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『最高の教師』松岡茉優と対峙した生徒役の演技に期待しかない【ネタバレあり】

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.09.24 19:40 最終更新日:2023.09.24 19:40

『最高の教師』松岡茉優と対峙した生徒役の演技に期待しかない【ネタバレあり】

 

 クライマックスの見せ場を若手俳優に託した制作陣の心意気が、見事に結実していた。

 

 9月23日に最終話(第10話)が放送された松岡茉優主演『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)のことだ。

 

 物語は高校の卒業式の日から始まる。3年D組の担任である九条里奈(松岡)は、事なかれ主義の教師。そんな彼女は卒業式の後、クラスの生徒の何者かによって校舎から突き落とされ、死を覚悟した――その瞬間に1年前にタイムリープ。担任として初めて教壇に立った日に戻っていた。

 

 

 九条からすれば、目の前にいる30人の生徒は、1年後の卒業式の日に自分を殺す容疑者ということになる。自らの死の運命を回避するため、文字どおり命がけで担任生徒に向き合っていくというストーリーだった。

 

■【ネタバレあり】1話前に劇中最大の事件の真相は解明

 

 2番手キャストだった芦田愛菜演じる生徒・鵜久森叶が、第6話ラストで転落死。主人公の頼もしいバディのような存在であり、一部では黒幕説も根強かった鵜久森の途中退場は、あまりに衝撃的だった。

 

 第7話以降は鵜久森を死に追いやったのは誰かという展開となったが、第9話でクラス内の1軍女子・西野美月(茅島みずき)と揉み合いになって、転落死したという真相が明らかに。

 

 つまり、最終話の1話前に劇中最大の事件の真相が解明され、それと同時に鵜久森をイジメてクラスを牛耳っていた1軍勢がみんな改心したことにもなった。

 

 迎えた最終話。おのずと焦点は、卒業式の日に九条を突き落とすのは誰か、という謎に絞られた。

 

 ネタバレになるが、犯人は奥平大兼という若手俳優が演じる星崎透だった。

 

 星崎は終始なにを考えているかわからない異彩を放っていたキャラクター。九条がタイムリープしているのではと疑っていたり、クラスメイトたちが感情を露わにしているときに一人無関心そうにしていたり、かと思えばへんなタイミングでテンションが高かったり……。

 

 実際、ネットに書き込まれた考察では星崎を疑う声はかなり多かった。

 

 考察好きの視聴者からすれば星崎は怪しさ満点だったのだろうが、本作はミステリー要素もあるものの犯人当てが主題ではないので、制作陣はあえて星崎の怪しさをきっちり伏線として張っていたということだろう。

 

■最終話45分のうち20分も費やされたタイマン演技合戦

 

 星崎を演じた奥平大兼の演技は圧巻。素直に「演技うまっ!」と思った。

 

 最終話の尺は約45分だったが、そのうちの約20分は九条演じる松岡と星崎演じる奥平の二人芝居。

 

 お茶の間認知度としてはまだ無名に近い若手俳優が、演技巧者として知られる松岡と堂々のタイマン演技合戦を披露したのだ。

 

 しかも、この20分間は星崎が自分の内情を語るのがメインでセリフ量が多く、九条は受け手側。つまり奥平の演技次第で、このドラマ全体のクライマックスが最高なものになるか、それとも台なしになるかが決まると言っても過言ではなかったのである。

 

 さて、あくまで筆者の個人的な感想だが、結果は最高だった。

 

 ザックリ言うと、星崎はサイコパスキャラ。クラスメイトたちと喜怒哀楽の感じ方に大きなズレがあり、自分がマイノリティな性質で「おかしい」と自覚し、苦しんでいたようだ。

 

 サイコパスキャラの演技プランと言えば、やたらヘラヘラしたり気が触れたように高笑いしたりするのがテンプレとなっているが、奥平が演じた星崎はその定番をたどっていない。

 

 たとえば、どこにでもいる普通の男子高校生が友達と雑談しているような口調で、相対する九条に「え、なんでわかったの? 俺が先生のこと、突き落とそうとしてること」と尋ね、次に自然な笑顔で「あ、やっぱり。2周めでしょ?」と続ける。

 

 主人公が最後に対峙する犯人役だ。若手俳優なら肩に力が入って過剰な演技になってもおかしくないが、むしろ “引き算” の演技でとてもナチュラルなのである。

 

 もちろん、松岡の安定と信頼のシリアス演技があったからこそ、飄々とした奥平の演技が引き立ったという側面もあっただろう。

 

 いずれにしても、芦田愛菜が第6話で退場したのには驚かされたし、彼女不在でクライマックスが盛り上がるのかという懸念もあったが、杞憂だった。

 

 制作陣は奥平大兼という若手俳優に全幅の信頼を寄せていたに違いない。そして、その大抜擢に対し、彼は肩ひじ張らない最適解の演技で応えてみせたのだ。

 

■犯人役を演じた若手俳優・奥平大兼には期待しかない

 

 奥平はまだ一般的な知名度は低いとはいえ、着実にキャリアを積んできた俳優でもある。

 

 実は、昨年2月から3月にかけて日曜の昼間の時間帯に放送されていた、『卒業式に、神谷詩子がいない』(日本テレビ系)というドラマの主要キャストが、『最高の教師』にも起用されているのだ。

 

『神谷詩子』は6人の高校生の友情・恋愛・夢を描いたストーリーだったのだが、この6人のうち4人も『最高の教師』のクラスメイト役として出演。『神谷詩子』は主演が茅島みずき、2番手キャストが奥平大兼だった。

 

 つまり『神谷詩子』の主演と2番手が、『最高の教師』で芦田愛菜を死に追いやった役、松岡茉優を殺そうとした犯人役を担ったということになる。

 

『最高の教師』にハマッたという人は、Huluで配信中の『神谷詩子』を観れば、奥平大兼という俳優の演技力をさらに実感できるかもしれない。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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