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鈴木亮平『下剋上球児』原案ノンフィクションを超越したオリジナル展開はお見事!視聴者はリアル決勝戦を見ているよう
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.12.17 11:00 最終更新日:2023.12.17 11:00
優勝して “日本一の下剋上” を果たすのか、それとも決勝で敗退してしまうのか――実話ベースのドラマながら、結末が読めないのがすごい。
先週日曜に第9話が放送され、今夜の第10話が最終回となる日曜劇場『下剋上球児』(TBS系)。
10年連続で県大会初戦敗退していた三重県の公立高校の弱小野球部が、2018年夏に甲子園初出場するまでの奇跡を綴った、ノンフィクション『下剋上球児』を原案としている本作。
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ドラマも同じく、弱小だった野球部が “日本一の下剋上” を目標に、2018年夏の三重県大会を勝ち進んでおり、第9話では宿敵だった強豪校と準決勝で対戦してサヨナラ勝ち。決勝戦に駒を進めたところまでが描かれた。
普通の実話ベースの作品ならば、結末は当然、県大会優勝して甲子園出場を果たすだろう。だが、このドラマはよくも悪くも普通ではない。だから、最終話の展開も読めないのである。
■同名ノンフィクションはあくまで “原案”
物語は2016年の春からスタート。鈴木亮平演じる主人公・南雲脩司は、高校時代は甲子園を目指していた強豪校の球児で、大学まで野球一筋だったもののケガで引退。36歳で教員免許を取って高校教師になっていた。
……と思われていたが、物語前半で、実は南雲が教員免許を偽造しており、無免許の偽教師だったことが発覚。原案の教師はきちんと教員免許を持っているので、実話から大きく逸れたドラマ完全オリジナルのトンデモ展開をブッ込んできたわけだ。
ドラマ公式サイトには、ノンフィクション本は “原案” と記したうえで、《このドラマは「下剋上球児」(菊地高弘/カンゼン刊)にインスピレーションを受け企画しましたが、登場する人物・学校・団体名・あらすじはすべてフィクションです。》との注記もある。
“原作” とはせず、あくまで “原案” としているのは、大幅にストーリーを変えることを前提としたドラマだからだろう。
熱血さわやか主人公が犯罪に手を染めていたという驚愕の設定は、視聴者から否定的な意見も数多く噴出したが、要するに大胆に改変もする作品ということ。そんな大改変を踏まえると、ドラマでは決勝戦で敗れてしまう可能性も十分ある気がするのだ。
■本作の “失敗” はマイナスではない
罪を犯した人間には大きな社会的制裁が加えられ、一度の失敗も許されないといった空気感が、少なからず今の日本にはある。
ただ、このドラマは、主人公にあえて罪を犯させて、そこから再起する姿を描くことで、昨今の風潮へのアンチテーゼ的な意味を込めているのだろう。つまり、失敗をマイナスとして捉えておらず、何度でも再出発していけばいいということを描こうとしているのではないか。
公式サイトの最終回予告ムービーには、南雲がワイシャツ姿で登壇して、「次を目指してる限り、人は終わらない」と熱弁している姿が挿入されている。おそらくこれは決勝戦後のシーンだろうから、かなり意味深だ。
勝負に負けることは “失敗” かもしれないが、このドラマは “失敗” 自体をネガティブなものとして扱っていないので、最終話で敗退した主人公と野球部員が、そこからどうリスタートするかまで描くのではないかとも思える。
■リアルの高校野球決勝戦のような臨場感
原案をなぞって “日本一の下剋上” が果たされるのか、それともなぞらずに決勝戦で負けてしまうのか……正直、どちらに転ぶかわからない。
しかし、こうして結末を予想することこそ脚本家の術中にハマっており、制作陣の思惑どおりだとしたら、なかなかお見事。
ノンフィクションをベースにしたドラマは、実話どおりの結末にすることが前提だから、最初から視聴者もラストを知っていることになる。そのため、エンディングへの過程をどう描くかでおもしろいと思わせたり、感動を誘ったりするのがオーソドックスな手法である。
だが、本作の場合、最後まで優勝できるのか否かというドキドキ・ハラハラ感を視聴者が体験できる仕組みになっている。最終話はある意味、リアルの高校野球の決勝戦を観戦するような臨場感も味わえそうだ。
今夜放送の最終話、どちらに転んでも感動してしまいそうだ。
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中
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