「いま、着られるスーツが3着しかありません。これもイタリアのブランドのいちばんデカいサイズなんですけど、パツンパツンです(笑)」
鈴木亮平はそう困惑しながら、どこか楽しそうでもある。役柄により体型を自在に変えるほどの徹底した役作りは、俳優としての大きな武器だ。
そんな彼が現在、人生でいちばん体重が重くなるまで体を鍛えている理由は、2018年のNHK大河ドラマ『西郷どん』で主役の西郷隆盛を演じるから。まさに、日本を代表する俳優になりつつある鈴木亮平のこれまでに迫ってみた。
「小学5、6年のときにアニメを観て声優に憧れて。中学で映画をどんどん好きになり、俳優になりたいなと」
同級生のなかで、役者志望は珍しかった。ただ、「まわりは “なに言ってんの?” っていう反応だったから、負けず嫌いに火がついた」ため、ブレることはなく、高校卒業後は東京外国語大学に進学。
演劇サークルに入り、芝居の世界へ。すると、すぐにそれを一生の仕事にしようと決意する瞬間が訪れる。
「最初の公演後にお客さんを見送るとき、よかったよと言ってもらえたり、なかには泣いている人がいたり。こんなに他人の気持ちに影響を与えられるんだと。
絵画とか音楽とか、いろんな表現方法がありますけど、人間関係をその場で再現してみせるというのは、実生活にいちばん近いと思ったんです。その破壊力にハマってしまいました」
そこから大学生活は演劇漬けになるが、3年時にある疑問が浮かぶ。このままで役者になれるのか? というものだ。在籍していた演劇サークルに、プロへのコネやルートはなかった。
「焦りましたね。とにかく動かなきゃと思いました。履歴書をいろんな芸能事務所に送ったり、直接訪ねたり。50社以上、まわりました。
だけど、手応えがまるでなくて。キツかったですよ。正しいやりかたかどうかはわからないし。でも、ここで諦めるようなやつは役者になれないと自分に言い聞かせて」
苦労の末、キャスティング会社の紹介を経てモデル事務所に所属が決まる。やがて、23歳になったとき、モデル活動が縁で現在の事務所に所属。役者としてスタートすることができた。
「モデルを経験したことで、オーディションに落ちることに慣れました。モデルって、ほぼ外見しか見られないんです。行って4秒で落とされることもある。
でも、役者の場合、芝居をやらせてくれる。ということは、芝居がうまくなれば通るということ。努力する方向が見えるんです。それがよかった」
ドラマや映画など、すこしずつ仕事が増えていった。主役の脇で、存在感を発揮しようともがく駆け出し時代。 それは、「役が小さくても芝居ができることが楽しい」充実の日々だった。
すずきりょうへい
34歳 1983年3月29日生まれ 兵庫県出身 T186 中学時代から俳優を志す。東京外国語大学在学中にモデル活動を開始。2006年、俳優デビュー。徹底した役作りにより頭角を現わし、これまでに出演作多数。舞台『トロイ戦争は起こらない』(東京・新国立劇場中劇場で10月5日から公演)、2018年のNHK大河ドラマ『西郷どん』主演と、充実のときを迎えている。そのほか最新情報は、公式ブログ「Neutral」ツイッター(@ryoheiheisuzuki)にて
(週刊FLASH 2017年10月3日号)