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『うちの弁護士は手がかかる』ムロツヨシのコミカル演技に平手友梨奈がうまくからめておらず “不発感” 増大

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.10.27 11:00 最終更新日:2023.10.27 11:00

『うちの弁護士は手がかかる』ムロツヨシのコミカル演技に平手友梨奈がうまくからめておらず “不発感” 増大

 

 主人公は魅力たっぷりなのに、まだバディとあまり噛み合っておらず、シナジーが感じられないのが大きな “不発感” につながっている。

 

 ムロツヨシ主演で、平手友梨奈がバディ役を演じる『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ系、以下同)。先週金曜に第2話まで放送されている。

 

 

 主人公・蔵前勉(ムロ)は、トップ女優に30年ついていた超敏腕な芸能マネージャーだったが、ある日突然、女優からクビを宣告されて無職に。ひょんなことから弁護士事務所の所長に認められ、最年少で司法試験に合格した超エリートながら、生意気ですぐにヒステリーを起こす新人弁護士・天野杏(平手)をマネジメントすることになる。

 

 法曹界はまったく未経験ながら、パラリーガルというアシスタント職に起用された蔵前が、芸能マネージャーとして培ってきたスキルと経験を発揮して、クセが強すぎる新人弁護士を育成していくというリーガルエンターテインメントだ。

 

■主人公はいいのに準主役のキャラがいまいち

 

 まず、主人公・蔵前を演じるムロの演技は申し分ない。

 

 ベースはおちゃらけているものの、締めるときにはビシッと締めるタイプのキャラで、コミカルな演技とシリアスな演技の硬軟を見事に演じ分けている。

 

 コメディパートはやはり秀逸で、特に蔵前が『振り返れば奴がいる』(1993年)、『古畑任三郎』(1994年、1996年)、『踊る大捜査線』(1997年)、『GTO』(1998年)といった名作のパロディやオマージュをするシーンが随所に散りばめられており、往年のドラマファンへのサービスもたっぷりなのだ。

 

 あえてイジワルな見方をするなら、別のドラマでもムロが演じていたような既視感のあるキャラクター造形。だが、好意的に解釈するなら、ムロの十八番演技が楽しめるので、主演俳優の魅力を最大限に引き出すことを重視した当て書きなのだろう。

 

 問題なのは、平手が演じる準主役・杏のキャラ。

 

 法律の知識こそずば抜けているものの、“傲慢不遜” を絵に描いたような感じで、あまりに傍若無人なため弁護士としてまともに仕事の成果を上げられていないという設定。

 

 この物語は、主人公がバディを一人前に育てていく過程を楽しむドラマなので、序盤の第1話、第2話で未熟な面が多々あるのは仕方ない。

 

 にしても、すぐにヒステリーを起こすクソガキにしか見えず、視聴者目線で応援したくなるような “かわいげ” があまりない。他者とのコミュニケーション姿勢が常に攻撃的なところに、不快感を覚えてしまう。「IQ」(Intelligence Quotient)は高いが「EQ」(Emotional Intelligence Quotient)は低いという典型的なタイプだ。

 

 IQはよく耳にすると思うが、EQとは “心の知能指数” と言われるもので、昨今、ビジネスシーンでも重視されているのだが、IQが高くてEQが低い人物はなかなかやっかい。学力テストなどで高得点が取れるのでエリート扱いされるし、ディベート力も優れているので、議論や口ゲンカで相手を論破できる。

 

 そのためプライドばかりどんどん高くなって他者を見下しがちだが、一方で自身の感情をコントロールできずに暴走したり、視野が狭く物事の真理を理解できなかったりして、良好な人間関係を築きにくい。

 

 杏はまさにそういう感じのキャラクターなのだ。

 

■人格破綻者でも “かわいげ” があればいいのだが

 

 とはいえ、誤解しないでもらいたいのは、杏を聖人キャラにすべきと言いたいわけではない。彼女の成長物語でもあるわけだから、最初は人間性が壊滅的に悪いぐらいのほうがエンタメ的要素は強いからである。

 

 ただ、たとえば同じリーガルエンターテインメント作である『リーガル・ハイ』(2012年、2013年)で堺雅人が演じた主人公は、「正義は金で買える!」と豪語する弁護士だったが、いい意味のツッコミどころが満載で、どこかかわいげがある人格破綻者だった。

 

 つまり、性悪なタイプでも視聴者が “かわいい” “かっこいい” と思えるキャラクターは創り出せるものなのだが、杏は今のところ愛すべき要素が少なく、観ていると、ただイライラしてしまう。

 

 そして、ムロと平手のシナジーがあまり感じられないのも気になるところ。

 

 一例だが、杏を “90年代のドラマ通” という設定にしておけば、蔵前の名作ドラマパロディに乗りツッコミするといった “お約束” の掛け合いを作れたように思うが、杏は蔵前のパロディネタをスルーしているだけ。実にもったいない。

 

 また、蔵前や杏が所属する弁護士事務所は総勢7名なのだが、杏と所長を除いた5名で、わちゃわちゃとコントのようなコメディシーンが展開されることもある。こういう場面で杏が不貞腐れながらでもその掛け合いに加わっていれば、ムロと平手の魅力が相乗効果で高まるような気がするのだが……。

 

 杏の育成が本作のテーマなので、これから彼女が人間的に成長していけば、愛すべき要素が出てきたり、他メンバーとのチーム感も増してきたりするのかもしれない。しかし、物語前半でおもしろいと感じなければ、脱落する視聴者が続出してしまう。

 

 今夜放送の第3話あたりから、杏のかわいげがどんどん出てきて、魅力的になっていくことを期待している。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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