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坂本冬美の『モゴモゴ交友録』橋田壽賀子さんーー “義姉妹” 石井ふく子先生と時に大喧嘩をしながら作った名作の数々

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.08.05 06:00FLASH編集部

坂本冬美の『モゴモゴ交友録』橋田壽賀子さんーー “義姉妹” 石井ふく子先生と時に大喧嘩をしながら作った名作の数々

橋田壽賀子さん(右)と石井ふく子さん(左)

 

 女性同士の友情がどんどん深化していくと、やがて家族や姉妹のような関係に昇華していくーー。

 

 そんな素敵な関係を築けるんだということを教えてくださったのが、急性リンパ腫のため95歳でお亡くなりになった脚本家の橋田壽賀子先生と、96歳になった今も驚くほどお元気なプロデューサーの石井ふく子先生です。

 

坂本冬美芸能生活35周年記念」と銘打った2021年の明治座の公演で、そのお2人、橋田先生の脚本、石井先生の演出で演じさせていただいた『かたき同志』は、わたしにとって大切な、大切な思い出です。

 

 

 橋田先生にお会いしたのは、たった一度だけ。電話では何度かお話しさせていただき、地元・和歌山の梅干しをお送りした際には、思わず「す、すごい!」と、唸り声をあげてしまうような墨痕(ぼっこん)鮮やかなお礼状をいただきましたが、お目にかかってご挨拶できたのは一度だけ。でも、今となってはそれが私の宝物となっております。

 

 いいものはいい、間違っていることは間違っている。物事をハッキリとおっしゃるところが石井先生の魅力のひとつですが、橋田先生も同じで、いつだってど真ん中のストレートを、力いっぱいズバッと投げ込むようなタイプの方だったようです。

 

 そんなお2人が、まるで義姉妹のような素敵な関係を築けたのは、脚本家とプロデューサーというお仕事に由来するのかもしれません。

 

 時代の変化や社会問題を鋭く抉(えぐ)りながら、家族の機微を紡いでこられた橋田先生と、どちらかというと受け身の立場にあるプロデューサーの石井先生。

 

 お互いに言いたいことを言い合い、時には大喧嘩をしながら作り上げてきた作品は、すべて名作と呼ばれるものばかりです。

 

 石井先生からお伺いした橋田先生とのお話は、どれもこれもすごいエピソードばかりですが、なかでも印象に残っているお話があります。

 

 あの名作『渡る世間は鬼ばかり』の台本があがり、橋田先生から「出来たわよ」という連絡が入ると、毎回、必ず石井先生が熱海までその手書きの原稿を受け取りに行き、修正すべき点はその場ですぐ直しを入れて、完成稿として収録スタジオに持っていったというお話です。

 

 パソコンで文字を打ち、メールで送るのとはわけが違います。直接、顔を合わせ、侃々諤々(かんかんがくがく)を繰り返し、時には、

 

「まったくもう……わがままなんだから」

 

「あら、あなただって、相当にわがままよ」

 

 睨み合ったまま、プッと吹き出し、また、同じところに向かって走り出すーー。

 

 こんな言葉で合っているのかどうかわたしにもわかりませんが、きっとお2人は地面から飛び出したところでは喧嘩をしても、地中深くにある根っこの部分で繋がっていたんじゃないかと思います。

 

 途中の段階で何があっても、最終的には絶対的に信じている。お互いの心が響き合っている。我ら生まれた日は違えども、死す時は同じ日同じ時を願わんーー。

 

 言葉にしなくとも、心の中では、そんな義姉妹の誓いを立てていらっしゃったんじゃないかと思います。

 

 橋田先生と石井先生とは、器の大きさも度量の広さも、まるで比べものにはなりませんが、言いたいことを言い合うというところだけは、あやちゃん(藤あや子)とわたしも同じです。

 

 でもそれ以外は……モゴモゴモゴ。書いているのが悲しくなるので、ここらへんでやめておきます(苦笑)。

 

さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』(小社刊)が発売中!

 

写真・中村 功、共同通信
取材&文・工藤 晋

( 週刊FLASH 2023年8月15日号 )

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