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ジブリ新作に『スラダン』新日曜劇場『VIVANT』まで大型作品の「ノー宣伝」戦法が抱えるメリットとデメリット
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.07.18 06:00 最終更新日:2023.07.18 06:00
7月16日、日曜劇場『VIVANT』(TBS系)が放送を開始した。同作は、堺雅人、二階堂ふみ、阿部寛、役所広司ら豪華キャストを迎えながらも、番組内容はまったくの告知なし。モンゴルロケが敢行されたことのみが報じられており、莫大な予算がかけられた期待作ということだけはわかっていた。
だが、肝心の内容は、初回放送日に見るまでわからない、という「ノー宣伝」作戦をとっていたのだ。
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「結果は大成功だったようですよ、初回放送後には、Twitterで『#VIVANT』がトレンド入りを果たしたり、これまで隠されていた二宮和也さんの出演が話題になったりなど、『どういう内容か、観ないとわからない』という戦法が、視聴者の興味を引いたようです」(芸能記者)
このような「ノー宣伝」戦略をとる作品は、昨今、少なくない。直近では、宮﨑駿監督の新作であり、自身の引退作とも表明している『君たちはどう生きるか』も同様だ。さらに、2022年の映画『THE FIRST SLAM DUNK』も、ほとんど内容にはふれずに公開日を迎えた。
「『宣伝をやらない』っていうのは正確ではなく、彼らの意識としては、宣伝費を節約したい気持ちがあるわけですよ」
そう語るのは、ウェブサイト「超映画批評」などで活躍中の映画評論家・前田有一氏だ。なぜ、宣伝をしない大型作品が増えたのだろうか。
「ジブリをはじめ『VIVANT』も、潤沢な制作費はあると思いますが、テレビCMや雑誌の広告、ウェブ出稿には多額な宣伝費がかかります。映画でいえば、一般に制作費と同額程度の宣伝費がかかると言われています。普段のジブリ映画なら、少なくとも数億円以上はかかっているはずです。そうした宣伝費が浮くというのは、彼らにしては非常にありがたいことなのでしょう。こうした手法のメリットは、まず第一に宣伝費の削減が挙げられると思います」
身もふたもない話だが、これだけ「映画離れ」「テレビ離れ」が叫ばれる時代には仕方のないことなのか。しかし前田氏によれば、「ノー宣伝」はメリットもあるという。「より現代に見合った」宣伝法だというのだ。
「映画は、公開してから最初の1週間が勝負で、その興行収入によってロングランとなるか決まるので、初動が非常に大事なんです。この大事な1週間に観客を寄せるというのが、宣伝の最大の目的です。
そして、映画についてはとくに顕著ですが、いまは作品がSNSで話題になる、というのがヒットの必要条件で、“口コミ”が宣伝の主力となっています。インフルエンサーなどが、初日の第1回めに映画を観に行って、少し作品の情報を出せば、動画の再生回生を稼げます。そういったインフルエンサーが、勝手に宣伝してくれるのは大きいんですよ。
とくに若い世代は、SNSで作品を『批判する』のではなく『褒める』文化ですから、このやり方はかなり効果的だと感じます」
一方、当然、デメリットも存在する。作り手にとって「ノー宣伝」戦法は、ある種の賭けでもあるという。
「マスコミやSNSで、制作側の想定ほど話題にならなければ、“大爆死”の結果が待っていますからね。現状『THE FIRST SLAM DUNK』の成功例がありますが、公開中のジブリの新作や『VIVANT』がどうなるかによって、今後さらに『ノー宣伝』が広まるか、なくなるかが分かれるところでしょう」(前田氏)
本記事の時点で、『君たちはどう生きるか』は公開5日め、『VIVANT』は第1回が放送されたのみ。詳細な興行成績や視聴率については、まだ情報が出ていない。制作陣の賭けが吉と出るか凶と出るかに、映画・ドラマ業界が注目している。
( SmartFLASH )