンサート」でデュエットさせていただいた『浪花恋しぐれ』です。

 

 はるみさんが男性パートで、わたしが女性パート。一度きりのスペシャルコンサートで実現したコラボレーションは、歌の神様からいただいた最高の贈り物でした。

 

 石川さゆりさんに憧れてこの世界に飛び込んだのがわたしで、そのさゆりさんが憧れていらしたのがはるみさん。1学年上の先輩には話しづらいことも、2個上の先輩になら素直に話せる……わたしとはるみさんの関係は、それに似ているような気がします。

 

 なんでも話してごらんなさい。受け止めてあげるから飛び込んできなさいーー。

 

 はるみさんが後輩を見守る目には、そういう懐ろの深さがありました。

 

 もしかすると、はるみさんご自身は忘れていらっしゃるかもしれませんが、わたしには忘れることのできない言葉があります。

 

「いい!? はるみ、さゆり、冬美……このラインだからね」

 

 おっしゃった言葉の真意がどこにあったのか。お聞きするのも畏れ多く今に至っていますが、あの言葉を思い出すたびに気持ちがざわつき、心がじんわりと熱くなります。

 

 追いつくことなどとうてい無理だと、十二分にわかっていますが、それでも少しでも近づけるように、はるみさんが大切にされていた「音を楽しむ」という言葉を胸に、坂本冬美はこれからも精進してまいります。

 

さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身 『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』(小社刊)が発売中!

 

写真・中村 功
取材&文・工藤 晋

( 週刊FLASH 2023年6月27日号 )

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