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坂本冬美の『モゴモゴ交友録』島倉千代子さんーー公演後、ダメ出しを連発された楽屋でのご指導
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.08.12 06:00 最終更新日:2023.08.12 06:52
自宅のレッスン部屋には忌野清志郎さんの写真が、寝室の棚には、遠い空の彼方からいつもわたしを見守ってくださっている方たちの写真が並んでいます。両親、恩師・猪俣公章先生、本田美奈子.ちゃん……、にっこりと微笑んでいる島倉千代子さんも、そのなかのお一人です。
美空ひばりさんと肩を並べるほど偉大な存在だった島倉さんには、仕事でもプライベートでも、本当にかわいがっていただきました。
デビュー5年め、大阪の新歌舞伎座で初めて座長公演をすることになったときは、一緒に台本を読みながら “ここはこう” “この場面はこうね” と、場面ごとに細かくアドバイスしていただき、幕が開くと、わざわざ大阪まで足を運んでくださいました。
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公演後「ダメ出しね」という言葉で始まった楽屋でのご指導は、その後のわたしのよりどころになりました。
「ドタバタドタバタ、足音を立てて出てくる人がいると思ったら、あなたじゃないの」
半ば呆れたように、メッと睨み(笑)、ダメ出しが続きます。
「いい、歩くときは膝と膝をくっつけて。大股はダメよ」
「はい。すみません」
「二の腕は見せちゃダメ。腕を上げるときは角度に気をつけるのよ」
「気をつけたつもりなんですけど……モゴモゴモゴ」
「つもりじゃダメなの!」
ピシャリと言い放ち、さらにお小言は続きます。
「お座布団を持つとき、指で摘んでいたでしょう? あれはダメ。お座布団は2つに畳んで、小脇に抱えなきゃ、わかった!?」
ダメ出しを連発する島倉さんのお顔が、なんだかすごく嬉しそうに見えたのは、わたしの気のせいかもしれません。
島倉さんのご自宅に遊びに行かせていただいたとき、数え切れないほどあるお着物を前に、「どれでも好きなのをプレゼントするから選んで」と、言っていただいたことも忘れられません。
「これが、いいです!」
わたしが指差したのは、総絞りの逸品で、いちばんお高いものだったそうです。
「これ?」
「はい! これがいいです!!」
お目が高いというべきか、厚かましいというべきか。わたしったら、まったく、もうです(苦笑)。
プライベート旅行にも行かせていただきました。特急あずさに乗って、島倉さんとの2人旅です。
「私、こういうのって初めてなんだけど……。冬美ちゃん、大丈夫!?」
「大丈夫です。全部わたしにまかせて、島倉さんは後をついてきてくださればいいですから」
大見得を切った次の瞬間、買ったチケットがなぜか見つからず、あたふた。まるでコントです。
初日は、ペンションの同じお部屋で島倉さんと枕を並べ、2日めは、小淵沢にあるあやちゃん(藤あや子)のギャラリーに泊めていただいて。
アウトレットでお買い物をしたり、牧場でソフトクリームを頬張ったり……とっても素敵な旅の思い出をたくさんいただきました。
そのときの写真を見ながら、「私の娘」と嬉しそうに笑ったお顔を今も忘れません。
島倉さんから教えていただいたことは、わたしの中で今もきちんと生き続けています。
たまには下界を見下ろし「あら、頑張っているじゃないの」と褒めてください。う~~~~ん、でも、きっと、島倉さんのことですから「冬美ちゃん、あれだけ言ったのに、まだそんな歩き方をしている」と、ダメ出しをされちゃうかもしれませんね(苦笑)。
さかもとふゆみ
1967 年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』(小社刊)が発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋