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坂本冬美の『モゴモゴ交友録』さくらももこさんーー寂しがり屋で酒豪の先生と朝方まで呑んだくれて
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.11.11 06:00 最終更新日:2023.11.11 06:00
ちょっと想像してみてください。
もしも、です。もしもある日、あなたのお手元に『ONE PIECE』の尾田栄一郎先生から、あるいは『SLAM DUNK』の井上雄彦先生から、直筆のお手紙が届いたらどう思われますか。
あれはデビュー26年めの夏、あやちゃん(藤あや子)と2人座長を務めた明治座公演中のことでした。
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スタッフから「冬美さんにお手紙が届きました」と、目の前に差し出された封書の表には、「坂本冬美様」と記されていました。
誰だろうと思いながらひょいと裏返すと、そこには、な、な、な、な、なんと「さくらももこ」と書いてあるじゃないですか。
そんなバカな!? です。『ちびまる子ちゃん』は大好きです。もっというと、花輪クンのファンです。でも、さくら先生とは、これまで一面識もありません。わたしとは遠い、遠い、世界の方……のはずなのですが……。
まぁるい書体で書かれた文字は、どこからどう見ても、さくらももこさんの字です。
まさか、そんな……。でも、ひょっとしたら、ひょっとしちゃうということだって、あるかも!? いや、いや、いや、いや。ない、ない、ない。
右に左に揺れ動く気持ちを抑えながら封を開け、お手紙を拝読すると、そこにはさくら先生が詞を書き、宮沢和史さんに曲を依頼し、出来上がったものを聴いた瞬間、さくら先生いわく、「これは坂本冬美ちゃんだ!」と思ったことなどが、縷々(るる)綴られておりまして。
ということは……ひぇぇぇぇぇーッ! やっぱり本物です。タッタタラリラです。リンリンランランソーセージです。
しかも、お手紙の最後のほうには「もしよかったら、歌っていただけませんか」という言葉が綴られているじゃあ~りませんか。
もちろん、お断わりする理由は1ミリもありません。それどころか、心はすでに大気圏を突破して、宇宙空間をふわふわと漂っている感じです。
その後、とんとん拍子に話が進んで出来上がったのが、さくらももこ作詞、宮沢和史作曲、坂本冬美歌唱による『花はただ咲く』です。
「シラフじゃ無理なので、お酒を呑みながらでよければ」と、さくら先生がコーラスで参加してくださった貴重な一枚です。
このご縁をきっかけに、あやちゃんと一緒に、何度かさくら先生のご自宅に招待していただき、呑んで歌って、また呑んでという楽しい時間を過ごさせていただきましたが……ひとつだけ困ったのは、先生はお酒が強すぎることです。いくらお呑みになってもずっと笑顔のままです。
わたしとしては、呑んで乱れることだけはしちゃいけないと、それなりに緊張していたのですが、「冬美ちゃんも一杯!」と注がれたら、空けないわけにはいきません。
一杯が二杯、二杯が三杯、三杯が四杯……と、呑むほどに記憶がどんどん朧げになり、気がつくとカーテンの隙間からうっすらと朝日が射し込んでいるという(苦笑)。
翌日わたしは仕事があるのに、前日遅くというか、その日の朝方まで呑んだのは、さくら先生にお誘いいただいたときだけ。人生でいちばんお酒を呑んだ時期だったような気がします。
毎回、年下のわたしたちに、「えっ、もう帰っちゃうの!?」と、寂しそうなお顔をされるさくら先生は、ものすごくかわいらしいお方でした。
さくら先生のお声をお聴きになりたいという方は、『花はただ咲く』に収められているカラオケバージョンをお聴きください。
ちょっとハスキーで、かわいらしいさくら先生のお声が聞こえてきます。
さかもとふゆみ
1967年3月30日生まれ 和歌山県出身『祝い酒』『夜桜お七』『また君に恋してる』『ブッダのように私は死んだ』など幅広いジャンルの代表曲を持つ。現在、著書『坂本冬美のモゴモゴモゴ』(小社刊)が発売中!
写真・中村 功
取材&文・工藤 晋