せっかく友達になった4人が疎遠になってしまうのか? 最終話に向けてそんな不穏な空気感を漂わせているが、過剰に煽りすぎではないかと思えてしまう。
先週木曜に第9話が放送された『いちばんすきな花』(フジテレビ系)。昨年10月期に社会現象を巻き起こした『silent』(同)の脚本家とプロデューサーが再タッグを組むとのことで、放送前から大きな期待を集めた作品だ。
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■4人の集まる一軒家がなくなってしまう「居場所」問題
多部未華子、松下洸平、今田美桜、神尾楓珠の4人によるクアトロ主演という新しいスタイルのドラマで、「男女の間に友情は成立するのか?」をテーマにしている。
主人公は塾講師のゆくえ(多部)、出版社勤務の椿(松下)、美容師の夜々(今田)、イラストレーターの紅葉(神尾)の4人。
恋愛や友情にまつわる人間関係に “生きづらさ” を感じていた4人が偶然出会い、性差を越えて仲を深めていく物語なのだが、終盤となる第9話で “最大の危機” として描かれているのは「居場所」問題。
椿は婚約者と住むため一軒家に引っ越してきたのだが、結婚直前に彼女の浮気で破局したため、大きな家で一人暮らし。そこに、ゆくえ、夜々、紅葉が集まるようになり、4人でダイニングテーブルを囲むことで、そこが居心地のいい空間となっていた。
しかし、事情が重なって椿がその一軒家から引っ越すことになるのだが、4人のあいだでかなり悲壮感が漂う展開になっている。
とはいえ、椿はどこか遠くに引っ越してしまうわけではなく、近場で新居を探しているので、一軒家を引き払ってもすぐに集まろうと思えば集まれる。なんだったら椿がちょっと広めのマンションを新居にすれば、そこをまた4人の居場所にすることもできる気がするのだが……。
一言で言うと、そんなにあの一軒家じゃないとダメなの? というのが非常に疑問なのである。
確かに人間関係をキープし続けるのはけっこう難しいことだし、関係性を現状維持するために適した場所が必要なのはわかるが、それならばがんばって代わりの居場所を探せばいいのではと思ってしまう。
劇中で椿と紅葉がルームシェアするような案も出ていたので、男2人で広めの2LDKでも借りれば、そのリビングを4人の新たな居場所にできるだろうに――。
ちなみに、妹からどうしてその一軒家にこだわるのかと尋ねられたゆくえが、4人にとってとても大切な場所なのだと語るなど、その空間の重要性を説明するようなシーンはたびたび挿入されている。
だが、それは脚本家のエクスキューズ(言い訳)に聞こえてしまうのだ。
■2021年のTBSドラマでも同じような難題が
2021年7月期に『#家族募集します』(TBS系)というドラマがあった。
ストーリーはシングルファーザーと5歳の息子、その父親の幼馴染みの男、シングルマザーと5歳の娘、もうひとりのシングルマザーと6歳の息子、この7人が下町の老舗お好み焼き屋の2階で “家族” としてシェアハウスするというもの。
『#家族募集します』最終話では、お好み焼き屋の2階に住み続けることができなくなり、バラバラに暮らすようになる。主要キャラたちが別れを惜しみつつ、“離れ離れになっても家族の絆は変わらない” といった落としどころだった。
けれど、このときも、お好み焼き屋に住めないなら、近場で広めの一軒家かマンションを探して7人で一緒に引っ越せばいいのに、どうしてそうしないんだろう? と不思議で仕方がなかった。
このように『いちばんすきな花』と『#家族募集します』は、最終話を盛り上げるために用意された難題が似ているのだが、どちらもそこまでオオゴトに感じないのである。
心地のいい空間が重要なのはわかるが、うがった見方をすると、その場所がなくなるぐらいで壊れてしまうかもしれないチープで脆い関係性なのかと思ってしまうのだ。
脚本家としては、最終話に向けて “最大の危機” を用意して、主人公たちがそれをどう乗り越えるかを描くことで、クライマックスを盛り上げようとしているのだろう。
しかし、少々強引すぎる展開で制作側の意図が透けて見えるため、げんなりしてしまった。
――今夜放送の第10話とその後に迎える最終話で、主人公たちの居場所問題がどうなるのか、最後まで見守りたい。
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中
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