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「原作者に会いたくない派」シナリオ作家協会の炎上動画は何が問題だったのか…出演した脚本家が指摘「言葉足らずに感じた」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.02.08 06:00 最終更新日:2024.02.08 06:00
1月29日、ドラマ化された『セクシー田中さん』などで知られる、漫画家の芦原妃名子さん(50)の訃報が伝えられ、世間は騒然となった。
そして、その報道の直後、日本シナリオ作家協会(以下、作協)がYouTube公式チャンネルで公開した動画「【密談.特別編】緊急対談:原作者と脚本家はどう共存できるのか編」に対し、非難が殺到。作協は即座に動画を削除し、2月4日に「原作者と脚本家の関わり方などに関して敬意や配慮を欠いた」とする謝罪文を発表した。
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この動画の出演者は4人おり、ゲストの立場で呼ばれたのがベテラン脚本家の伴一彦氏。『うちの子にかぎって…』『パパはニュースキャスター』(ともにTBS系)といった大ヒット作で知られる。ほかの3人の名前も追って特定されたが、動画ではハンドルネームで登場していた。
「出演依頼があったのは前日。『セクシー田中さん』に限らず、原作者と脚本家の関係について経験を踏まえて話してほしいとのことでOKしました。
翌月曜夕方に芦原先生が自死されたことを知りましたが、予定どおりやるとのこと。『セクシー田中さん』の脚本家・相沢友子さんへのバッシングがSNSでさらに激しくなることも予想できたので、脚本家として発信すべきと思い、出演を撤回しませんでした」
じつは、伴氏に訃報を知らせたのは筆者だった。またその際、伴氏にこれから出演する動画について知らされ、ライブで視聴した。
「そういった目的で出演したのですが、『セクシー田中さん』問題が最悪の結果になってしまった経緯を十分に把握することなく、芦原先生が亡くなられた日に編集ができないライブ配信をおこなったことは軽率だったと反省しています」
そのライブ配信内で、伴氏が作家の東野圭吾氏について、「あんなやつと会ったことない」と言ったとされ、SNSで叩かれた。が、伴氏はそのような発言をいっさいしていない。筆者が入手した元の動画を確認しても、「東野さんとは会っていないし。なんか意見を聞いたこともないんですよね」とのみ語っている。
投稿主の単純な聞き間違いだったのか、バッシングを意図したものかはわからないが、その後、投稿主は謝罪の投稿こそしたが、大元のポストは削除していない。伴氏は「作協が元の動画を消してしまったため、発言の確認もできず、デマが拡散されてしまった。作協の対応ミスです」と頭を抱える。
むしろ先のX投稿では、聞き手役として出演し、自らもベテランとして経験談を多く語った、黒沢久子氏の発言が多く槍玉にあがった。伴氏はやり取りを振り返り、誤解を招く表現が多々あったと認める。
「【密談.特別編】は座談会形式ですが、いつもリモートでおこなわれ、それぞれ違う場所にいて通信アプリで話すんです。私は初めてだったし、居場所の電波状態がよくなくて、コミュニケーションが取りづらかった」
原作者が直前に亡くなり、座回しをする黒沢氏の声には明らかな動揺の色がうかがえた。とくに問題視された「私は原作者の方には会いたくない派なんですよ」という発言が出た際、ほかの一同もさすがに不意を突かれ、戸惑っていた。
「問題となった発言は黒沢さんの持論でしょうが、言葉足らずに感じました。僕も突っ込んでもう少しわかりやすく説明してほしいと言えばよかったと反省しています」
その後に続く黒沢氏のコメント、「私が対峙するのは原作であって、原作者の方は関係ないかなって」も、原作者の人格を軽視しているように聞こえる。なぜなら作品には作者自身が投影されていて当然だからだ。
伴氏も「原作物の執筆を引き受けるのは、原作にシンパシーを感じ、リスペクトするから」と語るが、当然それは原作者に対しても向けられる。そうした敬意が欠けていると受け止められてしまった。
ただ、脚色者の原作への愛情が確かなら、大胆な改変が生じても説得力はともなうものだ。伴氏の場合、そうした例がほとんどで、原作者の何人かとは制作後も良好な関係を続けている。
「いい作品にするため、プロデューサーやディレクターとは何度となくぶつかってきましたが、原作者と揉めたことはないんです。
『喰いタン』(2006年、日本テレビ系)の場合、原作では主人公は歴史小説家の顔も持つんですが、探偵専業にしたり、ほかにも設定を変えました。
原作者の寺沢大介さんと会ったのは最終回のスタジオ収録。ドラマをどう思われているかドキドキしたのですが、『面白かった』と言っていただきました。以来、何度も一緒に飲みに行き、今でも交流しています 」
座談会で黒沢氏も指摘しているが、作品が映像化される以上は別物と考え、あまり口を出さない達観派と、作品へのこだわりからあまりいじられたくない慎重派と、原作者も大きく二通りに分かれる。伴氏はたまたま前者との付き合いが多かった。
「『デカワンコ』(2011年、日本テレビ系)も漫画原作ですが、何話か放送後、作者の森本梢子さんからスタッフルームに手描きのイラスト入りのFAXが来ました。そこには『ドラマ、本当に面白いです。こういう漫画を描きたかった』といったことが書かれていました」
伴氏が座談会を通じ、いちばん伝えたかったのは「ドラマは脚本家一人で好き勝手にはできず、プロデューサーが主導する」こと。それは脚本家のオリジナル作品であっても同じだ。
また、原作者と脚本家の対立構造を煽るべきではないとも考えていた。黒沢氏も同意見だったが、自らの言葉で主張を重ねるうち、逆効果の印象を与えてしまったようだ。
この先もっとも望ましくない展開は、今回の騒動に恐れをなし、意欲的な脚本家が原作物から手を引くことだ。黒沢氏にも伴氏同様の “成功体験” はあったはず。だから、脚本家の立場の弱さを慨嘆するだけでなく、まずはそこからポジティブに状況を捉え直すべきだった。
文・鈴木隆祐
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