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『トクメイ!』橋本環奈にメリットはなかったが…出演が大収穫となった3人の男【ネタバレあり】

エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.12.26 18:40 最終更新日:2023.12.26 21:56

『トクメイ!』橋本環奈にメリットはなかったが…出演が大収穫となった3人の男【ネタバレあり】

 

 主演の橋本環奈にとっては可もなく不可もなくといった感じだったが、レギュラー出演していた3人の俳優にとっては、かなり役得の多い作品になったのではないか。

 

 12月25日に最終話(第11話)が放送された異色の警察ドラマ『トクメイ!警視庁特別会計係』(フジテレビ系)。

 

 警察庁から “特別命令(トクメイ)” を受け、お荷物所轄と呼ばれる万町署の経費削減を任ぜられた、特別会計係の女性警察官・一円(はじめまどか/橋本)が主人公。

 

 

 無駄な器物破損、いかがわしい情報屋との交流、使途不明な経費などがまかり通ってきた万町署のアクの強い刑事たちに、円が捜査費などの節約を迫りながら、時に協力して難事件を解決していくというストーリーだ。

 

 警察ものながら、ベースはユルめの空気感でコメディ色の強いシーンが多く、それでいてシリアスな事件も展開していくという構成で、そのバランス感覚は往年の大ヒットドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)に通ずるところもある。

 

■酷評だらけの月9『ONE DAY』に比べ評判は悪くなかったが…

 

 橋本が演じた円は、1円のズレも許さない数字に細かい几帳面な性格で、次々と起こる事件をお金(数字)という角度から推理していく。橋本は過剰にやりすぎず、おもしろいツボを突いた絶妙な演技で主人公を魅力的に仕上げていた。

 

 実際、『トクメイ!』を最後まで観た視聴者たちは、主人公やストーリーを好意的にとらえている人が多かった印象。本作(月曜・夜10時)のひとつ前の枠で放送されていた、今期の月9作品『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)とは大違いである。

 

 世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ/関東地区)は『トクメイ!』が全話平均5.1%、『ONE DAY』が同5.3%。見逃し配信の人気の指標となるTVerのお気に入り数は、『トクメイ!』が50.3万(12月26日現在)、『ONE DAY』が64.9万(同)。

 

 両作とも低水準で「コケた」と評されても文句の言えない数字だが、一応、データ的には『ONE DAY』が上回っている。しかし、ストーリーを中心に酷評の嵐となった『ONE DAY』とは違い、『トクメイ!』にそこまで悪評は噴出しておらず、好意的な声が多かった。

 

 とはいえ、2年連続で『紅白歌合戦』(NHK)の司会に選ばれ、2024年度後期の朝ドラ『おむすび』(NHK)の主演に抜擢されて、もはや “国民的タレント” と言っても過言ではない橋本の主演作としては、『トクメイ!』は盛り上がりに欠けていた。最終話で自己最低の世帯視聴率4.5%を記録してしまい、最後の最後でミソをつけた感も否めない。

 

■【ネタバレあり】もっとも得をしたのは黒幕を演じたあの人

 

 橋本にとって黒歴史になったとまでは言わないが、『トクメイ!』が彼女の代表作のひとつに数えられることはないだろう。

 

 しかし、そんな作品ながら、出演したことで得をした俳優が3人いる。それは、元石原プロの徳重聡、松本人志のモノマネでお馴染みのJP、名バイプレイヤーとして引っ張りだこの佐藤二朗の3人だ。

 

 まず徳重。

 

 彼は「21世紀の石原裕次郎を探せ!」オーディションでグランプリを獲得してデビューした経緯があるため、硬派な二枚目キャラを演じていたイメージが強い。

 

 けれど、本作で演じたのは、安定した公務員になろうと思い、唯一採用されたのが警察だったから刑事になったというキャラ。さらにアイドル好きでよく女に騙される非モテ男だ。

 

 同僚からイジられる愛され三枚目を好演し、いい意味で従来のイメージとのギャップが激しかったので、間違いなく役の幅は広がっただろう。

 

 続いてJP。

 

 これまでにも単発のドラマ出演はしていたものの、本業はものまねタレントのため、連ドラに主要キャラとしてレギュラー出演するのは初めて。

 

 お笑い芸人のドラマ出演といえば、コメディリリーフの三枚目キャラとして起用されることが多いが、本作でJPが演じたのは嫌味ばかり言う皮肉屋ながら、意外と頭脳派タイプな刑事。

 

 橋本や徳重をイジる側のポジションで、コメディシーンで活きるのはもちろんだが、シリアスなシーンでも悪目立ちすることなく、ほかの俳優陣の演技に溶け込んでいた。これから役者仕事のオファーが続々と舞い込んでもおかしくないだろう。

 

 最後は、本作でもっとも得をしたかもしれない佐藤。

 

 佐藤と言えばコミカル演技に定評があり、橋本とも何度かコメディ作品で共演しているものの、本作ではギャグシーンにはほぼ加わらず、円熟味のある演技で魅せていた。

 

 演じたのは円の上司であり、父親的な存在でもある警務課長。温厚な性格で主人公の一番の理解者といった役どころ……だったのだが、第10話ラストで、初回から描かれていた縦軸の事件の黒幕「脅迫者X」だったことが判明。

 

 娘を殺された復讐のため、警察上層部の違法行為を告発し続け、警察庁長官官房長の殺害を企てていたのである。クライマックスで、官房長を飄々と殺そうとする際の仕草や、主人公と対峙して見せた複雑な感情の泣き笑いは圧巻で、「脅迫者X」にならざるをえなかったやるせなさがひしひしと伝わってきた。

 

 黒幕だったことが明かされて、なぜ佐藤をコメディパートで使わないのかという疑問について、これ以上ないほど納得させられた。それと同時に、彼の演技力の “深さ” を業界内外にこれでもかとアピールする結果となったと思う。

 

 ――このように『トクメイ!』は、橋本環奈にとっては可もなく不可もない主演作となったが、徳重聡、JP、佐藤二朗の3人にとっては大きな収穫があったのは間違いあるまい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

( SmartFLASH )

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