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SixTONES・森本慎太郎『街並み照らすヤツら』視聴率もTVerもどん底!だけど…もったいなさすぎる良作だった【ネタバレあり】
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.06.30 15:50 最終更新日:2024.06.30 15:50
主人公が懲役3年の実刑判決。一見バッドエンドだが、これでハッピーエンド。素晴らしき人間賛歌を見させてもらった。
SixTONES・森本慎太郎がGP帯ドラマで単独初主演を飾った『街並み照らすヤツら』(日本テレビ系)。6月29日(土)に最終話(第10話)が放送され、完結した。
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だが、数字的にはお世辞にも褒められるところはなく大コケ。
視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は、第1話は世帯5.1%、個人3.0%でスタートするも、第2話でさっそく急落。第2話から第7話までは世帯2~3%台、個人1~2%台と超低空飛行。第8話は少々盛り返して世帯4.9%、個人2.8%だったものの、最終話前の第9話は世帯2.1%、個人1.3%という最低値をマークしてしまった。
いくら視聴率というデータ自体が時代遅れだと言われる昨今だとしても、GP帯のドラマでこのどん底の数字はヤバすぎた。
また、見逃し配信で人気を博しているのであればまだ言い訳はできたが、TVerのお気に入り数はたった10.4万(6月30日現在)。100万オーバーが配信ヒット作のひとつの指標になっていることを考えると、配信でもヤバいぐらい観られていなかったことは想像にかたくない。
しかし、この『街並み照らすヤツら』という作品、けっこういいドラマだったのだ。
■【ネタバレあり】罪を犯し得られたものはあったのか?
主人公は寂れた商店街のなかで、経営ギリギリのケーキ屋を営む竹野正義(森本)。
情に厚く優しいのだが、人に流されがちなタイプでもあるため、店を潰さないためにと幼馴染から提案された保険金目当ての偽装強盗に手を染めてしまう。だが、その犯罪が次第に商店街の人々にバレ、同じく経営難にあえぐ他の店主たちにも “保険金詐欺の輪” が広がってしまい……というストーリー。
このあらすじを読むと、クライムサスペンスのように思うかもしれないが、本作は「笑いと絆のヒューマンエンターテインメント」を謳っており、コメディ要素も多いハートフルな作品に仕上がっていた。
ドラマの登場人物はダメな人間ばかり。主人公はいくら情に厚く優しいといえど、保険金詐欺というれっきとした犯罪に手を染めてしまっている時点でダメ人間なのは明白で、名前が「正義」だというのは思いっきり皮肉になっている。
主人公だけでなく、彼の幼馴染みも、偽装強盗仲間も、商店街の人々も、まともな人間はほぼおらず、完璧にはほど遠い欠落したキャラばかり。
でも、みんな気のいいヤツらなのだ。
最終話の大半は、裁判の判決を翌日に控えた保釈中の正義が、妻(森川葵)とともに商店街の人たちにケーキを振る舞い、語りあう姿が描かれた。
結末のネタバレをすると、主犯格と見なされた正義は保険会社との示談が成立せず、裁判で懲役3年の実刑判決を喰らい、刑務所行きに。
ちなみに、判決に肩を落とす正義は、裁判所で彼らに偽装強盗の入れ知恵をしていた詐欺師(竹中直人)と偶然すれ違う。「あんたはこの件で学んだことはある?」と詐欺師から問いかけられた正義は「あると思います」と答えるも、詐欺師は「そりゃ錯覚だよ!」と一笑に付すのである。
主人公は自分の犯した罪や苦い経験にも、ポジティブになんらかの価値を見い出そうとしていたが、多くの犯罪を重ねて来た詐欺師がそれを完全否定したという構図。おそらくこのシーンは、犯罪を美談化や正当化しないように、犯罪で得られるものなんて一切ないのだと、本作の脚本家が詐欺師に代弁させたのではないか。
■きれいごと抜きだからたどり着けた美しいエンディング
一方、商店街の店主たちも保険金詐欺がバレて罪に問われたが、示談が成立したこともあり、裁判では執行猶予がついて刑務所行きはまぬがれる。そして、商店街は立ち退かされて大型ショッピングモールが建設されることになるのだが、紆余曲折を経てモールの1階部分に商店街が残されることに。
けれど、そのまますんなり “めでたしめでたし” とならないのがこのドラマらしいところ。モール内のテナント料が現在の家賃の2倍になるため、店主たちは経営が続けられなくなり、いずれは出ていくことになるだろうという残酷な未来がナレーションで語られたのである。
そう、一見すると全方位でバッドエンド。罪を犯した主人公が何も得ることなく刑務所に入り、商店街の人々も結局店を続けられない未来が示唆されるという、きれいごとを抜きにした厳しい現実を突き付けている。
ただ、それでも人間はまた立ち上がって、前を向いて生きていけるということも示したハッピーエンドだった。このドラマは “愛すべきダメ人間たちの賛歌” なのだ。
ラストシーンで描かれたのは、残された妻が夫の出所を待ちながら、元の店でケーキ店を一人切り盛りする姿。店の近くにお地蔵様があり、移動させられなかったため、ケーキ店だけショッピングモール開発から漏れてしまったのだという。
妻は、正義が語っていた「ケーキが食べられて、おいしいって思えたら、今すっごく平和ってことじゃない? 平和が実感できる仕事って、すっごくいい仕事だよ」という言葉を思い返す。
このささやかな幸せを教えてくれた夫は、横にいない。その現実を受け入れながら、妻は笑顔で愛すべき者の帰りを待つ。――きれいごとを抜きにしたからこそたどり着いた、本当に美しいエンディングだった。
■実はかなり異例の “突貫工事” で作られたドラマだった
『街並み照らすヤツら』はかなりの “突貫工事” で作られたドラマだった。この放送枠はもともとムロツヨシの主演ドラマが放送予定だったものの、『セクシー田中さん』の原作者急死問題の余波でムロが降板したため、『街並み照らすヤツら』の制作が急遽決定したのだ。
脚本家をはじめとした制作陣はタイトなスケジュールでこなし、森本はじめキャストたちにいきなりオファーが来て引き受けた仕事だったはず。
冒頭でお伝えしたとおり、視聴率やTVerのデータは散々だったが、こんな異例の体制で作られたドラマだと考えれば、十分すぎるほど素晴らしい良作だったと思うのだ。
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中
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